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【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第二章 メビュウム内海編~港を造って交易をおこなうことにした~

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第二十話 メルカ島③

ロメリア戦記のアニメ化が決まりました!

ロメリア戦記がアニメになります。続報は判明次第、ご報告させていただきます。

こうしてアニメになるのも、応援してくれているファンの皆様のおかげです。

これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします。


いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

小学館ガガガブックス様よりロメリア戦記が発売中です。

BLADEコミックス様より、上戸先生の手によるコミカライズ版ロメリア戦記も発売中です。

マグコミ様で連載中ですよ。



 ラディック邸の客間に通された私達は、応接椅子に腰を掛けながら部屋を見回した。

 棚には真っ白な壺や花が描かれた色彩豊かな大皿、湾曲した短剣に黄金の盃などが飾られている。


「ロメリア様。ここにあるのも、そのライツベルク帝国の物なんですか?」

 レイが客間に置かれた調度品の数々に目を向ける。

「いえ、ここにあるのは帝国時代の物ではありません。交易で運ばれてきた異国の品です」

 私は白い壺や、絵付けされた皿を指差した。


「あの壺や皿は、東の果てにあるとされる国の品でしょう。湾曲した短剣と敷かれている絨毯は、中東あたりの物でしょう。黄金の盃は南方にある大陸からもたらされた物ですかね?」

 私は短剣や絨毯、黄金の盃を指差して答えていく。ボレルやジニが感心した声を上げる。


「世界中の品々が、メルカ島を経由していた証拠です。私達が建設している港が栄えれば、これらの品も珍しくはなくなるでしょう」

「はぁ〜楽しみですね」

「港を作るって、そんなにすごいことなんだ……」

 私の言葉にガットとポーラが感嘆の声をあげる。私も異国の品が集う港を、早くこの目で見てみたい。そのためには、このメルカ島の協力を得なければならない。


 私は決意を新たにしていると、部屋の扉がノックされた。部屋の外からレベッカさんの声が聞こえ、お茶を持ってきてくれたことを告げる。声に応えると、レベッカさんが茶器を載せた台車を押して入ってくる。


 レベッカさんは見事な手捌きでポットに茶葉を入れ、お湯を注いで茶葉を蒸らす。砂時計で時間を計っていると、部屋にお茶の柔らかな香りが充満していく。

 心地よい香りに、私の頬も自然に綻ぶ。


 良い茶葉を使っている。香りを嗅ぐだけで疲れが取れていくようだった。

 レベッカさんは、縁に金の装飾がなされた陶器の茶器にお茶を注ぐ。そして受け皿と共に私達の前に並べてくれる。


 膝丈の低い机に、全員分のお茶が置かれる。

 私は淹れてくれたレベッカさんに会釈した。そして受け皿を左手に持ち、カップの小さな持ち手を右手で摘み、受け皿と共に持ち上げる。受け皿は胸の高さで止め、そこからカップだけを口元に近づけて傾ける。


 一口お茶を口に含むと、苦味の奥にある甘味が味蕾を刺激した。

 美味しい。温度も絶妙だ。すっと喉を通っていく。


「大変美味しい。この茶葉はカモル産ですか?」

「はい。お客様をおもてなしするために、道具は一流の物を御用意しております」

 レベッカさんは三白眼を崩さずに答える。その言葉に、私は再度口元を緩めた。何故なら使われている茶器は、我がグラハム伯爵家の特産品である陶器だからだ。


 さりげなく我が国の物を一流だと誉めるとは、なかなか喜ばせてくれる。

 私が無表情のレベッカさんを見ていると、茶を啜る無粋な音が聞こえてきた。私は笑みを顰めて、音の発生源に目を向ける。そこにはアルがカップを鷲掴みにしてお茶を飲んでいた。


 他にもカップの小さな持ち手に指をかけたり、受け皿を使っていなかったりと作法がなっていない。ちゃんと受け皿を使い、作法に則りお茶を飲めているのはポーラさんだけだった。


「全く、貴方達は」

 私は眉間に皺を寄せるが、アル達は私が怒っている理由が分からず目を見合わせる。


 あまりに不作法であったが、これは仕方ないことでもあった。ロメ隊の面々は全員が農民だ。お茶の作法など知るはずもない。むしろ同じく農村出身であるポーラさんが、作法を知っているほうが驚きなのだ。


 今度ロメ隊を集めてお茶の作法を教え込むべきだなと、私は心の予定帳に書き込んでおいた。兵士に作法など無用と思うかもしれないが、ロメ隊の面々は並の兵士を超える力を持ち始めている。いずれ武勲を立て、騎士として叙任されてもおかしくはない。公の場に出ることもあるだろうし、場合によっては貴族の子女の婿にということも起こり得る。


 彼らの今後の栄達を考えれば、貴族の作法や振る舞いは覚えていて損はない。

 まずはお茶の飲み方から叩き込もうと、私は心に決めてお茶を飲んだ。




 お茶がなくなった頃、一度部屋から退出したレベッカさんが戻ってきた。


「ラディック様がお会いになられるとのことです」

 三白眼をニコリともさせずにレベッカさんが告げる。モーリス船長は戻って来ていないが、上手く話が纏まったのだろう。


 私はロメ隊の面々を目で促して席を立つ。そしてレベッカさんの案内の元、メルカ島の島主のもとへと向かう。

 通されたのは広い部屋だった。食堂らしく大きなテーブルが縦に置かれていた。テーブルの上には銀の燭台が並び、周囲には幾つもの椅子が置かれている。


 部屋の奥に目を向けると、メビュウム内海の地図を模したタペストリーが壁一面に飾られていた。そして上座の椅子に一人の男性が座っていた。

 年の頃は三十代程であろうか、整えられた黒い髪に浅黒い肌をしている。仕立ての良い紺色の上着を着ており、そのいでたちはいかにも名士といった風情だった。しかしやや目尻が垂れており、どこか気弱な印象があった。そしてその男性の右隣にはモーリス船長が立っている。


「よ、ようこそ、おいでくださいました。メルカ島の島主をしている、バーボ・ラディックと申します」

 バーボと名乗った男性が立ち上がり、両手を広げる。その顔は緊張しているのか、やや引き攣っていた。


「初めまして、ラディック様。ライオネル王国、グラハム伯爵家のロメリアと申します」

 私は軽く頭を下げた。私は大国の貴族だが、メルカ島は独立自治を保った一つの国家である。小さい島の島主とはいえ、礼を尽くさねばならない相手だった。


 頭を下げた私を見てバーボさんがたじろぐ。そして問うような視線を、右にいるモーリス船長に向けた。

 モーリス船長はこの視線に気付いたはずだが、視線を返すことはせずに無視した。バーボさんは息を呑み視線を私に戻す。


「こっ、これはご丁寧なご挨拶、痛み入ります。ロメリア様。どうか私のことはバーボとお呼びください」

「ではバーボ様。今日は突然の訪問にもかかわらず、面会していただきありがとうございます」

「こちらこそお待たせしてしまい、申し訳ありません。椅子をどうぞ」

 バーボさんが左手で椅子を勧める。私を案内したレベッカさんが前に出て、バーボさんから見て左手側の椅子を引く。私はアル達を入り口の前で待たせ、椅子まで進んで席に着いた。


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