第十六話 ガンガルガ要塞攻略作戦開始
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天幕の外で並んで立つ双子に私は声を掛けた。
「グラン、ラグン。準備の方は?」
「完全に完了しています」
私が問うとグランが報告する。見ると確かに、陣地には兵士達が整列していた。
「といっても、やることはあまりありませんが」
グランの隣にいるラグンが、短く付け加える。
確かに、今日の作戦ではグランとラグンにしてもらうことはあまりない。ただし、各国代表に対する見栄もあるため、兵士達には完全装備で、陣地に待機するように命じておいた。
私はグランとラグンを連れて円形丘陵を登り、前線で指揮を執るための本陣に移動する。
丘の上に築かれた本陣では、オットーにベンとブライ、ゼゼとジニ、ボレルとガット、そして土木作業の現場責任者であるガンゼ親方、魔法兵隊長のクリートが立っていた。
陣地警備を頼んだグレンとハンス、諜報を任せているカイル以外は揃っている。
「ガンゼ親方、準備は?」
「爆裂魔石の準備は完了した。作業員も全員退避させてある」
私の問いに、ガンゼ親方が力強く頷く。
「ゼゼ、ジニ、ボレル、ガット。連合軍各国の動きはどうですか?」
私はロメ隊の四人に尋ねた。
「はい、ロメリア様! 先程馬を走らせて、戦場を確認してきました!」
「戦場に連合軍の姿はありません。完全に無人です」
ゼゼが元気よく報告し、落ち着いたジニが顎を引く。
「各国の将軍はそれぞれの陣地で、ことの成り行きを見守っているようです」
「ただし、王子や王女達はハメイル王国の陣地に集まっているようです」
ボレルが各国の将軍達の動向を伝え、ガットが王族の居場所を報告する。
各国の王子や王女達が、なぜハメイル王国の陣地に集まっているのは謎だが、特に影響はないと判断して私は頷いた。
「ベン、ブライ。魔王軍の動きは?」
「ロメリア様。魔王軍に目立った動きはありません」
「ただ、表門に僅かに動きがあり、連弩と投石器が準備されているようです」
私の問いに、ベンとブライが細かく報告する。
二人の報告に私は満足した。
魔王軍の動きはこちらの予想通りだ。やはり彼らは優秀な軍人揃いだ。私達の作戦を予想し、最も効果的な手段を取ってくる。問題は私の作戦が、彼らの予想を上回っているかどうかだ。
私はガンガルガ要塞を臨み、そして円形丘陵に築かれた各国の本陣を見る。
丘陵の上には五つの本陣が築かれ、連合各国の代表が私を見ている。いや、私が失敗するところを見ようとしている。
「では、皆さん。早速……」
「もうおやめください、ロメリア様!」
私が作戦開始の号令を告げようとすると、制止の声がかかった。私は声がした方向に顔を向けると、赤い服を着た秘書官のシュピリが立っていた。
我が秘書官はなかなかにひどい格好だった。髪は乱れ、昨夜はよく休めなかったのか目の下には大きなクマがあった。
「もう大丈夫ですか? シュピリさん。今日は一日、休んでいて構いませんよ」
私は昨日倒れたシュピリを労る。
「休んでなどいられません。もうおやめください。攻撃は失敗します。各国に詫びてライオネル王国に帰りましょう。信頼は失うかもしれませんが、兵士が死ぬよりはマシです」
シュピリの言葉に、私は感心した。
兵士をどれだけ殺しても構わないから、手柄を上げろと言いそうな彼女だが、無駄な攻撃で人命を損なうべきではないと考えたのだ。
「そういうわけにはいきません。このために準備したのです。やめるわけにはいきません」
私は首を横に振り決意を伝える。シュピリはもう何を言っても無駄なのだとうなだれた。
私はガンガルガ要塞に目を向け、一度大きく息を吸い、そして吐く。
事前の調査や準備に抜かりはない。成功する確率は高いはずだ。しかし結局のところやってみるまで結果は分からない。ならば信じて進むだけだ。
私は獅子と鈴蘭の旗の下で剣を抜き、天を突くように掲げた。
「作戦開始!」
号令と共に剣を振り下ろすと、爆発音が戦場に響き渡った。
今日は短いですがキリがいいので。
明日も更新します




