第九話 救援の騎士④
ロメリア戦記のアニメ化が決まりました!
ロメリア戦記がアニメになります。続報は判明次第、ご報告させていただきます。
こうしてアニメになるのも、応援してくれているファンの皆様のおかげです。
これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします。
いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。
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東の空にはこちらにも黒い点が見える。翼竜だ。だが魔王軍ではない。翼竜の首には赤い布が巻かれ、獅子の紋章が描かれている。獅子といえばライオネル王国。そしてライオネル王国が保有する翼竜といえば一つしかない。
「ライオネル王国の蒼穹騎士団か!」
天を仰ぐゼータの頭上で、東から飛来した翼竜が魔王軍の翼竜に襲いかかる。
ライオネル王国は魔王軍との戦いで、多数の翼竜を生け捕りにした過去がある。現在は繁殖にも成功しているらしい。そしてライオネル王国は翼竜に騎乗する騎士団、蒼穹騎士団を結成した。今や空は魔王軍だけのものではないのだ。
蒼穹騎士団は長大な槍を持ち、ゼータ達の頭上で旋回している魔王軍の翼竜部隊に攻撃を仕掛ける。蒼穹騎士団の攻撃に、編隊を組んでいた魔王軍の翼竜部隊は散開し、思い思いに回避する。そして魔王軍も鞍につけていた長槍を構え、蒼穹騎士団に反撃した。
空中では蒼穹騎士団と魔王軍の翼竜部隊が入り乱れ、もはやゼータの目にはどちらが敵でどちらが味方なのかも分からない。だが入り乱れる空の戦いにあって、一騎だけ別格の動きを見せる翼竜がいた。
青い翼を持つ翼竜は獅子の旗を首に巻き、その背に蒼い鎧の騎士を乗せていた。明らかにほかの翼竜より速く、旋回の切れも鋭い。素早い機動で魔王軍の翼竜を追い詰めていく。危ないと見た魔王軍の翼竜は、急旋回して逃げようとする。だがその時、青い翼竜に乗る騎士が、何を思ったのか鞍を蹴って宙に飛び出た。
空中戦の最中、翼竜から飛び降りれば墜落するしかない。正気を失ったのかとゼータが思ったその時、騎士のマントが翼のように広がった。
マントは風を受けて膨らみ、蒼騎士は空を飛んだ。
空を飛ぶ騎士は槍を抱え、急旋回して逃れた魔王軍の翼竜を狙う。その速度は素早い。大きな翼竜の動きと比べれば飛燕の如く。そして一瞬で距離を詰め、魔王軍の翼竜に飛び乗ると同時に魔族の胸を貫いた。
一撃で魔族を屠った騎士は、飛び移った翼竜の背を蹴り次なる獲物を狙う。そして次々に翼竜に飛び移り、魔族を倒していく。人が空を飛ぶなど信じられなかったが、ゼータはその不可能を成し得る人間の存在を知っていた。
「あの青い翼竜! そして空のように蒼い鎧! 風の騎士レイヴァンか」
その鎧から蒼騎士とも呼ばれるレイヴァンは、自在に空を飛ぶと言われていた。
ゼータがその話を聞いた時は、戦場によくある法螺話だと信じる気にもならなかった。だがゼータの頭上では、確かにレイヴァンは空を飛んでいた。
「あれは! 風魔法を使用しているのか?」
ゼータは目を凝らした。自在に空を舞うレイヴァンの体は、うっすらとだが緑色に光っている。風の魔法を使用しているのだ。おそらくマントに、風を受けるための骨組みが入っているのだろう。原理は理解出来たがそれでも信じられなかった。命を顧みぬとんでもない絶技だ。
「上はなんとかなるな」
アルビオンが空を見上げながら呟く。事実レイヴァンの活躍もあり、空での戦闘はライオネル王国が優勢だ。蒼穹騎士団は数騎の翼竜を失っているものの、それ以上の損害を魔王軍に与えている。
「まぁ空はあいつに任せておけば大丈夫だろう」
続くアルビオンの言葉には、絶対の信頼があった。
アルビオンとレイヴァンはライオネル王国で最強の座を競い合う好敵手であり、理想を共にする盟友とも聞く。地に炎の騎士アルビオン、天に風の騎士レイヴァンがいれば、この世に敵う敵などないように思えた。
「よし、今のうちに離脱するぞ!」
アルビオンが手綱を握って馬首を返す。爆撃が中断された今こそ、撤退する好機だった。
「はっ、はい」
ゼータは他国の将軍相手に、まるで部下のように返事をしてしまった。




