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【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第七章 ラナル平原編~ガリオスの脅威~ 

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第十話 不可解な撤退①

ロメリア戦記のアニメ化が決まりました!

ロメリア戦記がアニメになります。続報は判明次第、ご報告させていただきます。

こうしてアニメになるのも、応援してくれているファンの皆様のおかげです。

これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします。


いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

小学館ガガガブックス様よりロメリア戦記が発売中です。

BLADEコミックス様より、上戸先生の手によるコミカライズ版ロメリア戦記も発売中です。

マグコミ様で連載中ですよ。



 焔騎士団と共に魔王軍から離脱したゼータは、小高い丘を馬で駆け上った。そして頂上に辿り着くとようやく馬を休めた。

 馬上で振り返れば、隼騎士団もやってくる。その中には副隊長のベトレーの姿もあった。


「ベトレー! 無事だったか!」

「はい、ゼータ様。ですが……」

 ベトレーは言葉を濁して振り返った。集結する隼騎士団の面々は、開戦当初のことを考えれば少ない。半減とはいかないまでも、三割近い損害が出ている。


「これだけか……」

 あまりの損害に、ゼータの口から息が漏れる。だがこれでも損害は少ないほうだった。一時は敵に包囲され、全滅すらあり得たのだ。


 これは処刑されるな……。


 ゼータは自らの先行きがないことを悟った。ゼータはハメイル王国の指揮官であるジスト将軍の命令に背き、勝手に騎士団を動かしたのだ。

 抜け駆けや命令違反は、手柄を立てれば不問にされることが多い。しかし今回、ゼータはなんの手柄も挙げられなかった。処罰は免れない。


 数日後にはガンガルガ要塞で、連合軍の代表が集う六国会議が行われる。列強各国の重鎮達が席を連ねるこの会議には、ゼータの兄であるゼファーが出席する予定だ。兄は間違いなく、ゼータを厳罰に処すだろう。


 兄が来る前に手柄を立てたいと思っていたが、むしろ逆の結果となってしまった。

 ゼータは大きく息を吐いた。もはや取り返しはつかない。あと出来ることといえば、これ以上損害を出さないことだけだった。


 俯くゼータの耳に、鐘の音が聞こえた。だがこれは連合軍のものではない。音は西に布陣する魔王軍から聞こえてきた。

 また魔王軍が何か策を打つのかと、ゼータは顔を上げて西に目を向ける。すると西に布陣している魔王軍が、ゆっくりとだが後退を開始していた。


「撤退する、だと?」

 ゼータは信じられなかった。戦場に目を向ければ、連合軍と魔王軍の歩兵部隊はまだ激しく戦闘を続けている。


 戦況はほぼ互角とみえ、魔王軍に撤退する理由はない。では何故?

 ゼータには分からなかった。だが相手が後退するというのであれば、追撃の好機である。今ならば追い打ちをかけることで、相手に打撃を与えることが出来るかもしれない。


 ゼータの心は逸ったが、すぐに自分を諌める。

 撤退を開始した魔王軍は、後退のための防衛線を二重三重に構築していた。相手に備えがあれば、追撃戦も容易くはない。それに魔王軍には恐ろしい参謀がいる。これ幸いと追撃すれば、手痛い反撃を受けることは予想出来た。


 ハメイル王国軍とライオネル王国軍も、不可解な撤退を見せる魔王軍を警戒し、後退の鐘を鳴らす。戦っていた両軍が距離を取ると、魔王軍はそのまま順次撤退していく。

 連合軍は乱れた戦列を再編成すると、撤退する魔王軍に歩調を合わせて前進した。おそらく魔王軍は西にある、グラナの長城に撤退するだろう。連合軍はそこまで確認するつもりなのだ。


「ゼータ様。我々は一度本陣に戻り、ジスト将軍の指示を仰ぎましょう」

 ベトレーが提案する。実に妥当な話だった。しかしこの場合、一度本陣に帰投すれば次に出される指示は決まっている。勝手なことをしたゼータの捕縛、あるいは処刑だ。

 無論、この責任から逃れるつもりはない。死んでいった兵士達のことを思えば、処罰は当然である。ただ心残りが一つだけあった。


「いや、帰投はしない。このまま魔王軍を追いかけよう」

「しかしゼータ様」

「安心しろ、攻撃はしない。ただ魔王軍の狙いを見極めたいだけだ」

 ゼータはベトレーから、後退する魔王軍に目を移した。


 魔王軍の行動は明らかに不自然だった。軍勢を繰り出してきたかと思えば、攻撃せずに守りに徹する。そして今、簡単に撤退した。全く意味不明であり、馬鹿げた行動といえた。しかし魔王軍は決して馬鹿ではない。むしろ魔術の如き用兵を見せる。であればこの一連の不可解な行動も、全て意味があるはずなのだ。処刑される前に、それが知りたかった。


「お前達と戦場を共にするのも、これが最後となるだろう。その前に見ておきたいのだ」

「……分かりました。お供いたします」

「すまんな」

 頷くベトレーに、ゼータは一声かけて馬首を返した。

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