第二十一話 六国会議⑧
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連合艦隊全てを沈めて敵を殲滅する。ドレット将軍の軍略に私も舌を巻いた
「しかし提督。それでは連合艦隊も全滅してしまいます」
ゼファー公爵は顔色をなくしていた。当然である。軍船一隻を建造するのには、莫大な資金が必要となるのだ。持ち寄った船を全て沈められてはたまったものではない。
「船を失えば、また造ればよろしい。向こうが一隻造る間に、こちらは六隻揃えればいいのです。私の後任が誰になるかは知りませんが、誰が率いても必ず勝てます」
ドレッド提督の言いようは呆れるほかない。だがそれだけに信頼出来た。
連合軍で厄介なのは、連合していることだ。いくつもの国が関わっているため、それぞれの利害が絡んできてしまう。戦争するにしても、自国の被害を出来るだけ少なくしようとする。そうなると消極的な戦術をとってしまい、勝てる戦いも勝てなくなる。
ドレッド提督は被害をものともせず、たとえこちらが全滅してでも相手を全滅させると話す。この覚悟が出来ているのであれば、魔王軍に後れを取ることはないだろう。
「分かりました。海の上は提督に任せましょう。我が王国の艦隊を灰にしてでも、魔王軍の船を悉く沈めていただきたい」
ヒューリオン王は一度任せた以上、全てを委ねると頷いてみせた。
ドレッド提督も苛烈だが、ヒューリオン王もまた果断だ。
「しかしそうなると、海上決戦の承認を各国から得ねばなりませんね」
ヒューリオン王は口元に手をやると、金色の口髭を指で撫でる。
この六国会議に出席しているのは、各国を代表する重鎮達だ。しかしいくら国で発言力があったとしても、それだけで戦争は出来ない。国の総意としての承認が必要となる。国家が人と人の集まりである以上、個人で無理を通すのには限界があるのだ。
「説得するには、それなりに材料がいるな」
口を開いたグーデリア皇女の青い目は、円卓の地図に注がれていた。視線の先には、私が置いた四つの石がある。魔王軍が再利用している砦だ。
「この砦、落とすか。そして勝利の報告を材料に、各国を説得する。これでどうか?」
グーデリア皇女の問いに、ゼファー公爵にヘレン王女が頷く。
戦勝の報告は国威の高揚に最適だ。そして勝利の勢いに乗り、海上決戦に挑む。
もちろん勢いだけで戦争に勝てるものではないが、戦争に挑むには勢いがいる。その勢いを生み出すのが、我らの仕事と言える。
「ではどの国がギレ山砦を落とすかだが……。ロメリア様。やっていただけますか?」
ヒューリオン王の翡翠の瞳が私に向けられる。名指しであったが、これは当然といえた。我がライオネル王国は数年前まで港を持っていなかった。現在ではカシュー地方に一つ港を整備したが、それまでは海につながる場所はなく、当然軍船はおろか海軍すらなかった。
現在は海軍が設立されているものの、結成十年にも満たない海軍には、船の数もなければ海戦の経験もないのだ。
連合軍が編成している艦隊には、もちろん船を出している。だがその規模は小さく、連合軍の中でもっとも貢献度が低い。この不均衡を補うために、ライオネル王国は四万人の兵士をラナル防壁の防衛に派遣していた。一方で連合軍のほかの国々は、海軍力を提供しているので、この地に兵士をそれほど駐屯させていない。
まずハメイル王国がラナル防壁の守備兵力として、一万人を派遣している。だがほかの国は、ヒューリオン王国とフルグスク帝国がそれぞれ六千人ずつ。ホヴォス連邦とヘイレント王国は、それぞれ三千人ずつを派遣しているだけだ。これらはガンガルガ要塞や、北にあるディナビア半島防衛のためのものだ。ギレ山砦を攻略するだけの戦力はない。
それにガリオスとギャミは強敵だった。ガリオスの強さは言うに及ばす、ギャミの悪辣な策略は後手に回れば一気に押し切られる。この二体がそろった場合、全力をもって対抗せねば連合軍とて危うかった。
「分かりました。我が国がギレ山砦の魔王軍を殲滅してみせましょう」
私は六国の間で宣言した。
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