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【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第五章 ガンガルガ要塞攻略編~連合軍と共に、難攻不落の要塞を攻略しに来た~
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第四十四話 ロメリアの怒り

いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

小学館ガガガブックス様よりロメリア戦記が発売中です。

BLADEコミックス様より、上戸先生の手によるコミカライズ版ロメリア戦記も発売中です。

漫画アプリ、マンガドア様で無料で読めるのでお勧めですよ。


すみません、前回のタイトルを付け間違えていました。

今回の題名がロメリアの怒りです


次回更新は五月三日を予定



 私がゼファーの叫び声を聞いたのは、この場にいる全員に、命令を下した直後だった。

 声と同時に、小型の弩を向ける魔族の姿が私の目に入った。次の瞬間鮮血が飛び、私の頬に降りかかる。左肩を見ると、そこには短い矢が深々と突き刺さっていた。

 突き刺さった矢の根元から赤いシミが広がり、白い服を染めていく。そして焼けつくような痛みが全身を貫いた。


「「「「「ロメリア様!」」」」」

 皆が口々に私の名前を呼ぶが、誰が誰だか分からなかった。ただ痛みが体中を駆け抜ける。

 状況は最悪だった。


 矢に射られたことではない。当たったのは肩だ、毒矢でなければ死にはしない。問題はロメ隊の全員が私を心配して、戻ってきていることだった。


 我々は退路をなくし、目の前には大軍が迫って来ている。こんな場所でもたついていれば、確実に全滅する。それはこの場にいる全員が分かっているはずなのに、将軍であるグランにラグン、オットーとカイルも私の命令を放り出して戻ってきている。

 痛みよりも怒りが脳を支配した。私は足に力を入れ、倒れそうになった体を無理矢理支える。


「来るな!」

 怒鳴るように私は兵士達に命じたが、ロメ隊の面々は脇目も振らずに戻ってくる。特に素早いカイルは、風の如く疾走して戻ってくる。


「カイルレン・フォン・グレンストーム!」

 私は大声でカイルの名を叫ぶと、動く右腕だけで剣を抜剣し、走って来るカイルに向けて振り下ろした。カイルは慌てて足を止め急停止すると、切っ先が額に触れる。


「何をしているのです! 私は命令を下しましたよ! 早く実行しなさい!」

 私はカイルだけでなく、ロメ隊の全員を睨む。

「オットー! 敵はこっちにはいませんよ! 反対側です! グラン! ラグン! いつまで私を見ているつもりです! 敵と闘いなさい!」

 私は再度叫んだが、ロメ隊は誰も動かない。じっと私を見ている。


「しかし、ロメリア様。お怪我が……治療を」

 カイルが私の左肩に突き刺さる矢を見て、手を伸ばそうとする。

「私に触れるな! 貴方達が私の命令を実行するまで、私は治療を受けない!」

 左肩から大量の血を流しながら、私は治療を拒んだ。しかしそれでもロメ隊の面々は動かない。動けなかった。


「はっ、早くしなさい!」

 緊迫を破るように叫んだのは、ホヴォス連邦のレーリア公女だった。

「貴方達が動かないと、ロメリア様を治療出来ません。ロメリア様を死なせるつもりですか!」

 私の意を汲んでレーリア公女が叫び、ヘレン王女も寄り添い治療のための準備をするが、治療までは開始しない。私は怒りを込めてロメ隊の全員を睨む。


「早く、早くしなさい!」

 レーリア公女の叱咤に、ロメ隊はようやく動き、踵を返して敵に向かって行く。

「ありがとう……ございました。レーリア様」

「いいのよ、ロメリア様。それよりも喋らないで」

「そうです、喋らないで」

 ヘレン王女が肩を縛り、止血をしてくれる。


「敵……は? 私を射た……魔族は……どうなりました」

 私は息も絶え絶えに尋ねた。

「ああ、それならマイスが倒しています」

 レーリア公女が目を向けると、視線の先では女戦士のマイスが、私を射た魔族の頭に斧を振り下ろしていた。さすが傭兵上がりは、どんな時でも冷静だと感心する。だがその半面、敵を前に倒すことすら忘れていたロメ隊に腹がたった。


