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【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第五章 ガンガルガ要塞攻略編~連合軍と共に、難攻不落の要塞を攻略しに来た~
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第六十三話 ヘレンの悩み②

いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

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 音を聞いたガンブ将軍が、手を掲げて前に倒す。銅鑼や太鼓の音が響き、盾を構える兵士の列が前進する。ヒルド砦から矢が降り注ぎ、兵士達は盾を掲げて矢を防いだ。

 ヘイレント王国の兵士達も、反撃の矢を放つ。だが魔王軍はヒルド砦の外壁に陣取り、壁を盾にして戦えるため有利となっている。


「よし、弩部隊も前進させよ」

 ガンブ将軍が命じると、弩を抱えた三百人ほどの兵士が前に進み、盾を構える歩兵の後ろに付く。そして滑車を用いて弦を引き、次々に矢を放っていく。

 これらの弩はライオネル王国から提供されたもので、弓よりも威力の高い弩は、外壁や魔王軍の兵士が構える盾を貫通して、魔族を射貫いていく。

 魔王軍に痛手を与えていることを見て、ガンブ将軍が次の命令を出す。


「ライオネル王国から借りた、例の馬車も出せ」

 ガンブ将軍が指示すると、後方から三台の馬車が前進してくる。荷台には幌が取り付けられていた。馬車は魔王軍の弓が届かない場所で停止すると、幌が一斉に外される。幌が外された荷台には、巨大な弩が台座に据え付けられていた。


 荷台に乗る兵士が、滑車を用いて弦を引く。そして太い矢が装填された。

 準備が整ったのを見ると、ガンブ将軍が手を振るった。三台の巨大弩から流星の如く矢が放たれる。矢が向かう先はヒルド砦の門の上、城壁を盾に矢を放つ魔王軍の兵士だった。

 木製の壁ごと魔族の兵士が射抜かれ、後ろに倒れた。一撃で絶命したのが、ここからでも分かる。巨大弩は連射性能も高いらしく、次々に矢を放っていく。


「魔法兵だ。爆裂魔法を門の上の敵に集中!」

 ガンブ将軍の指示に、ローブを着た魔法兵が前進する。

 射程距離にまで到達した魔法兵は、宝玉の付いた杖の先端をヒルド砦に向ける。赤い光の球が一斉に杖から放たれ、門の上に殺到する。だが光の球が着弾する寸前、青白い光が門の周囲を覆う。青白い光に触れると、光の球が掻き消えてしまう。


 魔法を無効化する魔法の壁だ。ここからは見えないが、魔族の魔法兵が防御しているのだ。しかし全ての光の球が消えたわけではない。魔法壁を突き破り、幾つかの光の球がヒルド砦の壁に着弾。爆発を起こす。


「いいぞ、徹底的に叩け」

 ガンブ将軍は魔法兵の攻撃だけでなく、弩兵と巨大弩の攻撃も加える。

「よし、頃合いだ。破城槌だ! あの門を打ち破れ」

 ガンブ将軍の声に後方から蹄の音が響く。目を向けると、二人の騎兵が横に並んで前進していた。分厚い鎧を重ね着し、馬にも鎖帷子を着せている。


 並ぶ二人の騎兵に、四人の兵士が縦一列になって駆け寄る。兵士達はそれぞれ肩に細い丸太を担いでおり、丸太の先端には金属の塊が取り付けられていた。

 兵士達が騎兵の間に丸太を運ぶ。丸太は鎖で繋がれており、運んで来た兵士が騎兵にそれぞれ鎖を持たせる。二人の騎兵が鎖を引くと、丸太が騎兵の間で吊り下げられる。


 二人の騎兵は間に丸太をぶら下げながら、ヒルド砦に向かって行く。

 土煙を上げて疾走する二人の騎兵に、魔王軍が何本もの矢を浴びせかける。しかし鎧を重ね着した兵士は、矢を受けても足並みを乱さない。そして門にまで接近すると、勢いをつけて鎖を手放し、破城槌を門にぶつけた。


 破城槌が激突した瞬間、大爆発が起きた。破城槌の先端には、爆発する魔道具である爆裂魔石が装着されており、激突の衝撃で爆発を起こしたのだ。

 胃の腑を打つ衝撃に、ヘレンは縮み上がった。白煙の先を凝視すると、煙の切れ間にヒルド砦の門が見える。鋲が打たれた門は一部が吹き飛び、穴が空いていた。


「よし、次の破城槌を持ってこい!」

 気を良くしたガンブ将軍が軽快に命令を出す。重武装の騎兵が前に出て、次の破城槌が運ばれてくる。


「ライオネル王国からもたらされた攻城兵器は、軽量で使いやすいですな」

「ロメリア様には感謝しなければいけませんね」

 機嫌のいいガンブ将軍に、ヘレンも笑顔で頷く。


 ヘイレント王国が先程から使用している攻城兵器の数々は、どれもライオネル王国が提供してくれた物だ。どの攻城兵器も小型で軽量、馬車や馬で扱えるように考え尽くされており、素人のヘレンの目にも使いやすそうだった。

 それは素晴らしいと思うのだが、何故こんな物を用意していたのかが疑問だった。


 ヘレンはヒルド砦の南にある、円形丘陵に目を向けた。丘の上に突き立つ鈴蘭の旗の下には、亜麻色の髪に純白の鎧を身につけた女性がいた。ライオネル王国の聖女ロメリアである。

 颯爽と兵士を指揮する姿は、同性でも憧れを抱いてしまう。ロメリアを題材にした小説を読むのが趣味のヘレンにとって、まさに夢のような光景だった。しかし小説はあくまで小説。現実は物語とは少し違う。ロメリアは小説や劇では、慈愛に満ちた聖女と書かれることが多い。だが実際の彼女は優しいだけの女性でない。


 実物のロメリアは慈しみを胸に秘めつつも、その頭脳は冷徹で計算高く、とても合理的だ。最終的に犠牲を少なくするためならば、目の前の犠牲をいとわない苛烈さも持ち合わせている。そんな彼女は、無駄なことをしない。無駄と思えても、その全てには意味がある。


 ヘレンは視線を元に戻し、ライオネル王国から提供された、攻城兵器の数々や弩を見た。

 馬車に搭載可能で移動が容易、さらに連射性能まで高い巨大弩。そして騎兵二人で使用可能なほど軽量ながら、爆裂魔石が取り付けられ威力もある破城槌。どれも小回りが効いて扱いやすい。また数が揃えられた弩も、ヒルド砦を攻略するには便利だった。しかしどれほど使い勝手が良くても、ガンガルガ要塞に通用する威力ではない。何故こんなものを、ロメリアが持ち込んだのか分からなかった。




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― 新着の感想 ―
[一言] ここ数話、ロメリア視点の話がないなあ。今度は何を目論んでいるのか
[一言] まぁ周辺各国全部、同盟国()だからなぁ……
[一言] >ライオネル王国からもたらされた攻城兵器は、軽量で使いやすいですな 必要な事とはいえ、これで他国に技術が流れましたね まぁ、ロメ様的には他国の戦力が増えた方が対魔王軍で役に立つという事なんで…
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