第七話 救援の騎士②
ロメリア戦記のアニメ化が決まりました!
ロメリア戦記がアニメになります。続報は判明次第、ご報告させていただきます。
こうしてアニメになるのも、応援してくれているファンの皆様のおかげです。
これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします。
いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。
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アルビオンが槍斧を振りぬいたその瞬間、槍斧の付け根が勢いよく火を吹く。アルビオンは炎の魔法を使う。吹き出す炎が槍斧を加速しているのだ。槍斧は爆発的な勢いでガオンに迫る。
ガオンは双剣を交差させ受けるも、槍斧のあまりの勢いに防ぎきれず右腕が切り裂かれる。
「ガオン!」
ガストンが援護のために双頭の槍を繰り出す。アルビオンは振り抜いた槍斧を返すと、再度槍斧が火を吹き次はガストンを狙う。
ガストンは双頭の槍を握り締め、槍斧を迎撃する。渾身の力を込めてガストンは迎え撃つも、双頭の槍はアルビオンの槍斧に一撃で弾かれる。ガストンも槍ごと吹き飛ばされ、剣竜の背でのけ反るように倒れた。
ガストンはすぐに起き上がったものの、額からは血を流して頭をふらつかせている。
ゼータは信じられなかった。ガオンとガストンは武勇に優れた一流の将軍である。その二体を相手にして、アルビオンは押されるどころか優位を保っていた。
「さて。首だけになってガリオスと会うのは、どうやらお前達のようだな」
アルビオンが槍斧を掲げる。鱗の隙間から、ガオンとガストンが汗を滴らせる。アルビオンが槍斧を振おうとしたまさにその時だった。魔王軍の後方から、巨大な地響きと共に新手の部隊が現れた。
森の木々をへし折り、大地を踏み締めて現れたのは一頭の竜であった。
怪腕竜や剣竜と比べれば、その竜は小さかった。潰れたように平べったく、体は棘が生えたようにゴツゴツとした鱗に覆われている。そして長い尾には拳骨のような瘤がついていた。
装甲竜と呼ばれる中型の竜であった。平べったい竜の背には、これまたずんぐりとした魔族が跨っている。その魔族は大きな盾を背負い、一本の巨大な戦鎚を手にしていた。
「装甲竜と言うことは、乗っているのはガリオスの七男イザークか!」
ゼータの手綱を持つ手が震えた。二年前のガンガルガ要塞攻略戦において、イザークがヒューリオン王国の太陽騎士団を壊滅させたことは知られていた。
装甲竜が嘴のような口から咆哮を発したかと思うと、どすどすと音を立てて突進を開始する。さらにその背後から、中型の竜である獣脚竜に乗った魔族の一団が現れた。
あれは竜騎兵と呼ばれる部隊で、侮れぬ機動力と攻撃力を持つと言われている。
装甲竜に跨るイザークが突進する。その歩みは力強いものの重鈍であった。一方で軽快な走りを見せる獣脚竜は、イザークに追いつきそして追い越していく。
イザークを置き去りにして、竜騎兵は魔王軍の間を駆け抜けて焔騎士団に狙いを定める。焔騎士団に接近した獣脚竜は、一斉に大地を蹴り跳躍した。
槍の穂先すら飛び越える跳躍に、ゼータは視線を上げる。跳び上がった竜騎兵は、そのまま焔騎士団に襲いかかった。
獣脚竜はその脚に巨大な爪を備え、背に乗る魔族は槍を下に突き出している。対する焔騎士団も、降りかかる竜騎兵を串刺しにしようと、槍を大地に突き立て頭上に掲げた。
両者が激突し、爪が肉を切り裂き槍が兜を貫く。串刺しとなった魔族が、磔刑にあったようにぶら下がる。
人も馬も、竜も魔族も死んで血を流す地獄であった。だが誰も泣き叫びはしない。生きている者は起き上がり、敵を殺そうと殺意をたぎらせる。
立ち上がりが早かったのは、竜騎兵のほうだった。獣脚竜は馬よりも小型で二足歩行。航続距離は馬に劣るが、瞬発力と機敏さは馬に勝るという。
素早く態勢を立て直した竜騎兵に若干遅れて、焔騎士団も体勢を立て直して槍を突き出し攻撃する。だが竜騎兵は波が引くようにサッと下がり、焔騎士団の槍から逃れる。
焔騎士団が追撃しようとするも、そこに地響きを響かせて、装甲竜に跨るイザークが現れた。
ガリオスの七男を討ち取ろうと、焔騎士団が槍を揃えて突き出す。イザークが巨大な戦鎚で迎え撃つ。直後、精鋭で知られる焔騎士団が吹き飛んだ。力任せの一振りで、重武装の騎兵が人形のように宙を舞う。
「なっ、なんという力だ」
ゼータは息を呑んだ。イザークの猛威の前に、焔騎士団ですら太刀打ち出来ない。正面からは勝てないと、騎士の一人がイザークの背後に回る。だが装甲竜の尾がしなる。大きな瘤がついた尾は、城門を突き破る破城槌さながらである。尾の一撃を受けた兵士は、鎧がひしゃげ、馬ごと吹き飛ばされていった。
イザークに翻弄される焔騎士団は、槍を投げて倒そうとする。だが装甲竜はその名のどおり、装甲の如き分厚い鱗を持っていて槍も刺さらない。そして乗り手のイザークはというと、こちらは二本の槍が命中して鎧に突き刺さっていた。だがイザークは痛痒にも感じていないのか、構わず戦鎚を振り回して暴れまわる。
「あいつは不死身なのか!」
槍を受けてまるで怯まないイザークに、ゼータはただただ度肝を抜かれる。
焔騎士団を蹴散らして進むイザークが目指すは、アルビオンと戦う兄達のもとであった。
「兄上、ご無事ですか!」
二本の槍が鎧に突き刺さり、返り血を浴びたイザークが兄達のもとに駆け寄る。しかし健気な弟に対し、二体の兄が声を荒らげる。
「ええい、来るな! イザーク!」
「お前の助けなど借りぬ! アルビオンは我らで討ち取るのだ!」
ガオンがいきり立ち、ガストンも吠える。そして双剣と双頭の槍を振るい、アルビオンに向かう。対するアルビオンは槍斧で一薙ぎした。ガオンとガストンは武器で防ぐも堪えきれず、竜の背から転げ落ちる。
「その首貰った」
竜から落ちたガオンとガストンに、アルビオンが槍斧を繰り出す。
「兄上! 危ない!」
今際の際のガオンとガストンを見て、イザークが装甲竜の背を蹴って飛び出した。そして背負った大盾を手に取り、兄達の前に立ちはだかり槍斧を弾いた。
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