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第二話 戦いの前の獅子達

ロメリア戦記のアニメ化が決まりました!

ロメリア戦記がアニメになります。続報は判明次第、ご報告させていただきます。

こうしてアニメになるのも、応援してくれているファンの皆様のおかげです。

これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします。


いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

小学館ガガガブックス様よりロメリア戦記が発売中です。

BLADEコミックス様より、上戸先生の手によるコミカライズ版ロメリア戦記も発売中です。

マグコミ様で連載中ですよ。



 居並ぶ兵士達を前に、私は軍議を始めた。


「メリル。何か新しい情報はありますか?」

 私は席に着いたメリルに目を向けた。彼は効率的で事務能力が高い。陣地の設営や撤収。戦後処理などを任せると大概うまくやってくれる。また、情報の収集や整理もしてくれるので、私の副官のような立ち位置だ。


「はい。三日前にグラナの長城より出撃した二万体の魔王軍は、ラナル平原の西側に陣を敷きました。その後は目立った動きはなく、平原にある小川を越えることはありません。後方では何かしら部隊に動きがあるようです。偵察兵を出して調査しているのですが、偵察狩りに遭遇しており戻ってくる者がほとんどおりません。魔王軍が後方で何をしているのか、何も情報を得られていません」

 メリルの報告に私は頷く。するとレットが口を開いた。


「魔王軍が同様の行動を見せるのは、これで七度目ですね」

「ラナル平原での戦いは、一回目と二回目は結構な激戦だった。でもそれ以降は、魔王軍は消極的で陣は敷くが攻めてはこない。何をしたいんだろうな?」

 レットの隣でシュローが首を捻る。


 シュローの言うように、第一次と第二次ラナル合戦は激しいものだった。

 ローバーンへと迫る私達を撃退しようと、魔王軍は攻撃の手を緩めなかった。激しい戦いにより双方の死体が積み重なり、中央の小川が赤く染まり血の川となるほどだった。しかしそれ以降は兵を出すものの、魔王軍は小川を越えてこない。しばらくにらみ合った後、魔王軍が後退するという行為を六度も続けている。今回を入れれば七度目だ。


「わざわざ兵を出し、しかも偵察狩りを徹底している。必ず何かをしているはずです。威力偵察を行うべきでは?」

 セイが私に目を向ける。威力偵察とはまとまった戦力で敵陣を突破し、強引に偵察を行う方法だ。力技であるため相応の損害も覚悟せねばならない。


「それはどうだろうな。それこそ相手の狙いかもしれねーぜ」

 タースが反対意見を述べる。これも一つの事実といえた。魔王軍が守りを固めている以上、下手に手を出せば損害は大きくなる。敵はこちらが無理をするのを待っているのかもしれない。


「しかしタース。手をこまねいていて、事態が好転することはないのでは? それどころか時間を与えることで、敵を優位にさせてしまうかもしれませんよ?」

 セイが鋭い目で垂れ目のタースを見る。セイの言い分ももっともであった。戦争とは相手の嫌がることをしなければいけない。相手にしたいようにさせていてはいけないのだ。


「まぁ、罠があることは確実だろうな。ガリオスの姿もなければ、奴の息子であるガオンにガダルダ、ガストンの姿もなく、末っ子のイザークもいない」

 黒髪で天を衝くグレンが、険しい目を魔王軍に向ける。確かに対岸に陣取る魔王軍の中には、魔王ゼルギスの実弟であるガリオスとその息子達の姿がない。


 ガリオスは次期魔王を名乗ってもおかしくないほどの強者であり、その息子達も侮れぬ力を持っている。特に末っ子のイザークは小さいながら、小ガリオスといってもいいほどの潜在能力を秘めていた。彼らが戦場にいないとは思えない。魔王軍が陣を敷く後方には、森が広がっており視界が悪い。伏兵を隠すには絶好の場所だ。下手に魔王軍を攻撃すれば、ガリオスや息子達が飛び出てくるだろう。


「あとギャミの姿もないね。まぁあいつは小さいから見つけにくいだけかもしれないけれど」

 グレンの隣で、ハンスも糸のように細い目を魔王軍に向けた。

 魔王軍特務参謀のギャミは、魔族としては信じられないほど小柄だ。女の私でも勝てるかもしれないが、その小さな頭脳は一軍に匹敵する。ギャミの姿が見えないということは、どこかで何か悪巧みをしているということだ。


「ロメリア様、どうされます?」

「ご命令とあらば、敵の囲みは幾らでも突破してみせますよ」

 グランとラグンに気負いはない。命じられれば双子将軍は本当にやってのけるだろう。グレン、ハンス、セイ、タース、シュロー、レット、メリルも頷く。


 彼らの戦意は高い。私が命じれば、どんな無茶でも必ずやり遂げてくれる。

 私は右手の指を口元に当てて、思考を巡らせた。


 ギャミの真の狙いが何なのかは、ここからでは予想出来ない。だがギャミのことであるから、私達が攻撃しなければよし、攻撃してくればなおよしの構えであろう。しかしこのまま何もしないというのは良くない。たとえ罠があろうと、その罠を踏み越えて相手の企みを調べねばならない。だが……。

 迷う私の視線は上へと向かった。空には鈴蘭と獅子、そして連合軍の旗が風に揺れていた。


ロメリア戦記外伝の方も、おまけの短編を更新してるので読んでください

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