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【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第五章 ガンガルガ要塞攻略編~連合軍と共に、難攻不落の要塞を攻略しに来た~
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第九十八話 好機

いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

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 フルグスク帝国の皇女グーデリアは、激しい頭痛に耐えながらも、穴の底を見据えた。


 すり鉢状に穿たれた穴の底では、ライオネル王国のカイルレンとオッテルハイム、グランベルにラグンベルの四将軍が、悪鬼の如きガリオスに立ち向かっている。さらに穴の縁では白馬に跨がる聖女ロメリアが、弩兵や弓兵に指示を出していた。


 弩兵や弓兵の援護を受けて、オッテルハイム将軍とカイルレン将軍が、ガリオスに攻撃を仕掛ける。その隙に馬車に取り付けられた巨大弩に矢が装填され、二人の騎兵が横に並んでガリオスに迫る。並走する騎兵の間には、丸太が吊り下げられている。城攻めに用いる破城槌だ。


 ロメリアの合図に、オッテルハイムとカイルレンの両将軍が後退する。二人が下がった直後、巨大弩が放たれてガリオスの胴に突き刺さる。一瞬ガリオスの動きが止まり、そこに騎兵が肉薄して破城槌をぶつける。


 ライオネル王国の破城槌は小型軽量ながら、先端には爆裂魔石が取り付けられている。激突の衝撃で爆裂魔石が破裂し、ガリオスが吹き飛ばされて転がる。だが城門をも破壊する一撃を受けても、ガリオスはすぐに起き上がった。そして棍棒を高らかに掲げて力をためる。


 グーデリアは慌てて魔力を練り、穴の上に巨大な氷柱を生み出そうとした。

 ガリオス渾身の一撃は、地形すら一変させる威力を持つ。好きにさせてはいけないと、グーデリアは魔法を放とうとしたが、その直前でガリオスは構えを解き、その場を離れる。


 魔力を消耗させるための陽動と気付き、グーデリアは魔法を解除して消耗を抑えた。しかし直前まで魔法を放とうとしていた反動で、頭を締め付けるような頭痛が走った。視界が歪むほどの激痛だったが、グーデリアは唇を噛んで耐えた。耐えなければならなかった。何故ならば――。


「おい、グーデリア!」

 背後から声がかけられ、グーデリアは顔だけを返して振り向く。そこには金髪に褐色の肌を持つヒュースが、王冠を戴く太陽の旗を支えていた。その足元には、赤い天鵞絨の長外套を着たヒューリオン王が倒れていた。


「なんだ、ヒュース」

 グーデリアは痛みをこらえ、平静を装った。

 やや軽薄そうな顔つきの青年が、憂いを込めた瞳をグーデリアに向ける。


「その……大丈夫か?」

「この程度で心配される覚えはない」

 頭が割れそうな頭痛を押し隠し、グーデリアはつれない言葉を返した。ヒュースに余計な負担をかけたくなかったからだ。


 ヒュースは今、数人がかりで揚げるような旗を、たった一人で揚げている。

 ただでさえ重い旗だが、かかる重圧は単純な重さだけではない。ヒューリオン王国の兵士達は、ガリオスの軍勢に背後から攻撃され、混乱状態にあった。しかしヒュースが国王旗を掲げたことにより、一部の兵士達が混乱から立ち直り始めていた。ヒュースの肩には旗だけでなく、ヒューリオン王国軍の命が乗っているのだ。


 出来ることならグーデリアは駆け寄り、ヒュースと一緒に旗を支えてやりたかった。しかしそれはしてはならないことだった。

 ヒュースが支えているのは、国王のみが揚げることを許される国王旗だ。他国の者が触れて良い物ではない。それにヒュースは、ヒューリオン王から次期国王の指名がなされている。次代の王が兵士達を奮い立たせるために、一人で旗を揚げたのだ。誰も手を出してはいけない。


 グーデリアに出来ることと言えば、共に立つことだけだった。

 激しい頭痛に耐えながら、グーデリアは穴の底に目を向けた。穴の底では、グランベルとラグンベルの双子将軍が、二身一体となって槍を振るう。

 ガリオスは槍の嵐を棍棒で受け切ることが出来ず、体から血を流す。


「いてぇな、おい!」

 ガリオスが棍棒を横薙ぎに払う。双子将軍が揃って後ろに飛び退くも、ガリオスの棍棒が狙っていたのは地面に落ちている岩だった。岩が棍棒に当たり、小石のように飛んでいく。岩が向かう先には、巨大弩が載せられた馬車だ。岩が馬車に命中し、巨大弩が粉砕される。


