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【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第五章 ディナビア半島編~停戦して交渉して解放した~
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第八十二話 調印式

いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

九月十日にブレイドコミックス様より、ロメリア戦記のコミックス第四巻が発売されます。

そして九月十八日に小学館ガガガブックス様より、ロメリア戦記の五巻が発売されます。

よろしくお願いします。



 喪服を着たジャネット女王が、紙にペンを走らせ署名をする。名前を書き終えると、ペンを置き左隣を向いた。彼女の左隣にはヒューリオン王国の代表が座っており、手元にはジャネット女王が署名した物の写しがある。こちらにはジャネット女王と代表の署名がすでになされていた。


 ジャネット女王が微笑み、黒いレースの手袋に包まれた右手を伸ばす。代表がその手を取り、二人が握手を交わすと同時に周囲から拍手が沸き起こった。


 白鳥宮の離宮では、ジュネブル王国の再興を認める調印式が行われていた。滅んだとされていた王国の復活は、ヒューリオン王国によって正式に承認され、拍手でもって迎えられている。


 桃色のドレスを着た私は、各国の代表の一人として末席に座り、手袋に包まれた手で拍手する。私の後ろには橙色のドレスを着た、秘書官のシュピリが同じく拍手をしていた。更にその後ろには、光沢のあるタキシードを着たグランとラグンが護衛についている。


 シュピリは少し前までガンガルガ要塞で戦後処理を、グランとラグンは負傷を治すため療養していた。だがディナビア半島を平定している間に、戦後処理も区切りがつき、グランとラグンの傷も癒えた。一方でディナビア半島を平定した戦後処理の仕事が増え、アルやレイ達には休みを与えねばならなかった。そのためシュピリやグランとラグンに来てもらったのだ。離宮の警備として、ゼゼやジニ、グレンとハンスもいる。


「ディナビア半島に来たら、式典の護衛だ。これはついていたね、ラグン」

「確かにただ酒に豪華な食事が食べられる。いい仕事を貰えたね、グラン」

 グランとラグンは小声で話し、そして私に目を向けた。


「ロメリア様のドレス姿も見られる。これも役得」

「ああ、シュピリ秘書官もドレスがお似合いですよ」

 グランが私のドレスを見て白い歯をのぞかせ、ラグンがシュピリを見て頷く。


「えっ、あ、ありがとう……ございます」

 シュピリは顔を赤らめて視線を逸らす。一方私は褒められて顔を顰めた。

 正直ドレスは好きではない。だが式典の時まで軍服と言うわけにはいかず、ドレスに袖を通さねばならない。皆は似合っていると褒めてくれるが、私に桃色は似合わない。


「私はともかく、二人も服が似合っていますよ」

 私は光沢のあるタキシードを着た、グランとラグンを見た。双子は整った顔をしており、艶のある黒髪も相まって妖艶な色気がある。この二人が着飾っていれば、実に華やかだ。


「この後は宴が予定されていて、ダンスの時間もあるでしょう。きっと争奪戦が起きますよ」

 私は笑いながら、調印式の会場に目を向けた。会場には新生したジュネブル王国の再興を祝うため、各国の貴族が集っている。中には貴族の令嬢もおり、熱い視線をグランとラグンに向けていた。


 着飾った淑女達を見て、シュピリが顔を俯かせる。グランとラグンをダンスに誘いたいが、美しい令嬢を前にしては、誘っても勝てないだろうと思っているのだろう。私は少し考えた後、シュピリに目を向けた。


「シュピリさん。貴方、ダンスは出来るのですか?」

「は、はい。嗜みとしてしつけられましたので」

 私も子供の頃、親にしつけられた。もっとも、全く身につかなかったが。


「へぇ、では踊っているところを見せてください。誰かお相手はいますか?」

「いえ、知り合いは一人もいなくて……」

 シュピリは首を横に振った。当然だろう。ライオネル王国ならともかく、異国の地でシュピリの知り合いがいるはずがない。


「では、グラン、ラグン。相手をして差し上げなさい」

「えっ、でも……」

 驚くシュピリに、グランとラグンが悲しげな声をあげる。

「そんな、僕達と踊って頂けないのですか?」

「シュピリさんと踊るのを、楽しみにしていたのに」

 憂いを帯びた顔を見せる二人は、実に色気がある。


「あっ、その! いやというわけではありません!」

「本当ですか!」

 シュピリが否定すると、悲しげに伏せていた目を一転させて明るく微笑む。子供のような天真爛漫な笑みを見て、シュピリの顔が更に朱に染まる。


 シュピリは驚いたり照れたり赤くなったりと、ころころと表情が変わる。双子にいいように遊ばれていますよと思うが、口には出さないでおく。


 調印式の会場に目を戻せば、会場の左にある大きな扉が開かれる。扉の向こうには宴の準備が整っていた。大きなテーブルにはお酒が入ったグラスが幾つも用意され、給仕達が料理を運んでいる。楽団もいるらしく、華やかな旋律が流れ始めた。

 調印式に参加している貴族達が、宴の会場へと移動していく。


「さて、我々も行きましょうか」

 私もシュピリやグラン達を伴い、会場に移動する。シュピリは早くいきたそうにしていたが、私の足取りはそれほど軽くない。

 宴は好きではなかった。だがライオネル王国の代表として、参加しないわけにはいかない。


 私はダンスを誘われたとき、断る言い訳を考えながら歩いた。



別シリーズとして、外伝作品を掲載する『ロメリア戦記外伝集』がございます。

時系列が本編に合わないので、本編ではなく別シリーズとして掲載することにしました。

作者名をクリックしていただけると、ホーム画面に移動できますので、そちらからご覧ください。

またこれは今後の展開ですが、現在連載中のディナビア半島編の連載が終われば、小学館ガガガブックスから電子書籍限定で発売している『ロメリア戦記外伝①』の掲載を『ロメリア戦記外伝集』で掲載していこうと思っております。これからもよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
つまさきかゆかゆ病はいかがでしょうw
[一言] 5巻おめでとうございます ろめ様「なんで裏方の私までダンスパーティーに参加させられてるんでしょうね」 ぎゃみ「わかるぞ。我々を参加させるぐらいなら、その時間と予算をこちらに寄越せと言いたい…
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