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【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第四章 セメド荒野編~魔王倒して軍隊組織して、もう三年が経った~
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第四十二話 鏑矢の謎

いつも感想やブックマーク評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

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 親衛隊の旗の前で戦うバーンズは、ロメリアの命令に従い防衛線を前進させていた。

「おら! 前だ。前へ進め! お嬢ちゃんが前進をお望みだ。気合入れろ!」

 バーンズは兵士達の尻を叩く。


 戦場で女に指図されるという屈辱を受けながら、バーンズは笑っていた。ロメリア伯爵令嬢は、それだけ面白い女だった。

 女だてらに戦場にいるだけあって、将軍顔負けの指揮能力を発揮する。視界も広く、味方や敵の動きをよく見ている。それに声がよく通る。細くちっこい体のくせに、どこから出しているのか、聞いていて身が引き締まる声だった。


 だが一番気に入っているのは、その度胸だ。

 先程も魔王軍の軍勢が迫り、あわや旗が倒されそうになったが、旗の前に立つロメリアは一歩も後ろに下がることがなかった。

 もしあの時ロメリアが後ろに下がっていれば、おそらくバーンズ達は前線を支えることが出来なかっただろう。限界を超えろと命じた指揮官が兵士達の奮戦を信じ、逃げなかったからこそ、誰もが自分の限界を超えるような力を発揮出来たのだ。


「前へ進め。押し返せ!」

 バーンズは、自身も剣を振りながら防衛線を押し上げるが、魔王軍も押し返そうと、圧力を強めてくる。

「お前ら! 支えろ。下がるんじゃないぞ! 押せ! 押せ!」

 バーンズは押し寄せる敵を前に、兵士達を叱咤する。

 だが言わなくても、兵士達は下がらないだろう。兵士達の目は光り輝き、闘志と決意に満ちている。バーンズと同じく、ロメリアに影響されているのだ。


 押し寄せる魔王軍に、バーンズ達は頑強に抵抗して、押し返す。戦場に立つ親衛隊の旗の下に、散り散りとなった兵士達が集い始め、防衛線はさらに強固なものとなる。

 バーンズは魔王軍の攻勢を押し返しながら、戦場を見る。

 戦場では馬に乗ったロメリアが、騎兵を引き連れて駆け回っている。その後ろをセルゲイ達が必死になって追いかけていた。


 ここでもロメリアの指揮ぶりは健在で、的確に魔王軍の弱い場所を突き、単独で暴れている巨人兵を討ち取っていく。

 おかげで防衛線も楽になり、集結した兵士の数も百五十人を超えた。セルゲイ達の騎兵部隊も六十人程に数を倍増させている。

 まだ敵の方が優勢だが、魔王軍にはまとまった動きがない。陣形さえ組めれば、数が少なくても戦える。


「よし、お前ら! 陣形を整えろ! そこ! 隙間を作るな!」

 バーンズは叱咤し、強固な防衛線の構築に入る。

 兵士は集まったし、何より士気が高い。鍛え上げられた親衛隊は、いつも以上に動きがいい。急造の防衛線は、城壁の様に強固なものとなっていく。


「バーンズ副隊長!」

 陣形を組み終えると、凛とした声が響く。見ればロメリアがシュロー、ジニ、メリルの三人だけを供にして戻ってきていた。

 一瞬セルゲイ達がやられたのかと思ったが、戦場ではセルゲイが騎兵を率い、敵を蹴散らしているのが見えた。


「どうしたぁ、何かあったかぁ!」

 バーンズは怒鳴って返事をした。

 相手は貴族だ、自分でもこの態度はないと思うのだが、今更変えられない。それにそんなことを気にしている余裕もない。ロメリアが戻ってきたということは、凶報の知らせでもある。これから敵の攻撃が激しくなるに間違いない。


「ついに敵の予備兵力が動くのか!」

 バーンズは戦場の奥を見た。魔王軍最後の予備兵力である巨人兵百体は、今のところ動く気配を見せていない。だがロメリアが戻ってきたということは、あの連中が動くのだろうとバーンズは思った。


「いえ、違います。上からです!」

「上? 上からだと?」

 ロメリアは馬から降り、細い顎を上げて上空を仰ぎ見る。バーンズもつられて見ると、空では三百頭の翼竜が、ゆっくりと旋回していた。


 二人して空を見上げていると、翼竜の背から鋭い音と共に、鏑矢が流星のように落ちてきた。

 鏑矢の音にロメリアの周囲にいたシュロー達が反応し、空に向かって盾を掲げる。だが鏑矢はロメリアに当たるどころか、遥か後方の大地に突き刺さった。


 鏑矢は山間などの視界が悪い場所で、味方同士の情報伝達に用いることが多い。先ほどもガリオスが突撃してくる前に、翼竜から鏑矢が放たれた。あれは戦術的な合図だったのだ。


 バーンズはすぐさま、王妃様と戦うガリオスを見た。

 またあの化け物が突撃してくるのかと思ったが、ガリオスは王妃様達と激しく戦っている。バーンズ達を全く注意していなかった。

 ひとまず安心だが、ならば先程の鏑矢は何の合図なのか。


 バーンズがロメリアを見るとその表情は硬く、決意と共に覚悟が顔に浮かんでいた。

 何が起きるのかバーンズには分からない。しかし何かが起きることだけは分かった。


ロメリアないしょばなし


バーンズの名前の由来

某ハンバーガーチェーン店で執筆していた時、ハンバーガーのパン(バンズ)が目に入ったので。

セルゲイの名前の由来

ドラクエ5に出て来たモンスター、セルゲイナスから


最近ギャグに走りすぎていたので修正、期待していた方はごめんなさい


次回更新は十二月六日の零時を予定しています

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― 新着の感想 ―
[一言] バーンズさん、名付けの経緯まで微妙に不憫で草
2023/07/17 15:45 退会済み
管理
[気になる点] もしあの頭のいい小さいのが頭上に居るのだとしたら厄介なんてレベルじゃないな [一言] バーンズさんは恩寵に酔っておられてない? FE式だと周囲9マスが有効範囲な気がする恩寵はリアルだ…
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