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【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第四章 セメド荒野編~魔王倒して軍隊組織して、もう三年が経った~
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第四十六話 疾走のレイ

いつも感想やブックマーク評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

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 魔王軍の予備兵力が動きだしたのを見て、同じく予備兵力として後方で待機していたレイヴァンは、敵を挟撃すべく戦場を大きく迂回していた。

 レイヴァンが駆る馬は早い。駿馬であること以上に、逸る気持ちが抑えられなかったからだ。


「おい、レイ。速いって」

「そうです、私達を置いていかないでください」

 後ろを見ると、同じく予備兵力に分配されたタースとセイが叫んでいた。確かに兵士達を置き去りにしている。だが待ってなどいられなかった。


 戦場ではアルビオン達がガリオスと激戦を繰り広げ、他のロメ隊も魔王軍と戦っていた。何より主であるロメリアが、ろくに兵士も連れずにライオネル王国の親衛隊の指揮を執っている。にもかかわらず、自分は後方で待機していたのだ。待つ時間はあまりにも長すぎた。


「タース、セイ。お前達が急げ! やっと出番が来たんだ」

 レイヴァンは速度を緩めず、後ろに向かって叫んだ。

 爆撃が終わり、魔王軍の予備兵力が投入された。これでようやく自分達の出番が来たのだから、待ってなどいられなかった。


 本当なら自分もアル達と同じく、ガリオスと戦いたかったのだ。

 だが主であるロメリアは、レイヴァンに予備兵力を与え、待機を命じた。

『今回の戦いですが、勝つためには主に三つの方法があります』

 戦いの前に、ロメリアはレイヴァン達に勝利の方法を説明した。


『一つ目は、ガリオスを討つこと。あの魔族を倒せれば、この戦いは勝利できるでしょう』

 ロメリアは指を一本立てた。

 ガリオスを倒すのならば、ロメ隊の全員をガリオスにぶつけるべきだった。しかし実際には歩兵部隊の中核をベンとブライが担い、その右をグラン、ゼゼ、ジニが、左をラグン、ボレル、ガット達が支えており、同じく予備兵力であった二百人の歩兵はグレンとハンスが率い、ガリオスの巨人兵と戦っている。


『ガリオスを倒すことが出来ればいいのですが、これは目指しません。何故なら必ず勝てる保証がないからです。ガリオスを倒すよりも、普通に戦争に勝つ方がずっと簡単と言えるでしょう。これが二つ目の方法です』

 ロメリアは二本目の指を立てた。


 兵士としてなんとも見くびられた言葉だが、数百人の親衛隊を蹴散らしたガリオスの力を思い返せば、必ず勝てるなどとは言えなかった。

 そして戦争に勝つ手段として、ロメリアはレイヴァン達を予備兵力として残し、魔王軍の予備兵力が動いた時、後方を襲撃して挟撃せよという命令を出していた。


「おい、レイ! 張り切るのはいーけど、本来の目的を忘れるなよ。ちゃんとやれよ、お前!」

 馬を走らせるレイヴァンの、後ろでタースが叫ぶ。

 普段いい加減なタースに、こう言われては立場がない。レイヴァンは馬の速度を落とし、タースとセイの横に並んだ。


「分かっている。ロメリア様の作戦通りに行こう。俺とタースがそれぞれ八十人、セイが四十人だ。特にセイ、そっちはきつい戦いとなると思うが頼んだ」

「はい、任せてください。レイ」

 セイが背筋を伸ばして頭を下げる。几帳面なセイのお辞儀は、貴族に仕える執事のようだ。


「よし、行くぞ!」

 レイヴァンが号令をかけ戦場を大きく迂回して、魔王軍の背後に出る。

 しかし戦場を大きく迂回した時、見えたのは巨人兵の大きな背中ではなく、盾を連ね、槍を構える戦列の姿だった。いつの間にかレイヴァン達に向けて陣形を整えている。


「おいおい、やっぱバレていたぜ」

 タースが苦笑いを浮かべた。

 迷いのない陣形変更は、こちらの作戦が筒抜けだったことを意味する。

「上から見ているんだから、そりゃ分かるだろうな」

 レイヴァンは空を見上げた。空は三百頭の翼竜が支配している。


 指揮官の能力には、戦場を俯瞰して捉える目が必要だと言われている。

 言葉にするのは簡単だが、実際に戦場を俯瞰するなど並大抵のことではない。だが実際に空から見ることが出来れば、これほど容易いことはないだろう。

 レイヴァン達の動きは筒抜け、迂回挟撃は敵に読まれており、すでに奇襲の効果は失われている。


「セイ、タース! 行くぞ!」

 作戦がばれていようと、レイヴァンは二人に声を掛け、巨人兵の戦列に突撃を仕掛ける。

 並の魔王軍ならば、たとえ作戦を読まれていたとしても、盾を突き破り粉砕する自信があった。しかしレイヴァンが放った槍は分厚い盾に弾かれた。


「堅いな」

 槍を弾かれたレイヴァンが唸る。巨人兵の持つ盾は通常の倍の厚みがあり、支える兵士も力強く、城壁のようにびくともしなかった。


「ダメだ、守りが堅い!」

 敵とぶつかり合ったセイが、馬を返す。

「ああ〜、ダメだこりゃ。こいつら、強すぎる〜」

 タースが情けない声を上げて、馬首を返し逃げ始める、レイヴァンもセイとタースに続き後ろへと撤退した。


 逃げるレイヴァン達の背中に、魔族の笑い声が突き刺さる。

 たった一度の攻撃で、背中を見せて逃げ出す自分達は、敵にも味方にも情けなく映るだろう。だがそれでいい。レイヴァンは逃げる振りをして、巨人兵の真後ろに向かって馬を走らせる。進む先には、千頭にも及ぶ翼竜の群れがあった。


「レイ! セイ! そろそろバレるぞ!」

「分かっている! 総員突撃! 翼竜を皆殺しにしろ!」

 タースの声を聞き、レイヴァンは槍を翼竜に向けた。

 主であるロメリアは、戦いが始まる前、この戦争に勝つ三つの方法を示した。

 その三つ目の方法こそが、翼竜を討つことだった。


『今回の戦い、勝利するのには、別にガリオスを討つことも、魔王軍を殲滅することも必要ありません。翼竜さえ倒してしまえばいいのです』

 ロメリアは三本目の指を立て、敵を倒す必要はないと言い放った。


『ここは我々の国であり、魔王軍は味方のいない敵地に取り残された少数の部隊なのです。私達が無理をしてガリオスを倒すことも、戦力が上回る敵と死闘を繰り広げる必要もありません。移動手段である翼竜を倒せばいいのです。それに翼竜を放置すれば、魔王軍はいくらでも国境を越えられることになります。翼竜の殲滅はこの戦で勝利することより大きい』

 ロメリアは翼竜を討つ重要性を説き、大事な仕事をレイヴァンに任せた。しかし戦略目標として、翼竜を狙っていることに気付かれてはいけない。そのために迂回挟撃を装い、逃げたフリをして翼竜に向かって逃走していたのだ。


レイは翼竜に向けて疾走した。



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