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【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第六章 ディナビア半島編~停戦して交渉して解放した~

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第四十話 演説のその後

いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

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 ヒルド砦の西門の前に、獅子の旗と鈴蘭の旗が翻っていた。私は旗の下で北へと目を向けた。視線の先には、ディナビア半島へと続く街道が北へと伸びている。

 昨日まではいくつもの柵が並べられ、兵士達が守備に付き封鎖されていた。しかし今や封鎖が解かれている。


 誰もが通行可能な状態となった街道からは、鱗を持つ魔族達が列を成して歩いてくる。先導するのは鎧を身につけ、剣や槍で武装する魔王軍の兵士だった。その後に続くのは、布の服に大きな荷物を背負った魔族だった。体の小さな子供や女性の魔族も含まれており、兵士でないことは遠目にもわかった。


 街道を進む魔族の列は途切れることがなく、続々と出てくる。彼らはディナビア半島から脱出する魔族達だった。

 私は視線を北から西に転じると、西には深い森が広がっている。この向こうは魔王軍の本拠地といえるローバーンが存在する。


 西の森からは粗末な服を着た人間達が、続々と出てくる。魔王軍に捕らえられ、奴隷となっていた人々だ。


 魔王軍との交渉は進み、奴隷となっていた人々を解放することを条件に、ディナビア半島の封鎖を解くこととなった。ディナビア半島からは、六万体の魔族が脱出してくる予定だ。代わりにローバーンからは、六万人の奴隷が解放されていた。


 解放された人々は喜び、走り出している者もいる。彼らが目指すのはヒルド砦の西、丸い舵の紋章が描かれたジュネブル王国の旗だ。旗の下には喪服に黒いヴェールを被ったジャネット女王が、ジュジュ王女やゾレル枢機卿と共に人々を出迎えていた。


 解放された人々の多くは元ジュネブル王国の人間らしく、ジャネット女王を中心に集まり人だかりができていた。女王は気さくに手を振り、時には握手に応じて人々と喜びを分かち合っている。


「ジャネット女王は人気があるな」

 背後から声が掛けられ、振り向くとボサボサの頭に薄汚れた緑のローブを着たヴェッリ先生がいた。


「聞くところによると、ジャネット女王はローバーンでは奴隷となった人々のまとめ役だったそうだ」

「そのようですね、解放された奴隷の中には、元ジュネブル王国の民が多くいます。おそらくジャネット女王という希望があったため、生き延びることができたのでしょう」

 私は視線をジャネット女王に視線を戻すと、女王を見て感激に涙する者や、跪いて忠誠を誓う者もいる。

 厳しい環境で生き延びるには、頑健な肉体だけでは足りない。希望を持ち生き抜こうとする意志が必要だ。ジャネット女王の存在は、人々の心の支えとなっていたのだ。


「ディナビア半島を買い取る計画といい、ジャネット女王はやり手だな」

 ヴェッリ先生の言葉に、私は顎を引く。

 軍議は紛糾したものの、最終的にはジャネット女王の提案した買い取り案でまとまることとなった。


 連合軍各国は当てが外れたと、ため息をついている。だが私はそう悪い話ではないと思っていた。


 連合軍が考えていた分割統治案だが、どの国の国土からも離れているため飛び地となる。遠隔での統治は難しく、問題が出ることが多い。それに各国と領土が接するため、新たな国境問題が生まれてしまう。しかも列強の国々が半島にひしめいているため、一箇所で紛争が起きれば、全体に波及することも十分あり得た。

 その点で借金の返済という形は、わかりやすい上に問題も起きにくい。


「結局、あれが一番いい方法だと思いますよ」

「お前はあの人が、本物のジャネット女王だと思っているのか?」

「さて、どうでしょう。ただ、あの人ならそれなりに上手くやれそうです」

 私としては彼女が本物かどうかより、上手くジュネブル王国の人々をまとめられるかどうかが心配だった。誰かがやらねばならぬのなら、上手くやれる人に任せたい。


「まぁ確かに、軍議であれだけ言ってのけた胆力は大したタマだな。それは認める。だが駄目だった場合はどうする? なにせ孫の代までかかる借金だか。途中で破綻するかもしれん」

「その時は港や鉱山、収穫の多い畑で返してもらいましょう。連合軍としては、その方が利益になります。まぁ、ジュネブル王国はさらに貧しくなるでしょうが」

 ヴェッリ先生の懸念に対し、私は簡単に答えを提示した。


 国家の運営はむずかしい。国土のすべてが、利益を生み出すおいしい場所ではない。道を整備したり橋を造ったりと、いろいろ手を焼いてやらねばならない所もある。むしろそちらの方が多く、国家の運営は効率よく資金を分配することにある。


 その点、借金の形においしい場所だけもらうと言うのは面倒がない。ただし実入りの大きい場所を奪われたジュネブル王国は、借金の返済がさらに難しくなり厳しくなるだろう。下手をすれば魔王軍で奴隷となっていた時の方が、生活が楽だったと言うことになるかもしれない。


「奴隷の身分から解放されたというのに、さらにつらい生活が待っているとはな」

 解放された人々を見ながら、ヴェッリ先生がつぶやく。そう言われると、何のために解放したのかとなってくる。だが私達も多くの血を流した。無料で国を返してあげるというわけにはいかない。子孫のためと思って、ジュネブル王国の人々には頑張ってもらおう。


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― 新着の感想 ―
[一言] クインズせんせー、ヴェッリ先生が他の女をこんな風に言ってますよ? つ 女王は人気があるな
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