第二十話 六国会議⑦
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私がギレ山砦の攻略が可能であると断言すると、すると各国代表が声を漏らす。
「本当ですか? ギレ山砦は切り立った山に築かれた、天然の要害と聞いていますが?」
「確かに険しい岩山に建設されており、侵入する道も限られています」
私は実際にこの目で見た、ギレ山砦の全景を思い返した。山裾は垂直に近く登れる道は限られていた。それは中に入っても同じだろう。道が限られていれば、待ち伏せや罠を仕掛けやすく守りやすい。いたずらに攻めれば、被害ばかりが増えてしまうだろう。
「ですが攻略の糸口はあります。翼竜を用いて空から偵察を行えば、どこに待ち伏せがあるかは事前に予測が可能です」
私は首を僅かに返し背後に立つレイを示した。空からの目がある以上、旧来の戦術や戦法は陳腐化しつつある。
「ただし戦うのでしたら、急いだほうがいいでしょう。時間を掛ければ、ギレ山砦の防御は強化されます。なにより放置すれば、ガリオスが何をしてくるか分かりません」
私の提言に、ヒューリオン王が顔を顰める。
「やれやれ、始末におえんな」
ヒューリオン王が唸るのも無理はなかった。魔王軍の戦略は面倒極まりない。敵はこちらが嫌がる手を的確に打ってくる。
私の脳裏に、小柄な魔族の姿が思い出された
確証はないが、この手を打ったのはおそらく魔王軍特務参謀ギャミであろう。かの御仁らしい、嫌らしい一手だった。
「少なくとも、ギレ山砦とグラナの長城、ほかの四つの砦も包囲しておくべきです」
「包囲か……。また費用が嵩むな」
私の提案に、ヒューリオン王が円卓を指で三度叩く。
ラナル平原に築いたラナル防壁の建設にも、莫大な費用が投じられている。ここでさらにギレ山砦包囲のための軍勢を派遣すれば、軍事費はさらに跳ね上がるだろう。
六国の間に重苦しい沈黙が支配する。会議の場で沈黙が続くのはよくない。誰かが発言しないかと待っていては、最初に発言した人の消極的な提案が通ってしまう。
「連合軍による艦隊の編成はどうなっていますか?」
私は場の空気を変えるべく、ヒューリオン王を見た。
現在連合軍では、各国の軍船を持ち寄って巨大な艦隊を編成していた。グラナの長城は高く、防衛設備も充実している。下手に攻めれば痛手を負うため、海からローバーンを攻撃しようということになったのだ。
「それに関してはドレッド提督に答えていただこう」
ヒューリオン王は、顔に皺が刻まれたホヴォス連邦のドレッド提督に視線を向ける。
ホヴォス連邦は、元は五つの小国であった。列強に対抗するため連合し、それぞれの国は公爵家としてホヴォス連邦を支え合っている。そのうちの一つマリナ公爵家は海に面し、百を超える島々を支配していた。
海を知り尽くしているマリナ公爵家の海軍は強く、ここ五十年の間に引き分けはあっても負けはない。格上の国と戦っても勝利してきた。
ホヴォス連邦は列強に名を連ねている。だがその国威を保証する強さの半分は、間違いなくマリナ公爵家の海軍によるところ。そしてドレッド提督は、ホヴォス連邦が勝利した海戦のほとんどに参戦していた。
海戦の経験においてドレッド提督に勝る人物は居らず、連合艦隊の指揮を任されている。
話をふられ、老提督は巌の顔を頷かせる。
「艦隊の編成は進んでいる。予定数を確保出来れば、数の上では魔王軍を上回るだろう」
「提督。魔王軍と海上で激突した時に勝てますか?」
ヒューリオン王の問いに、ドレッド提督は顔の皺をさらに深める。
「我ら連合軍は各国より船を持ち寄っております。つまりは寄せ集め、士気も練度もバラバラです。十分に訓練と演習を行うこと、そして決戦の前に入念に船の整備をすること。この二つが確約されれば負けはありません」
歴戦の提督は言い切る。
「今回の海戦の目的は、魔王軍の海上戦力を殲滅して制海権を取ることにあると認識しています。こちらのほうが船の数が多い以上、一隻一殺。刺し違えてでも敵船を沈めていけば、それで引き分け以上にはなります」
ドレッド提督は恐るべき軍略を語った。
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