「大当たりぃ!」

 ガリオスは大口を開けて笑いながら、左手で地面の石を掴む。そして今度は、穴の縁に並ぶ弩兵達に向けて投擲した。

 ただの投石だが、ガリオスの怪力で投げられた石礫は鎧や兜を穿つ。三人程の弩兵が顔を打ちぬかれ、腹から血を流し倒れていく。


 減っていく攻城兵器や倒されていく弩兵を見て、グーデリアは顔を顰めた。

 先程からガリオスは、四将軍と戦いながらグーデリアを牽制し、石や岩を用いて弩兵や馬車を攻撃していた。そのためグーデリアは疲弊し、巨大弩を載せた馬車はあと二台しか残っていない。弩兵も当初の数の半分ほどにまで減り、破城槌も四本を残すのみとなっている。


 ロメリアに目を向ければ、ライオネル王国の聖女もこの事態に歯噛みしていた。ロメリアは、明らかにガリオスを倒す方法を模索して戦場に来ていた。弩兵を始め攻城兵器の数々は、全てガリオスを倒すための物だ。


 本来なら弩兵に巨大弩、破城槌は十分に数が揃っていたはずだ。だがライオネル王国はヒルド砦攻略のため、弩や攻城兵器を連合軍に提供している。そのせいで数が不足しているのだ。

 グーデリアも助けになりたいが、すでに大量の魔力を消費しており、大きな魔法はあと使えて一度か二度。それ以上はどれほど力を振り絞っても不可能だった。


 ロメリアの顔にも焦りが見えた。巨大弩や破城槌の援護がなければ、四将軍の負担が増える。勝負を急がなければならなかった。

 ロメリアがグーデリアを見る。視線の意図に気付いたグーデリアが顎を引くと、ロメリアが残った四本の破城槌を騎兵に持たせ、穴の四方に均等に配置する。四方向から破城槌で同時攻撃を仕掛け、間髪入れずに四将軍による攻撃を叩きこむ。そしてグーデリアがガリオスを氷漬けにする。これならばいかにガリオスでも殺せるはずだ。


「オットー! カイル! グラン! ラグン!」

 ロメリアが号令を発すると、四将軍が頷き、四人同時にガリオスに仕掛ける。

 オッテルハイム将軍とカイルレン将軍がガリオスの右側から迫り、グランベル将軍とラグンベル将軍が左側から攻撃をする。対するガリオスは正面を向いたまま、棍棒を右へと傾け八相の構えをとった。そして左右からくる四将軍に対し、棍棒を右へ左へと動かし対抗する。


 戦鎚を弾き、剣を牽制し、二本の槍を防ぐ。その攻防は互角。いや、ガリオスが押していた。ガリオスはこれまでの戦いで、四将軍の力や動き、槍捌きを見切り始めている。

 ロメリアが手を振り、破城槌を持った騎兵達に突撃命令を出す。四将軍が押し切られる前に、勝負を決めなければいけなかった。四組八騎の騎兵が破城槌をぶら下げ、砂塵を巻き上げてガリオスに突撃する。巨大弩には矢が装填され、ガリオスに狙いを定めた。グーデリアも最高の魔法を放つべく、穴の上に巨大な氷柱を生成する。


 ガリオスの前後左右から破城槌が迫るのを見て、四将軍が絶妙な距離で後ろに飛び退く。ほぼ同時に、残った弩兵と弓兵がガリオスの顔に向けて矢を放つ。ガリオスは顔を守るために両腕を上げる。すかさず巨大弩の矢が放たれ、がら空きとなったガリオスの左わき腹と右肩に命中した。

 負傷したガリオスが俯き、その巨体を傾けて膝を付いた。


 好機だ!


ロメリアないしょばなし


ヒュース「この旗くそ重い。誰か手伝って」

グーデリア「旗を掲げるヒュースの手助けをしてをしてはならない(キリ)」

ヒューリオン王「お前なら一人でやれる(キリ)」

ヒュース「……」


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― 新着の感想 ―
[一言] もしかして「ガリオスに氷魔法放つよりヒュースの支える旗の付け根を凍らせて固定したほうが戦況に有利なんじゃ?」 とか思ったけどグーデリアさんはその選択はしなさそうだなって
[一言] ヒュースは腰痛持ちになりそうな予感。
[一言] ガリオス閣下はゴルフも上手そう
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