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【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第五章 ガンガルガ要塞攻略編~連合軍と共に、難攻不落の要塞を攻略しに来た~
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第七十六話 戦場のお茶会④

いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

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 打ちひしがれたゼファーを前にして、剣を納めたゼブル将軍は一息吐くと踵を返した。そしてこちらに向かって歩いて来る。私達の前まで来ると、ゼブル将軍は軽く頭を下げた。一礼するその顔は、凪いだ水面のように落ち着いている。


 私は礼を返した後、どうするか思案した。私達はゼファーを呼びに来たが、彼は蹲り動けない。ゼファーも負けたところを、女の私達に見られたくはないだろう。少し時間をおくべきだと思ったが、隣にいたレーリア公女がゼファーの下に駆け寄ってしまった。


「ゼファー、大丈夫?」

 息を切らせて駆け寄ったレーリア公女が、血に染まったゼファーの袖を見て青ざめる。そしてゼファーにハンカチを差し出す。

「これは、みっともないところを見られました」

 私達を見上げるゼファーの目は屈辱に歪んでいた。


 ゼファーは差し出されたハンカチを受け取らず俯く。ヘレン王女が歩み寄り傷口に右手をかざした。すると白い光が手からあふれ出す。傷を治す癒しの技だ。傷は浅く、すぐに塞がった。だがゼファーは立ち上がることが出来なかった。

 私はなんと言っていいか分からなかった。駆け寄ったレーリア公女も言葉に迷う。敗北したばかりの男性に、かける言葉はなかなかない。


「父上はいつもこうなのです。私を叱ってばかりで、優しい言葉などかけてもらったことがありません。どうして父上は私に厳しく当たるのでしょう?」

 ゼファーの弱音を聞き、私はため息をこらえた。

 どう言ってあげればいいのか迷っていると、硬い声が響いた。


「ゼファー。貴方、それ本気で言っているの?」

 声に驚き顔を上げたゼファーを、レーリア公女が冷たい目で見下ろしていた。レーリア公女は先程まであれほどゼファーを心配していたのに、今や顔は怒りで震え、視線には侮蔑が込められていた。


「なら言わせてもらいますけれど、私はお父様やお母様に、叱られたことがありません。ですがそれは、私を愛していたからではありません。私に何も期待していなかったからです」

 レーリア公女の告白は、胸が痛くなるものだった。

 期待されていないということは、叱られるよりも辛いことだ。


「そして今、お父様は私が戦地で死ぬことを期待しています。これまで叱らなかった代わりに、死んで役に立てと言っているのです!」

 レーリア公女の悲痛な告白に、ゼファーは閉口し言葉もなかった。


「何故ゼブル将軍が貴方に厳しく当たるのか、本当に分からないのですか?」

 涙をこらえるレーリア公女の言葉に、ゼファーはまた俯いた。

 私は静かに息を吐き、頭を垂れるゼファーを見た。


 ゼブル将軍に敗北したゼファーだが、彼の腕前がゼブル将軍に劣っていたわけではない。先程の兵士との訓練を見ても分かるが、ゼファーは相手の攻撃を見切る冷静さと、勢いよく攻撃に転じる大胆さがある。だが彼はその実力に反して、実戦では決定的な働きをしてはいない。五日前に、魔王軍の兵士と戦う彼の姿を見たが、訓練の時に見せるような大胆さがなかった。

 手堅いといえば聞こえはいいが、実戦となると萎縮して実力を発揮出来ないだけだ。ゼブル将軍が厳しく当たるのは、ゼファーの弱さを鍛えるためであった。


「貴方を打ち据えていた時、ゼブル将軍は顔で怒りながらも、心の中では貴方を常に励ましていたのですよ? その声が聞こえなかったのですか?」

 レーリア公女の言葉を聞き、私は目を閉じた。過去を思い出せば、ゼブル将軍はことのほかゼファーに厳しく当たっていた。しかしその心の内には、常に息子を想う親心があった。


 いつかは誰かが言わなければならないことだった。ゼブル将軍は私かヒュース王子が、指摘することを期待していた。だがレーリア公女が言うとは思わなかった。

 蹲ったままのゼファーに、レーリア公女はハンカチを投げるように渡した。


「そうそう、もうすぐお茶会があるので、準備してください。別にそのまま来てくださっても構いませんけれど、せめて泥ぐらいは落としてから来てくださいね」

 レーリア公女は冷たい声をかけた後、優雅に振り返り私を見た。


「それでは戻りましょうか、ロメリア様、ヘレン様」

 レーリア公女が踵を返す。ヘレン王女が慌てて付いて行き、私も続くしかなかった。歩きながら一度だけ振り返ると、ゼファーはまだその場から動けずにいた。


ロメリア内緒話

ロメリア「親心って伝わらないものみたいですね

アル「そーですね、私の知り会いも、娘さんとの関係がうまくいってない感じです」

ロメリア「誰かは知りませんが。私でよければ相談に乗ると言っておいてあげてください」

アル「……」

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― 新着の感想 ―
アルの苦悩が続くww
[一言] 他の方のコメントで「ロメリアは自分に向かう好意には鈍感」 ってあったけど、物語的にこれが致命的なピンチを呼び込むことってあるのだろうか? 王の自分に対する危険視は流石に気づくとは思うけど……
[一言] たぶん誤用かと思いますが、閉口するはうんざりするという意味です。
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