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【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第六章 ディナビア半島編~停戦して交渉して解放した~

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第三十二話 イザークの苦悩⑧

いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

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 イザークは眠れぬ夜を過ごし、気が付けば空が白み始めていた。外からはパンを焼く匂いが漂ってくる。ミモザ達が朝食の準備をしているのだ。イザークはサーゴを起こし、敷いた布を畳んで片付ける。そして朝食の準備をすべく、テーブルを組み立てて椅子を並べた。


 しばらくすると料理を終えたミモザとユカリが、焼いたパンやスープを手に天幕に入ってくる。二体に続きアザレアもやってきた。

 アザレアを一目見るなり、イザークの胸は高鳴った。あまり見てはいけないと思うが、視線はつい彼女を追いかけてしまう。一挙手一投足すら美しいと感動し、僅かに漂う香りにすら興奮を覚えた。


 アザレアの色香に迷うイザークだが、こんなことではいけないと自分を叱咤した。

 サーゴやゴノーに対して、仕事に集中しろと説いていたのは他でもない自分だ。こんなことでどうすると首を横に振り、雑念を追い払う。だが無理矢理視線をアザレアから外しても、アザレアの口から発せられる旋律の如き美しい声を聞くと、思考は酒に酔ったかのように蕩けてしまう。


 何度も自重しろと言い聞かせるが。自分自身ではどうすることも出来なかった。ならばいっその事、この思いをアザレアに伝えてみるか?

 イザークは右の拳を固めた。


 ギャミとアザレアが付き合っていることは、父であるガリオスから聞いている。思いを伝えても、当然自分は振られてしまうだろう。だが万が一という可能性があった。

 イザークの見る限り、ギャミはアザレアに対してぎこちない態度をとっている。あまりうまくいっていないことは見てとれた。ならば自分にも可能性があるのではないか?


 イザークの脳裏に打算にまみれた考えが浮かび上がる。

 もちろんこれが、大変不義理なことであることは分かっていた。尊敬する相手の女性を奪おうというのだから、許されないことだろう。しかしこの思いを止められそうになかった。


「アザレア様」

「はい、なんでしょう。イザーク様」

 イザークが意を決し声をかけると、アザレアが紅玉の瞳を仮面の下から向け、弦楽器の如き美しい声を返した。


 色彩を放つ艶やかな瞳と聞く者を虜にする声を向けられ、イザークはそれだけで天にも昇る心地となった。

 あとでお話があります。そう切り出しかけた瞬間だった。目の前にいるアザレアの顔が変化した。


 仮面から覗く赤い瞳は喜びに満ち溢れ、花が咲いたような笑みを浮かべたことが仮面越しにも伝わった。

 一見すると腐病の面を被るアザレアに、大きな変化はない。だが明らかにアザレアの美しさが増し、仮面の下にある瞳が輝きを増した。しかしその瞳が見つめるのは、目の前にいる自分でないことに、イザークは気付いた。


 イザークが振り返ると、そこには一体の魔族がいた。

 背丈は子供のように小さく、顔はツルツルとしており皺ひとつない。背筋は曲がり脚を引きずり、手には杖をついている。


「おはようございます、ギャミ様」

 アザレアは起き出してきたギャミに声をかけた。


 ただの朝の挨拶である。しかしその声には溢れんばかりの喜びがあった。

 アザレアはギャミに会えただけで、無常の喜びを感じているのだ。

 イザークは改めてギャミを見た。


 醜い。魔族の美的感覚からして明らかに醜い姿であった。しかしその醜いギャミを、絶世の美姫が惜しみない愛情を注いでいた。

 ギャミに会えた。ただそれだけで表情を一変させたアザレアを見て、イザークは自らの恋が儚くも終わったことを知った。

 自分ではない。あの美しい笑顔が、声が、眼差しが向けられるのは、自分ではないのだ。


「イザーク様。先ほど何か言われていましたが、何か御用でしょうか?」

 アザレアが瞳をイザークへと向ける。しかしその目には、ギャミを見つめていたような輝きはない。


「いえ、大したことではありません。今日も頑張っていきましょう」

 イザークは諦念と共に、自らの心にそっと封をした。


イザークの初恋、半日以下で終了

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― 新着の感想 ―
[一言] まあ、眼中にないよね
[一言] イザーク君、ギャミが亡き者になればアザレアさんフリーになるよ?(なお、アザレアさんが靡くとは言っていない)
[良い点] 初恋の割に色々察しがいいな〜 ガリオスも恋愛に興味はない割に恋愛センサーがそこそこ効く(まあアゼリアさんが分かりやすいだけ?)の性質が遺伝した?
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