「ロメリア様。矢を抜かないと、この傷は治療出来ません」

「それは駄目です、ヘレン様。矢を抜けば血を失って倒れます。それだけは駄目です」

 ロメ隊の面々は忠誠心こそ高いが、それゆえに私がいないと動けなくなる。ここで意識を失えばロメ隊がどう動くのか、……彼らを信用出来なかった。


「ですが、ロメリア様。矢に毒が塗られていたら」

「大丈夫です。ヘレン様。毒は塗られていません。私には分かります。以前毒矢で右肩を射られたことがありますから」

 私は大昔の記憶を引っ張り出した。アンリ王子と魔王討伐の旅に出ていた時、魔族の放った毒矢に射られたことがあるのだ。あの時は右肩だったが、傷口の感触から毒が無いことは分かる。ただし、死ぬほど痛いことは毒があろうとなかろうと一緒だが。


「陣地に入れば魔王軍が攻めてきます。そうなれば指揮する人間がいないと守りきれない。私が指揮せねば全滅します。このまま治療してください。出血を止めてもらえれば十分です」

「ですがロメリア様、そんなことをしたら、突き刺さった矢が再生した傷口に食い込んで、激しく痛みます」

「構いません。ヘレン様。やってください」

 私が歯を食いしばって頼むと、ヘレン王女は諦めの顔となり、右手を傷口にかざす。すると手から白い光が漏れる。癒し手が持つ癒しの技だ。


 優しい光が傷口を照らすと、出血が止まり徐々に痛みが引いていく。ほっとしたのも束の間、えぐるような痛みが体中を襲う。


「大丈夫ですか! ロメリア様!」

 痛みに顔をしかめる私を見て、ヘレン王女が治療を止めてしまう。

「大丈夫です、続けて」

 私は痛みに引きつる顔に笑みを浮かべて、治療の続行を頼む。


 死ぬほど痛いが、死にはしない。それに兵士達の中には、これ以上の怪我を負っている者もいるのだ。いちいち騒いでいられない。

 治療が再開され、激しい痛みが体を駆け抜ける。私は歯を食いしばり、顔から痛みの表情を消す。指揮官が痛がっていては士気に関わる。


 私は痛みに耐えながら戦場を見ると、オットー達がようやく配置についた。

 魔王軍は突然橋が落ちたことで、罠を警戒してかゆっくりと前進してきている。


「レーリア様、ヘレン様。私達も移動しましょう」

「分かりました。シュピリさん、案内してください。マイス、貴方はロメリア様を担いで。ヘレン、貴方は移動しながら治療を続けて。ゼファー様は連合軍の兵士をまとめてください」

 レーリア公女があちこちに指示を出してくれる。


 シュピリが慌てて先導し、女戦士のマイスが私を抱き上げる。ヘレン王女が移動の最中も傷の治療を進め、ゼファーが兵士達をまとめて指揮の補佐をしてくれる。

 私がライオネル王国の陣地にたどり着くと、先に到着していた兵士達が、魔法兵と一緒になり、土を掘って土塁を構築していた。

 私は陣地の入り口でマイスに下ろしてもらい、オットー達の後退を見守る。


「誰か狼煙を上げてください。符牒は六、四十六、十四、七、二十、三十四、四十五です」

「分かりました。六、四十六、十四、七、二十、三十四、四十五ですね」

 私はライオネル王国の兵士に命じたつもりだったが、ゼファーが頷き狼煙を上げてくれる。

 煙が空に昇り、地響きのような足音が迫って来た。


ロメリアクイズ!

ラストの狼煙は、実は簡単な暗号になっています。

活動報告欄に『解答書き込み箱』を設置しておきますので、答えが分かったと言う人は書き込んでください。

頃合いを見て、答え合わせをしようと思います。

賞品はなんと私の笑顔!

どしどし応募してくれよな!


ヒント 五十以上の数字は無い。


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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱり聖女というより烈女だよなあ…… 後々ロメ隊の再教育がオソロシイ
[気になる点] 狼煙で何十パターンの符牒を何個も伝えるのは無理じゃないかと今更ながら思いましたが、ここはファンタジー世界、理不尽は全て魔法が解決してくれるのです。 火を着けるのも煙に色を着けて空中で記…
[一言] かわせきとめろ
感想一覧
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