第六十一話 ジュネル攻略の秘策④
いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。
小学館ガガガブックス様よりロメリア戦記が発売中です。
BLADEコミックス様より、上戸先生の手によるコミカライズ版ロメリア戦記も発売中です。
マグコミ様で連載中ですよ。
到着した馬車からは、ガンゼ親方が率いる作業員と共に、杖を持つ魔法兵も降りて来る。
彼らはライオネル王国が誇る魔法兵団の面々だった。
「おい! なぜここに私の魔法兵がいる!」
私達の頭上を、鋭い声が飛ぶ。私とガンゼ親方が目を向けると、海藻のようにうねる髪をした宮廷魔導士のクリートがいた。
「よぉ、宮廷魔導士。元気そうだな」
ガンゼ親方が目を笑わせながらクリートに手を振る。するとクリートは体を震わせ、顔を歪めた。
「げっ、なんでお前がここに」
クリートはどうやら、ガンゼ親方を苦手としているらしかった。クリートとガンゼ親方は、ガンガルガ要塞攻略戦においては一緒に行動をすることが多かった。どうやらその時に色々とあったようだ。
「嬢ちゃんに仕事を頼まれてな。お前んとこの魔法兵も必要だったから借りてきた。文句は許可を出した嬢ちゃんに言え」
ガンゼ親方が私を見る。するとクリートが私に詰め寄った。
「困りますロメリア様。魔法兵は私がアラタ王からお預かりした兵なのですよ。魔法兵の扱いに関しては、私に指揮権があるはずです」
クリートが至極まっとうなことを言う。
魔法兵は特殊な兵士であり、その扱いは一般の兵士とは異なる。そのため魔法兵の指揮権は、宮廷魔導士のクリートだけにある。よって魔法兵を動かす時は、まずはクリートにお願いして動いてもらわねばならない。ただこの道理を突き詰めると、一つ問題が出てくる。
「じゃぁお前なんでここにいるんだ? お預かりした魔法兵の指揮を放り出していていいのか?」
ガンゼ親方の呟きを聞き、クリートの表情が落雷に打たれたように固まる。
そもそも指揮官が、指揮すべき兵士の元を離れること自体間違っている。クリートは雑務を嫌がって私達についてきたが、これは責任問題になりかねない職務放棄なのだ。
「違いますよ、ガンゼ親方。宮廷魔導士クリートは、私を助けるために、単身で助力を申し出てくれたのです。ねぇ、クリート」
私がとりなすと、クリートはコクコクと何度も頷く。
「なら、仕方ねぇな。よしクリート、悪いが兵士を借りるぞ。この仕事には、どうしても魔法使いの助けが必要でな」
ガンゼ親方が丘へと歩き出し、魔法兵についてこいと指示を出す。
「こら、勝手に指示するな。お前達も、私の命令を聞け!」
クリートが怒鳴り、ガンゼ親方の指示に従う魔法兵を叱りつける。だが魔法兵の行動も仕方がない。クリートが不在の間、魔法兵の面倒を見ていたのはガンゼ親方なのだ。仕事を放り出して、楽をしようとしていたクリートが悪い。
「賑やかな連中ですね、いつからロメリア騎士団はこんな風になったんです?」
ジュネブル王国軍の兵士と話しを終えたレイが戻って来て、嘆かわしいと唸る。
「初めからですよ、最初二十人で始めた時から、こんなだったではないですか」
「そういえばそうですね」
私の指摘にレイが笑う。思えばカシューから遠くに来たものである。しかしもっと遠くに行かねばならなかった。
この北の海さえ越えて、はるか遠く魔大陸に。
私は進むべく、丘をのぼった。
今回はちょっと短くてすまん




