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【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第六章 ディナビア半島編~停戦して交渉して解放した~

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第六十八話 ジュネル攻略戦⑤

いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

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 アルビオンが四百人の兵士を率いて港を出ると、大通りが南へと伸びていた。普段であれば王都の目抜通りとして、活気に満ちているのだろう。しかし戦時の今では人の気配は絶え、閑散として風だけが吹いている。


 この道を進めば、南の城壁に続いているはずだ。防衛戦を行なっている敵の後ろを突けば、いい挟撃となるだろう。しかしアルビオンたちの目的は、城壁への攻撃ではない。

 アルビオンの目は、右に曲がる道を探した。大通りに大きな十字路を発見する。


「こっちだ! 続け!」

 アルビオンは十字路を右に曲がった。曲がった道の先には左前方に遠くに白鳥宮の屋根が見え、右前方の遠くには赤煉瓦でできた造船所の外壁があった。

 攻撃すべき目標と確保すべき目標を見定め、アルビオンは兵士と共に前進した。しかしアルビオンは進みながら違和感を覚えていた。


「おい! アル、妙だぞ!」

 後方からメリルが叫ぶ。後ろを走るレットとシュローも同様に表情を固めていた。


「魔王軍が居ない! あいつらにしては動きが遅すぎる!」

 メリルは走りながら周囲を見回し、敵を探す。だが魔王軍の姿はどこにもない。アルビオンが戦ったのは、先ほど港に駆けつけてきた兵士だけだ。敵が居ないのはありがたいが、こうまで居ないと逆に不安になってくる。


「何故か分からねぇが、進むしかねぇ! 罠には警戒しろ!」

 アルビオンは指示を出しながら走った。状況が読めない時は進むしかない。これは兵法の基礎だ。アルビオンが進む先に、壁が見えてくる。壁の向こうには背の高い屋敷が見える。


 貴族達が住む王都の中心地だ。

 行く手を遮る壁は左右に伸び、王宮や造船所には直進できない。

 暴動や内乱。敵が侵入した時を想定し、王宮や貴族街、造船所を守る壁が街の内部にもあるのだ。しかしアルビオンは慌てなかった。


「壁沿いを右に曲がるぞ! その先に門があるはずだ。そこを突破すれば王宮と造船所は目の前だ」

 アルビオンは頭の中で、ジュネルの地図を思い描いた。


 現在は魔王軍の手に落ちているが、元々はジュネブル王国の王都だった場所だ。住んでいた住人も多く、詳細な地図が作られている。

 アルビオンは壁沿いに進み、角を曲がると地図通り門があった。ここには必ず魔王軍が詰めているはずだと、アルビオンは目を据える。しかし細められた目は、すぐに丸くなった。


「ああ? なんでこいつら死んでんだ?」

 門へと突撃したアルビオンは、門の前で歩みを止めた。周囲には鎧を着た魔王軍の兵士が十体ほど、血を流して倒れていた。守るべき門は開け放たれ、周囲に隠れているような気配もない。


「お、おい。アル、これはどういうことだ?」

 レットが槍の石突で、倒れている兵士を突つく。魔族は完全に死んでおり、死んだふりをしているわけでもない。

 アルビオンは不可解な状況を前にし、一瞬だけ思考した。そしてすぐに、余計なことを考えるのをやめた。


「状況は俺にも分からん。だが分からないことを考えても仕方がない。俺達と魔王軍の他に、謎の武装集団がいる。敵か味方かは不明だが、現状は敵と考えて行動しろ」

 アルビオンは問題を簡潔にすることにした。目の前の状況を受け入れつつ、やることをやるだけだ。


「この道をまっすぐに進めば、造船所が見えてくるはずだ。途中で左に折れれば、白鳥宮がある。レットとシュローは造船所の確保。俺とメリルは白鳥宮だ。魔王軍と謎の武装集団。両方の襲撃を警戒しろ!」

 アルビオンの指示に、メリル、レット、シュローの三人が頷く。そしてアルビオンは四百人の兵士を引き連れ、ジュネルの中心へと向かう。

 アルビオンの進む先に、造船所の建物が次第に大きくなってくる。そして左手に折れる道も見えてきた。あの道を曲がれば白鳥宮はすぐそこだ。


「アル! 上だ!」

 先頭を走るアルビオンの後ろから、シュローが声と共に左上を指差す。視線を向けると軽装の鎧に身を包んだ魔王軍の兵士が、屋根の上からこちらを見ていた。アルビオンが目を向けると同時に、魔族は屋根の向こう側へと身を隠す。直後鋭い笛の音が空に響き渡る。

 魔王軍の偵察兵だ。敵にこちらの位置を捕捉された。


「魔王軍が来るぞ! 陣形を組め! 密集隊形!」

 アルビオンの号令に、兵士達が隊列を組み、四角い陣形を作り上げる。


 四百人の兵士が密集体系を整えた直後、白鳥宮へと続く左の角から、不揃いの足音が聞こえてくる。足並みは揃っていないがその数は多く、アルビオンは槍斧を握りながら、唇を舐めた。

 通りの角から灰色の鱗をした魔族が現れ、二体三体と続く。さらに魔族の列は途切れることなく、通りを埋め尽くしていく。


 現れた魔族の数は二千体程。四百人の兵士を率いるアルビオンは唸った。

 アルビオン達が後方を突いた場合、魔王軍は最大千体の兵士を前線から割いて、対処に当たらせるだろうと考えられていた。

 予想の倍を超える二千体。だがアルビオンが唸ったのは、数が多いからではない。立ちはだかる魔族達の姿に、戸惑いを覚えたのだ。


「おっ、おい。これって……」

 背後でメリルが迷いの声を上げる。アルビオンだけでなく、歴戦の兵士達も戸惑っているのがわかる。


「ああ、こいつら。魔王軍じゃねぇな」

 アルビオンは断言した。その理由は現れた魔族の装備にあった。

 魔王軍は基本装備として、黒い鎧を身につけている。だが現れた魔族達は、誰も鎧など身につけていなかった。全員が布の服で、手には包丁やナタが握られている。盾や鎧、剣や槍と言った武具を装備している者は一体もいなかった。


「なっ、なぁ。あれって、女子供だよな」

 レットが顔を固くしながら指摘する。レットの言う通り、やってきた魔族のほとんどは女だった。女の魔族を見る経験はあまりなかったが、しかしこれまで見てきた魔王軍の兵士と比べ、身長は低く体は丸みを帯びている。そして胸に膨らみがあることも服の上から見て取れた。


 さらに女の魔族の隣には、小柄な魔族がいた。女の魔族の半分にも満たない背丈に、大きな目をした魔族だった。おそらく子供の魔族だろう。


「ディナビア半島に居残った魔族の中には、兵士の家族もいたはずだ。非戦闘員まで動員しやがったんだ」

 アルビオンは目を細めた。


今日はマダラメの方も更新していますので、よければそちらもご覧ください。

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[一言] 精鋭部隊を最前線の方に回したか? それともすでに脱出済み?
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