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【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第一章 カシュー地方編~ロメリアの兵士達~魔王を倒したら婚約破棄された~

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第二十九話 ガンゼ親方と港建設の打ち合わせをした①



 去っていく恩師を見送っていると、隣にいたミアさんの視線を感じる。


「私も子供の頃はあんなものです。幻滅しましたか?」

「いえ、とんでもないです」

「ならいいのですが」

 しかし先生が来てくれたことは心強い。手助けになるだけではなく、二人がいることで私の暴走も防げる。

 立場上は私が上とはいえ、恩師にあたる二人は私の顔色を窺ったりはしない。

 自分の意見が全て通る状態は、健全とは言えない。私も間違えるときは来るだろうし、否定してくれる人物は必要だ。


「ではミアさん。私は天幕に戻ります。鉱山技師の方と話がしたいので連れてきてもらえますか?」

 ミアさんは請け負ってくれたので、私は一人天幕に戻る。

 天幕には大きな机が置かれ、渓谷の地図が広げられていた。

 重かった武装を解き、剣を立て掛け兜を脱ぎ、鎧掛けに胸鎧と鎖帷子を預ける。

 胸鎧に鎖帷子。兜だけなのでまだ一人で装着できるが、正直一人で身に着けるのは困難だった。確かに、こういう時は侍女がいてくれるとありがたい。


 武装を解いて身軽になると、ミアさんが山師の方を連れてきてくれた。

 入室を許可すると四人の男性とともに、ミアさんが入ってくる。

 私は挨拶もそこそこに本題に入った。


「現在この辺りまで魔物の掃討が進んでいます。ですので、この辺りまでなら比較的安全です」

 地図の上を指で示し、安全とされる地域を大まかに指し示す。

 何年も前の調査だが、いくつか金が出ると予想される場所がある。

「来てもらって早々で悪いのですが、明日にでも調査に向かっていただきたいのです。もちろん護衛はつけます」

 急な話だが、計画はできるだけ前倒しにしていきたい。


「もうあと数週間で、渓谷の魔物の掃討が完了します。それに合わせて金鉱山の開発を開始したいのです」

 拙速ではあるが、金鉱山はできるだけ早く稼働させ、人を集めたい。

 話し合い、調査するべき場所を検討して決定する。

 雑の一言に尽きるがこっちはこれでいい。

「ではよろしくお願いします」

 手早く会議を済ませ、四人の山師は明日のための準備に入ってもらう。


「金が出るといいですね」

 出て行く鉱山技師の背中を見て、ミアさんが切実に言うが、少し笑ってしまう。

「そうですね」

 ミアさんには笑って答える。


「次は建設業者の方を呼んでください。彼らとも話をしたいので」

 むしろこっちが本命だ。

 ミアさんにまた取次ぎを頼みしばらく待っていると、やや背の低い、ずんぐりとした初老の男性がやってきた。

「セリュレの旦那に言われてきた、ガンゼってもんだ」

 顔に巌のようにしわの入った男性は、職人気質で気難しそうな顔をしていた。セリュレ氏は最高の親方をよこすと言っていたので、腕に覚えのある人なのだろう。

 ガンゼ親方は入るなり私をじろじろと見て、フンと鼻息を漏らした。


「本当に女なんだ」

 どうやら女と仕事をするのが不満らしい。とはいえこれは仕方がないだろう。女性が男性に交じって仕事をするなどありえない。これはこの先、一生ついて回る問題だ。いちいち目くじらを立てていては、やっていられないだろう。


「まぁいい。セリュレの旦那には世話になってる。言われた仕事はするよ。港を作りたいんだってな」

「はい、まずはこの地図を見てください。ここに港が作れそうな入り江があります。そこまでの道のりは事前調査を終えています。三か所ほど通行が困難な場所がありますので、そこは手を入れる必要がありますが、それ以外は十分な道幅があります。荷物の搬入に困ることはないでしょう」

 難所とされる部分もすでに調べてあり、それほど大掛かりな工事にはならないはずだ。


「なるほどな、それで? 港を作る場所はどんな地形だ?」

「ここです。岩山が集まる場所ですが、この一点だけ開けていて海とつながる入り江があります」

 おそらく大昔、ギリエ渓谷には川が流れていたのだろう。大量の水が岩を削り渓谷となり入り江に流れ込んでいたのだ。


「入り江の前には岩山が塞ぐような形で、交互に出っ張っています」

 私は羽ペンを取り、紙に簡単な図形を描く。

 両方の手のひらを立てて前後に並べたような形だ。

「岩山のせいで、入江が外から見えないんだな。入り江の深さはどれぐらいだ? あとこの岩山と岩山の間はどれぐらいあるんだ?」

 ガンゼ親方は必要なことをまず聞く。


「入り江は浅いですね、岩山の間隔もそれほど広くはありません」

 見た目はきれいで景観はよいが、港としては不十分だ。

「なら大型船は入れないな。沖に停泊させて、荷下ろし用の船に詰め替えるしかないだろう」

 最初のうちはそうするしかないだろう。しかしそれでは話にならない。


「はい。ですので、親方には入り江を埋め立て、大きな港を作っていただきたい」

 私が港の計画を伝えると、親方は顔に刻まれた皺を全て伸ばして驚いていた。

「はぁ? 埋め立てるだと、そんなことできるわけがない。港が欲しければ桟橋を作ればいいだけだろう」

 ガンゼ親方が驚くが、それはこちらの台詞だ。

「そちらこそ何を言ってるのです。その程度の作業で済むなら、親方をわざわざ呼びはしません」

 杭を打って桟橋をかけるだけなら、兵士にだってできる。


「だが、埋め立てるとなると何年かかるかわからんぞ」

 確かに、大量の土や石を運ぶとなると、それだけ時間がかかる。

「そんなに時間はかけていられません。一年である程度形にしていただきたい」

 私は期限を区切る。平和な時代であるならゆっくりとやってもいいが、今は乱世だ。

 強い軍隊が必要とされ。軍隊を作るには金が要る。それも莫大な金が。

 だがそんな金はどこにも無い。無いなら作るしかない。

 港を作りカシューを発展させ、その利益で軍隊を賄う。これだけが王国を救う唯一の方法だった。



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[一言] カシューに港となれる入江があったのは幸運だったな
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