第八話 救援の騎士③
ロメリア戦記のアニメ化が決まりました!
ロメリア戦記がアニメになります。続報は判明次第、ご報告させていただきます。
こうしてアニメになるのも、応援してくれているファンの皆様のおかげです。
これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします。
いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。
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「今度はお前かイザーク。お前が相手なら、丁度いいか!」
アルビオンが槍斧を振りかぶる。斧の後からは炎が勢いよく吹き出す。魔族の戦列を吹き飛ばした、アルビオンの一撃が放たれる。イザークは体を覆うほどの大盾で受けた。
槍斧と大盾が激突し、鐘を打ち鳴らしたかの如き轟音が響き渡る。
両者の激突を目の当たりにしたゼータだが、ここはアルビオンが勝つだろうと予想した。
イザークの兄であるガオンとガストンは、魔族の中でも並外れた巨体を持っている。しかしイザークは彼らと比べれば小さく、並の魔族と変わらぬ背丈だ。アルビオンの一撃に耐えられるはずがない。
ゼータは吹き飛ばされるイザークの姿を想像した。だが違った。盾で受けたイザークは吹き飛ぶことなく、その場に踏みとどまった。
アルビオンが槍斧に力を籠めると、斧の付け根から炎が噴き出す。そのままイザークを押しつぶそうというのだ。
イザークの盾がゆっくりと後退していく。耐えきれずに倒れるとゼータが確信したその時、イザークの筋肉が膨れ上がった。筋肉の膨張に鎧の止め金が軋み声をあげ、ゼータの目にはイザークの体が一回り大きくなったようにすら見える。
イザークは気合いの声と共に盾を振り上げ、アルビオンの槍斧を跳ね返す。
ゼータは息を呑んだ。アルビオンの攻撃を跳ね返したイザークは、目が赤く充血し爛々と輝いていた。筋肉が膨れ上がった四肢からは、汗が蒸気となって立ちのぼっている。
「った〜く、このちっこいガリオスめ!」
アルビオンがぼやきながら槍斧を構え直す。その横顔は好敵手を前にした笑みがあった。
イザークが左手で大楯を構え、右手で巨大な戦鎚を握りしめる。両者が再度激突しようとしたその時、西にある魔王軍の本陣から鐘が打ち鳴らされ、甲高い音が戦場に響き渡った。
「あっ、やべぇ」
音に顔をあげたアルビオンが、西の空に目を向ける。ゼータも釣られて視線を上げると、西の空に十個程の黒い点が見えた。
空の点はこちらに近づいているらしく、次第に大きくなっていく。長く伸びた嘴に、皮膜のような翼。その背には魔族の姿が見える。
「あれは……翼竜か!」
ゼータは西の空から来るものに目を凝らした。翼竜とは空を飛ぶ竜の一種だ。魔王軍が翼竜を飼い慣らし、空を飛ぶ戦力として使用していることはすでに知られている。
「まずい。備えろ!」
アルビオンは配下の焔騎士団に命令を飛ばす。ゼータが周囲を見れば、イザークをはじめガオンやガストンは兵士達と共に一時後退していた。ゼータ達から距離を取った魔王軍は、盾を掲げて守りの態勢に入っている。
「おい、お前らも備えろ! 爆撃が来るぞ!」
アルビオンがゼータに向かって叫ぶ。ゼータは遅れて何が起きるかを悟った。
「隼騎士団よ! 盾を頭上に掲げろ、上から爆裂魔石が降ってくるぞ!」
ゼータが命令を出した直後、翼竜達が翼を畳んでゼータ達めがけて急降下してくる。
墜落するように迫る翼竜は、ゼータの頭上で翼を広げ一気に減速した。その翼は大きく、見上げるゼータの視界を覆うほどであった。
翼を広げ急減速した翼竜は、皮膜に風を受けて今度は上昇していく。だが空中で反転したその時、翼竜の背に乗る魔族が黒い石のような物を、ゼータや焔騎士団に目掛けて落としていく。
爆発する魔道具である爆裂魔石だ。
「させるか!」
アルビオンが槍斧を頭上に掲げると、槍斧から勢いよく炎が溢れ出した。帯状に広がる炎は落下してくる爆裂魔石を包み込む。
高熱に炙られ、爆裂魔石が空中で爆発を起こす。直後衝撃がゼータの全身を打った。ゼータは衝撃に耐えながら視線を上に向けた。急降下してきた翼竜は一頭だけではない。次々にやってきては反転し、爆裂魔石を落としていく。その狙いは正確で、味方である魔王軍に被害が及ばぬよう、隼騎士団や焔騎士団がいる場所だけに落としていく。
「魔法兵! 魔法だ! 爆裂魔石を撃ち落とすんだ!」
ゼータは隼騎士団所属の魔法兵に命じつつ、自身も風の魔法を操り風の球を放つ。
風魔法は魔法の中でも殺傷能力が低く、風の球は直撃しても人一人をのけぞらせるぐらいの威力しか出ない。しかし空中の爆裂魔石を迎撃するには十分だったらしく、ゼータや魔法兵が放った風の球が、爆裂魔石を誘爆させる。
「おお、お前、魔法が使えるのか」
爆裂魔石を迎撃したゼータに、アルビオンが感心したと目を向ける。
当代最高の騎士に声をかけられ、ゼータの背筋も伸びる。だが喜んでばかりもいられない。
「しかし、翼竜の攻撃はまだ続きます」
ゼータが見上げれば、空では翼竜達が大きく弧を描きながら上昇していた。高度が十分に取れれば、連中は再度急降下爆撃を仕掛けてくるだろう。
先程は迎撃出来たが、次もうまくいくとは限らない。
「安心しろ、航空戦力があるのは、魔王軍だけじゃねぇさ」
アルビオンは不敵な笑みを見せると、東へと目を向けた。




