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【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第四章 セメド荒野編~魔王倒して軍隊組織して、もう三年が経った~
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第四十三話 バーンズの想い

いつも感想やブックマーク評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

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「おい、なんだ! これはどういうことだ?」

 防衛線を構築している兵士が叫ぶ。魔王軍が攻勢を強めたのかと思ったが違った。バーンズが振り向くと、防衛線の前に敵がいなかった。あれほど果敢に攻めていた魔王軍が、敵を前に大きく後退し、盾を並べて守りを固めていた。

 防衛線を守る兵士達は、魔王軍の不可解な後退に戸惑っている。


「皆さん、上に注意してください! 上から攻撃が来ます! 伏せて!」

 ロメリアの命令に、兵士達は戸惑い、命令を実行出来なかった。敵を前に伏せるなどという命令を聞いたことがなかったからだ。


 どうしていいか分からず、兵士達が互いに顔を見合わせていると、上空で動きがあった。

 悠々と旋回していた翼竜の一頭が、突如身を翻し急降下してきたのだ。

 さらに周りにいた翼竜も続き、まるで獲物を見つけた海鳥のように、舞い降りてくる。


 まさか翼竜が攻撃を仕掛けてくるのか!

 視界を覆い尽くす翼竜の群れに、バーンズは戦慄する。

 しかし違った。食われるのかと思ったが、急降下して来た翼竜は遥か上空で反転して急上昇していく。だが翼竜の背で手綱を握る魔族が、反転した瞬間に何かを投擲した。


「爆裂魔石です! 伏せて!」

 ロメリアの声を聞いても、バーンズは呆然とその場に立ち尽くしていた。翼竜から投擲された黒っぽい塊が、バーンズ目掛けて落ちてくる。

「バーンズ副隊長!」

 耳元で声が響いたかと思うと、ロメリアの顔と亜麻色の髪が目の前にあり、手袋に包まれた手が伸びてバーンズを押し倒す。直後、雷鳴の如き爆発音が響き、衝撃が体中を打った。


 衝撃にバーンズは意識を失いかけ、微睡みのような浮遊感に包まれる。

 夢と現の間を行き交うバーンズの鼻孔を、甘い香りがくすぐる。視線を下げると、顔には柔らかな亜麻色の髪がかかり、胸にはロメリアの小さな顔があった。


 一瞬で覚醒した。

 バーンズは即座に上体を起こし、胸に倒れるロメリアを見る。


「おい、大丈夫か!」

 バーンズはロメリアの体を抱き起こし、怪我の有無を確かめる。目立った怪我はないが、意識を失っていた。周囲にはシュロー達三人も倒れていた。爆撃にやられたのだ。


「おい、無事か!」

 バーンズはロメリアの頬を軽く叩く。するとロメリアは目を見開いた。

「はっ! 敵は? 被害状況は!」

 目を覚ますなり、ロメリアは体を起こし周囲を確かめる。


「立つんじゃない、伏せていろ、兵士の指揮は俺がする。お前達! 無事かぁ!」

 指揮を執ろうとするロメリアに変わり、バーンズが立ち上がって被害状況を確認する。

 上空からの爆裂魔石の攻撃に、兵士達は皆が傷付き倒れていた。爆裂魔石の破片が体に突き刺さり血を流す者、衝撃に意識を失う者、運悪く直撃して頭が吹き飛んだ者もいる。


「起きろ! 盾を持て! 仲間を助けるんだ!」

 バーンズは倒れた兵士を立ち上がらせ、自身も盾を拾う。

「頭上注意! 第二波が来ます!」

 指揮を執るバーンズの後ろで、ロメリアが上空を指差し叫ぶ。空では翼竜達がまた急降下を開始した。


「第二波が来たぞ、お前たち伏せろ! ロメリア! お前も隠れろ!」

 バーンズは、指揮を執ろうとするロメリアに向かって叫ぶ。

 ロメリアはバーンズの指示に従わなかったが、シュロー達が引っ張り、盾と体で守る。

「そこ! 早く伏せろ、頭を上げるな! 来るぞ! 三、二、一!」

 バーンズはギリギリまで粘り、爆裂魔石が投下されるのを見て、爆撃が来る秒読みをする。そして爆発が起きる直前に身を伏せ、頭を盾で守った。


 幾つもの爆発が起き、衝撃波が体を嬲る。

 爆発と衝撃に兵士達が怯える中、バーンズは先程嗅いだ甘い香りを思い出した。

 香水なのか化粧なのか、甘い匂いがする。やはり女なのだと思う。そして顔にかかった髪の感触と、抱き心地を思い出す。鎧の上からなのが残念だったが、それでももう少し抱きしめて感触を楽しめばよかった。


 この戦いが終わったら求婚してみようか? 自分が求婚したら、あの伯爵令嬢はどんな顔をするかな?

 ロメリアの驚く顔を想像して笑っていると、頭上で起きていた爆発がやんだ。バーンズは妄想をやめて起き上がった。


「お前達、無事かぁ! ロメリア!」

 白煙と土煙が立ち昇る中、バーンズは兵士達に声を掛け、ロメリアの安否を確かめる。

 二度目の爆撃を受け、戦場では兵士達があちこちで倒れていた。

 兵士達の間には肉片が転がり、呻き声がこだまする地獄絵図となっている。だが、一度目の時よりは被害は減っている。地面に伏せたことが功を奏した。ロメリアもシュロー達に守られて無事のようだ。


「起き上がれ、怪我人を助けるんだ。盾を拾え! すぐに第三波が来るぞ!」

 バーンズは一時的に後退した魔王軍を見る。

 魔王軍がバーンズ達と距離をとったのは、爆撃を避けるためだ。爆撃が終われば、連中は突撃してくる。魔王軍が動いていないということは、まだ爆撃が終わっていない。

 バーンズは倒れた兵士を助け起こす。ロメリアを守っていたシュロー達も、傷付いた兵士を助けて回った。


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― 新着の感想 ―
[一言] 竜兵が出てきたとなると剣虎兵でもいないととか思ってしまいますな 平面の戦場に三次元持ち出されるといやーキツイ
[気になる点] バーンズ副隊長「この戦いが終わったら求婚してみようか?」 読者(私)「なんだとぉ!?」 [一言] ロメリア二十騎士が黙っちゃいない気がします。 あとバーンズ副隊長、それはフラグではな…
[一言] ぜひ、求婚してみて欲しい。 キョトンとするところ、見てみたい。 そして、昔の仲間が背中を押すところまで。 想ってるひとは多いけど、高嶺の花扱いなので。 ただし、この闘いから生存して帰るこ…
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