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【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第六章 ディナビア半島編~停戦して交渉して解放した~

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第三十六話 ヴェッリの吉報

いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

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 私がアル達と共に補給部隊を出迎えに行くと、レーン川を挟んだ荒野に兵士と馬車の一団が見えた。獅子の旗を掲げる五千人の兵士達の後には、食料や物資を満載した馬車が続々と続く。兵士や補給部隊を率いているのはボサボサ頭に無精髭、緑色の服を着た男性だった。


「ヴェッリ先生!」

 私が無精髭の男性に向かって手を振ると、ヴェッリ先生がこちらに向かってくる。


「おう、ロメリア。久しぶりだな」

「よく来てくれました。食料がなくて困っていたのです」

 私は到着した馬車の一団を見て、胸を撫で下ろした。連合軍はガンガルガ要塞攻略の前から食糧や物資が不足していた。ヒルド砦や要塞に残っていた食料が手に入ったが、それでも十分ではなかった。これで一息つける。


「ロメリア様。俺達もいますよ」

 ヴェッリ先生の背後から、五人の兵士が現れる。


「タース。それにセイ、シュロー、レット、メリル」

 私は声をかけてきたタースと、その背後にいたセイ、シュロー、レット、メリルの四人にも笑いかける。


 タースを含めた五人はガンガルガ要塞攻略に参加せず、ライオネル王国で兵士の訓練に当たっていた。ヴェッリ先生だけでなく、援軍にこの五人をつけたのは、国内にいる私の勢力を追い出す目的だろう。つまりアラタ王は私を排除するため、何かを企んでいる。どうにかしなければいけないが、どうしたものか。


「ロメリア、色々あるだろうが後の問題は後で考えよう。兵士は五千で足りるか?」

「ええ十分です」

 私は頷いた。正直、ライオネル王国軍はボロボロだ。怪我のない者など千人程しかいない。


 それにタース達五人を、つれて来てくれたこともありがたい。カイルにオットー、グランにラグンの四将軍はガリオスと戦い負傷している。本人達はもう立てると言っていたが、私は傷が完治するまで使うつもりはない。彼らの代わりに指揮が取れる人間が欲しかったのだ。


「ヴェッリ先生も来てくれて助かります。魔王軍との停戦交渉や、連合軍との折衝やらで手が足りなくて」

「本当はクインズのやつも来たがっていたんだがな。ちょっとあいつ動けなくてな」

「クインズ先生がどうかされたんですか?」

 ヴェッリ先生の言葉を聞き、私は不安になる。事故か病気にでもあったのだろうか


「ああ、安心しろ。元気だ。ただ今のあいつは身重でな」

 私はヴェッリ先生の言っている意味がわからず首を傾げた。だがすぐにその意味に気づいた。


「え? 身重って、え? クインズ先生にお子さんができたんですか? え? 誰……の?」

 私はただ驚きながら、困惑の瞳をヴェッリ先生に向ける。


「ああ、もちろん俺の子供だぞ。妊娠が分かったのが二十日ほど前だ。あいつとはもう付き合い始めて、一年になるかな」

 私はさらに驚いた。クインズ先生とヴェッリ先生が長い付き合いであり、互いに尊敬していることは知っていた。私は二人が付き合えばいいのにと思っていたが、二人はそんなそぶりをまったく見せなかった。なのに私の知らないところで、二人はできていたという。


「どうして! 何故教えてくれなかったんです!」

「何故って、生徒の前でいちゃつくわけないだろ」

 私が口を尖らせると、ヴェッリ先生は当然だろと返す。どうやら二人の前では、私はいつまでも子供らしい。


「それで、結婚は?」

「あーそれがまだだ」

「なんですって! 何をしているんです。先生!」

 視線を逸らすヴェッリ先生に、私は目を怒らせた。

 未婚の女性が出産したとなれば、ふしだらだと問題になってしまう。出産の前に結婚するかしないかで、その女性の人生は大きく変わるのだ。


「落ち着け、俺も男だ。妊娠を告げられた時点でクインズには求婚した。すぐに式を挙げるつもりだったが、クインズが結婚式にはお前にも出てほしいと言い張ってな」

 ヴェッリ先生の説明を聞き、私はなるほどと頷く。確かに先生達の結婚式にはぜひ出席したい。


「ということで、この戦争。さっさと終わらせて帰るぞ」

 ヴェッリ先生が声を張り上げる。私も俄然やる気が出てくる。尊敬するクインズ先生の結婚式には、自分の葬式すっぽかしてでも出席しなければいけない。それに先生の赤ちゃんも抱いてみたい。


「来る途中で手紙を受け取って大体のことは把握しているが、細かいところはどうなっているんだ?」

「奴隷となった人々の解放と、ディナビア半島に残る魔族の脱出の許可。これは試験的に実行するところまでは話が進んでいます」

 私は北に目を向けた。今日は天気がいいので、ディナビア半島の山々も一望出来る。


「今日の正午にまずは百体の魔族を、ディナビア半島から脱出させます。そして代わりに百人の奴隷を、ローバーンから解放してもらいます。今日の交換が問題なく進めば、三日後に五万人の奴隷と引き換えに、ディナビア半島の封鎖を一日解除する予定となっています」

「五万か……多いな」

「はい、食料と物資がまるで足りません」

 奴隷の解放は私が言い出したことだが、五万人を受け入れるとなるとこれは大変な作業だった。


 受け入れる以上、衣食住を保障しなければいけない。特に食料は重要だ。奴隷として生活していたのだから、彼らの栄養状態は十分ではないと予想される。しっかりと食べさせて、体力を取り戻してもらわないといけない。


「解放した人々の支援を、各国の代表は納得しているのか?」

 ヴェッリ先生が懐疑的な瞳を私に向ける。奴隷を助けるために、自分の食料を減らすことに多くの人は同意出来ない。軍議でも批判は出た。


「ホヴォス連邦とヘイレント王国が難色を示しましたが、最終的にそれぞれの本国が許可の命令を出しました」

 私は軍議での様子を思い返した。


 連合軍各国はディナビア半島を分割統治し、自分達の国の一部とするつもりだった。だがそのためには自国の民を移民させなければならない。

 移民するとなると希望者を募り、移動させる必要がある。時間はかかるし、十分な数の移住者が集まるとも限らない。


 一方で連合軍各国は、ガンガルガ要塞攻略に多くの損害を出した。各国はすぐにでも失った戦費を補填したいという事情がある。奴隷となった人々を受け入れることは、今は苦しいが長い目で見れば得となる。


「うちも火の車だが、どこも財政はよくないようだな」

 ヴェッリ先生が空を見上げた。太陽は頂点に向かいつつある。奴隷となった人々と、魔族の交換の刻限は近い。

「そろそろヒルド砦に向かいましょう」

 私の言葉にヴェッリ先生が頷いた。


クインズとヴェッリ、実は隠れていちゃついてた

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― 新着の感想 ―
[良い点] どっちだ?2人ともか!? [気になる点] 死亡フラグが… [一言] 軍師退場か… ロメさまだけで足りるのか? そういえば、アンリ王の息子たちはいくつになられましたかな? 七五三の時期で…
[一言] このタイミングでのおめでた報告は不吉!!!フラグかと思ってしまう!!!あああ先生たち死なないで〜〜!
2023/10/29 05:49 退会済み
管理
[気になる点] >奴隷 奴隷とは言っても民間人を魔族が囚えて奴隷におとしたのだから国にとっては普通に国民だろうに…… 別に犯罪奴隷でも借金奴隷でもなさそうなのにな。 まあ、奴隷じゃなくても難民である…
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