第二十八話 帰郷⑤
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私はヴェッリ先生と会議を続け、ギレ山砦攻略のためには、開発した新型攻城兵器が必要であると訴えた。
「あの兵器なら、ギレ山砦に打撃を与えることが出来るでしょう。それに、うまくいけばガリオスを討てるかもしれません」
私は机の地図を睨んだ。ギレ山砦は険しい山に築かれた砦だ。守りは強いが一方で出ることも難しい。魔王軍は退路のない場所に、自ら乗り込んだことになる。強敵ガリオスが守ることは厄介だが、ここでガリオスを討てれば、魔王軍の翼をもいだも同然だ。
「確かにそうかもしれんが、問題はアラタ王が許すかどうかだな」
「それなのですが、ぜひ特別顧問のほうから、口添えをしていただきたく」
「おう、分かった。ノーテ枢機卿に頼んで、救世教会からも後押しをしてもらおう」
ヴェッリ先生は引き出しから紙を取り出し、ペンを走らせる。先生が手紙をしたためるのを待っていると、扉がノックされてクインズ先生がお茶を持ってきてくれる。
「申し訳ありません、お嬢様。汚い部屋で」
お盆にポットとカップを載せたクインズ先生が、部屋に入ってきて頭を下げる。
「そうか? 片付いているほうだろ?」
答えるヴェッリ先生の瞳に、冗談の色はない。どうやら本気で言っているらしい。クインズ先生はお盆を机の上に置き、諦めの溜息を吐いた。
「それよりもクインズ、この手紙を至急ノーテ枢機卿のところに持っていってくれるか?」
ヴェッリ先生は、先程書いていた手紙に封をして差し出す。
「先生、私が乗ってきた馬車が外にあります。御者に手紙の運搬をお願いしてください」
私が言うと、クインズ先生は手紙を受け取りながら頷く。
クインズ先生が部屋から出て行った後、私とヴェッリ先生は地図に向き直った。
「新型の攻城兵器が使用可能になるとして、問題はギャミの狙いだな。あいつの真の狙いを見抜かなければ、この戦争には勝てないぞ」
ヴェッリ先生の言葉は、問題の核心を突いていた。
策士は戦場に赴く際に、最後の一手を隠し持って挑む。その一手を読み切らねばならない。しかしギャミは並の策士ではなく、簡単に最後の一手を読ませてはくれない。それにこちらの手を見て、最後の一手を変えてくる可能性もある。
「それなのですが、選択肢が多くて、最後どころか最初の一手すら読めていません」
私は正直に話した。この状況から考えられる手筋は多い。ギレ山砦に立て籠もる魔王軍一万体に加え、グラナの長城にはさらに一万体の兵力を残している。そして分散された四つの砦にも、千体ずつ兵士が配置されていた。次の手がどこからどう打たれるのか、予想し難い。
「ギレ山砦以外の砦は囮だと思うが、断定は危険だな」
「はい、そもそも千体というのも、砦の規模から計算した予想でしかありません。油断したところを……という手も考えられます」
「そうだな、まずはそっちから検討するか」
ヴェッリ先生は魔王軍を示す黒い駒や、連合軍を示す白い駒を手にした。
ギャミの手筋は多い。だが今からその全てを検討して、備えねばならないのだ。
私とヴェッリ先生は何度も地図の上に駒を置き、動かしては敵の取るであろう行動とその対処を検討した。何度も何度も繰り返し、最適解を模索する。
クインズ先生が持ってきてくれたお茶がなくなったころ、また部屋の扉がノックされた。ヴェッリ先生が応じると、クインズ先生が入ってくる。
「お嬢様。グラハム伯爵家から使いが来ました。アラタ王との面会を取り付けたとのことです」
クインズ先生の言葉に私は頷く。検討は完全とは言い難かった。どれほど考えても、ギャミの最後の一手を読み切れたという確信がない。だが大まかな流れは予想出来たと思う。
「ヴェッリ先生。ありがとうございました。アラタ王のところに向かいます」
「分かった。俺のほうでも、やれることはやっておく」
お願いしますと、私は頭を下げる。屋敷を辞す前に、私はクインズ先生とお別れの抱擁を交わした。そして最後にフィーの寝台を覗く。
フィーは小さな寝息を立てて眠っていた。
眠る子供の顔を見て、私は目を細めた。そして踵を返し王城ラクラーナへと向かった。
短くて申し訳ありません、ちょっと切がよくて
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