第五十三話 アンリの密談
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エリザベートが子供達の前で笑った日の夜。一台の馬車が、王都の外へと向かって走っていった。人目を忍ぶように走る馬車は、都のはずれにある一軒の廃屋の前で停車した。
馬車の扉が開くと、外套を着た男が頭からフードをかぶりランタンを片手に降りてくる。男が周囲を見渡すが、人の気配はない。だが廃屋の前には、二台の馬車が停車していた。
フードの男は周囲を見回した後、廃屋の中へと入っていった。
ランタンの明かりを頼りに廃屋の中を進むと、奥の部屋から光が漏れていた。その光を目指して進むと、部屋には二人の男性が椅子に座っていた。二人は同じく外套を着てフードをかぶり顔を隠している。一人は背が小さく痩せ形で、もう一人は大きな体躯をしていることが外套の上からでも分かった。
「待たせたようだな」
最後にやってきた男が、先に来ていた二人に声を掛ける。
「いえ、私達も先程来たところです」
小柄な男が答えた。
「そうか。しかしよく集まってくれた。ファーマイン枢機卿長、そしてザリア将軍」
名前を呼ばれ、二人の男が立ち上がりフードを取る。そこには顔に皺が刻まれた僧侶と、巌のような武人の顔があった。
「いえいえ、貴方様のお呼び出しに応じない訳にはいきませんから、アンリ王陛下」
ファーマイン枢機卿長が恭しく頭を垂れる。最後にやってきた男がフードを外すと、金髪に青い瞳を持つアンリ王の顔があらわとなった。
「それで、我らをこのように呼び出し、一体なんの御用でしょうかな?」
ザリア将軍が低い声で尋ねる。
「呼んだ理由はただ一つ。ロメリアについてだ」
アンリは一人の女の名前を出した。
その名前にファーマイン枢機卿長とザリア将軍は目を細める。二人にとってもロメリアの存在は無視出来ぬものとなっていた。
教会の拝金主義を批判する声は日増しに大きくなり、ロメリアは反教会の旗頭となりつつあった。そしてガリオスを撃破したロメリア騎士団は、王国最強と謳われはじめ、これまで最強騎士団と呼ばれていた黒鷹騎士団を超えようとしていた。
「ロメリアの人気は日増しに高まり、その力は強まっている。このままでは王国が奴に乗っ取られる。王国を救うために、諸君らの力を借りたい」
アンリ王は椅子に座り、ファーマイン枢機卿長、ザリア将軍と膝を突き合わせる。
そして始まった密会の声は小さく。話の内容は夜の静寂に消えていった。
ちょっと今回は短いので、外伝も併せて投稿します