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【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第五章 ガンガルガ要塞攻略編~連合軍と共に、難攻不落の要塞を攻略しに来た~
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第六話 三カ国の王族と将軍

いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

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 軍議が行われる天幕の中に入ると、室内には巨大な円卓が置かれ、そこには地図が広げられていた。すでに三つの国の代表が集まり、席について談笑していた。


「先程は実に見事な戦いぶりでしたな、ゼブル将軍。ハメイル王国は精鋭揃いでうらやましい」

「大陸にその人ありと言われた、ガンブ将軍にそう言っていただけるとは恐縮です」

 白髪の混じった髪と髭を持つ男性が、赤い羽根飾が付いた兜を机に置く男性と話していた。

 長い髭の男性は、かつてその名を轟かせたガンブ将軍だ。齢七十近いはずだが、今も第一線で指揮を執っている。そして赤い羽根飾りの兜を持つ男性は、ハメイル王国のゼブル将軍だ。


「勇敢なハメイル王国の力があれば、ガンガルガ要塞などすぐに落ちるでしょう。ヘレン王女もそう思いませんか?」

 ガンブ将軍が、自身の右隣にいる緑色のドレスを着た女性に声をかけた。

 短い黒髪の下に大きな瞳を持つその女性は、ヘイレント王国の第二王女であるヘレン王女だ。確か今年で二十歳と聞いていたが、くりくりとした瞳が小動物を思わせ、年齢よりも幼く見える。


「はい、とても勇壮で立派でした」

「ヘレン王女にそう言っていただけると、兵士冥利に尽きます」

 ゼブル将軍が満面の笑みを浮かべて頷き、そして視線を背後に立つ若い男性に向けた。


「お前もそう思わんか? ゼファーよ」

「え、あの、その……」

 茶色い髪の下に気弱そうな顔をのぞかせる青年は、自分に話が振られると思っていなかったのか、しどろもどろになっていた。


「しっかりせんか!」

 ゼブル将軍は答えに詰まる青年を一喝する。

「申し訳ありません。ヘレン王女の前で舞い上がっているようでして」

 怒鳴られた青年はがっくりと肩を落とす。青年はゼブル将軍の息子であるゼファーだ。気弱な顔つきをしているが、確か王家の血を引く彼は王位継承権を持っているはず。しかし威圧的な父親に睨まれ委縮してしまっている。


 ゼファーの隣には、左目を眼帯で覆う護衛の騎士ライセルが立っていた。ライセルは、慰めるようにゼファーの肩を叩く。

 ゼブル将軍とガンブ将軍はまた互いを褒め合う話に戻り、ヘレン王女は退屈なのか、側に立つ黒髪の騎士ベインズと、何やら話し始めた。


「あら、ロメリア様ではありませんか」

 私が天幕の入り口で中の様子を見ていると、甲高い声が天幕の中に響いた。声のした方を見ると長い金髪を縦に巻き、青いドレスを身に着けた女性が椅子から立ち上がった。

 やや吊り上がった眉と目を持つこの女性は、ホヴォス連邦のレーリア公女だ。その隣にいる銀髪に鎧姿の男性は、密林の蛇とも呼ばれるディモス将軍だ。確かに二つ名の通り、鋭い目つきをしている。


 二人の後ろには、赤毛に筋肉質の肉体を持つ女戦士マイスが護衛として立っていた。彼女は傭兵上がりらしいが、過去に魔王軍が誇る大将軍と一騎打ちを演じ、その片腕を斬り落としたほどの豪傑だ。


「もっと早く到着されるものと思って、お待ちしておりましたのよ」

 レーリア公女が私の下に歩み寄り、親しげに声をかける。だがその言葉の裏には、到着が遅いと非難が混じっていた。

 レーリア公女はホヴォス連邦にある五大公爵家の一つ、スコル公爵家の長女だ。ホヴォス連邦において王は世襲ではなく、五大公爵家の中から選ばれることとなっている。場合によっては、女王となり国を継ぐかもしれない女性だった。


「これはレーリア様、ごきげんよう」

 私は礼儀正しく挨拶をして、そして視線を前に向けた。

 来るのが遅いと言外に言われたが、軍議の時間にはまだ早い。それに盟主であるヒューリオン王国の代表はまだ天幕に入っておらず、フルグスク帝国の代表も来ていない。時間には十分間に合ったといえるだろう。

 私の謝罪がなかったことに、レーリア公女は眉を逆立たせたが、私は相手にしなかった。


「あ、あの。ロメリア様。ごきげんよう」

 レーリア公女が何かを言おうとした矢先に、ヘイレント王国のヘレン王女がこちらに歩み寄り、おずおずと頭を下げた。

「はい、ごきげんよう。ヘレン王女」

 私もヘレン王女に挨拶を返してから、円卓に着く各国の代表に目を向ける。

「ごきげんよう。ゼブル将軍、ガンブ将軍、ディモス将軍」

 私は三人の将軍に会釈をした。しかし返事はない。先ほどまで天幕の中には和気藹々とした雰囲気に包まれていた。しかし私の存在に気付いた途端、急に空気が変わってしまった。


 連合軍において、私は、いやライオネル王国は冷遇されていた。

 歴戦の将軍達からしてみれば、女の私が軍を率いているのが気に入らないのだろう。そして何より、二年前ザリアの乱で、アンリ王を失ってしまったことが響いている。

 魔王ゼルギスを倒した英雄を内乱で失った事件は、世界中で非難されており、我が国は世界各国の信頼を無くしていた。おかげで連合軍の会議や軍議では、私は相手にされないこともしばしばだ。だが気にしてもいられないので、堂々と振る舞うことにしている。

 各国の将軍達からは返事がなかったが、私は気にせずハメイル王国のゼファーを見た。


「ゼファー様もごきげんよう」

 私が笑みを浮かべて会釈をすると、ゼファーは顔を急速に赤らめる。

「あっ、その。こっ……」

 ゼファーは口籠った。まさか自分に声をかけられると思わなかったのだろう。だが返事を返してもらえないのは想定済みだ。私は気にせず円卓の前に置かれた椅子に座った。

 席に着いた私に、様々な視線が突き刺さる。


 レーリア公女は苛立たしげな視線を私に向け、ヘレン王女は周りの顔色を窺いながら私を見る。三人の将軍達はあからさまに不快げな視線を向ける。先ほど返事をしなかったゼファーは私に話しかけられたくないのか、肩を落として顔を地面に向けていた。

 針の筵のような状況だが、私は堂々と胸を張り、残りの代表が集まるのを待つことにした。


マグコミでの連載を記念して

明日も更新しまし

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― 新着の感想 ―
[一言] 今のとこのなんのためにこの作戦会議の場に王女とか女性がいるのか分からない。 ロメリアのように戦場に出るならわかるけど。 ここにいる女性はエリザベートとように補助として戦うならここにいても理解…
[一言] アンリ王が死んだのはロメリアのせいではないのになんか扱い酷いな
[一言] パワハラ男性陣の中でゼファーくんの反応だけ違うんですがw 気づいてー……いや無理か
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