第二十三話 会議の後②
ロメリア戦記のアニメ化が決まりました!
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「四万人の兵力でギレ山砦を落とす。出来ますかね? 空から攻撃出来ればいいんですが、我が蒼穹騎士団は、出撃を控えるようにという話でしたから……」
隣に立つレイも溜息を漏らす。レイが率いる蒼穹騎士団は、翼竜で構成された航空戦力だ。連合軍で翼竜を保有しているのは、我がライオネル王国のみである。
連合軍は大艦隊を編成して、海からローバーンを攻撃する予定だ。だが魔王軍もこの動きを察知しており、艦隊を送り込んでくるだろう。そうなると海上で艦隊同士が激突する、一大決戦が行われる。この時に大きな働きをすると予想されているのが、翼竜達の航空戦力だ。
「海上決戦において、翼竜は絶対に必要ですからね。ヒューリオン王の判断は当然です」
私は西の空を見ながら頷く。
空を飛べる翼竜は、馬で何日もかかる距離を僅かな時間で移動する。伝令だけでなく、偵察や攻撃にも使用可能だ。
地上戦でも便利な翼竜だが、海の上では陸以上に高い効果を発揮する。地上では森に身を隠せば、空からでも発見は困難となる。だが海の上では隠れようがない。さらに空から爆裂魔石を投下すれば、船を沈没させることも可能だ。
「これまで海戦といえば、火矢を放ち炎上させる。あるいは船を近づけて乗り込み、敵を倒すしか手がありませんでした。翼竜部隊は陸戦や海戦を一変させる可能性を秘めています。ただこちらがすることは相手もしてくる。そして翼竜の数や戦術では、魔王軍のほうが上でしょう」
私の言葉にアルとレイが頷く。翼竜を調教し、最初に戦場に持ち込んだのは魔王軍だ。魔族のほうが我ら人類より一日の長がある。
海上決戦において、船の数では連合軍が有利とされている。だが航空戦力は魔王軍が優勢と見られていた。連合軍としては、出来るだけ翼竜部隊を温存して海上決戦に備えねばならない。自由に使っていいのは、レイの持つ翼竜だけだろう。
「追加の援軍はなく、貴重な航空戦力も使えない。ロメ隊長。これは厳しくないですか?」
「まぁ、やりようはあるでしょう」
「そうですか? ギレ山砦は、結構防御が固そうですが?」
私の言葉にアルは懐疑的だ。確かにギレ山砦は、峻険な岩山に築かれている。登る道は限られており、しかも細いときている。まさに天然の要害だ。
「確かにギレ山砦は細い道ばかりで、堅牢な造りをしています。ですが道が細いと言うことは、守る場所も限られているということです。それが弱点です」
私の言葉にアルとレイが揃って首を傾げた。二人の反応は当然だ。守る箇所が限られていると言うことは、防衛側からすれば戦力の集中が容易になるからだ。
「まずは罠に対処出来る、優秀な現場指揮官を揃えたいですね」
私は攻略のために必要なものをあげた。ギレ山砦を攻略するには、部隊を少数に分けて前進させるしかない。兵力が足りないのならば、指揮官の質で補いたい。
「ライオネル王国に残している、残りの二十騎士を呼ぼうと思います」
「ああ、カイルやオットーを呼ぶのですか? 代え馬を使えばぎりぎり間に合いますかね?」
アルが頷く。私の名前を冠したロメリア二十騎士は、経験豊富な指揮官ばかりだ。彼らなら罠や待ち伏せにも即座に対応出来るだろう。
「しかしロメリア様。それだけで何とかなりますかね?」
レイが懐疑的な声を上げる。確かに現場指揮官の能力をあてにして、兵士に無理をさせるのは得策ではない。兵法の基礎は、勢いに求めて人に求めず。指揮官がすべきことは勢いを作り出すことであり、個人の武勇や能力に頼るべきではない。
「あとは、新型の攻城兵器を使いましょう。これなら、待ち伏せしている場所を攻撃出来ます」
私は二つ目に必要なものをあげた。ライオネル王国は現在、新型の攻城兵器を開発していた。兵器自体はすでにラナル防塞に運び込んでいるので、使用は問題ない。
「あれを使うのですか? 確かにあれなら、ギレ山砦の防衛設備を破壊出来ると思います。でもあれは、グラナの長城攻略のものでしょう? ここで使うと本番で敵に対策されますよ」
「仕方ありません。ギレ山砦を落とさねば、グラナの長城を攻撃することも出来ないのです」
物事の順序を違えることは出来ない。後の問題は先送りにするしかないのだ。まずは目の前の問題を片づける。後で困ることになれば、その時はまた別の解決策を考えるしかない。
「しかし、アラタ王が使用を許可してくれますかね?」
アルが夕暮れに染まる空を見上げる。
新型攻城兵器は我がライオネル王国の国王である、アラタ王の許可がなければ使用出来ない。ライオネル王国に残した二十騎士を呼び寄せるのも、簡単に許可をしてくれないだろう。
「それは、直接許可を取りにいくしかありませんね」
「直接って、ロメ隊長がですか?」
驚きの目を向けるアルに、私は頷く。無理な頼みをする以上、直接会って話すしかない。
「でも、ここでの会議もありますし、往復を考えればそんな時間的な余裕ありますか?」
「会議が終わった後、急いで帰るしかないでしょうね」
アルの至極まっとうな意見に、私はまっとうな意見で返した。
「急いでって、どうやって?」
「それはもちろん……」
私はアルに視線を向けた後、レイに視線を移した。するとアルはああ、なるほどと頷く。
「え? ええ?」
私とアルの視線を受けて、レイが戸惑いに見返すが、私もアルも視線を逸らさない。
「ええ――!」
夕日の空に、レイの声がこだました。
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