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【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第四章 セメド荒野編~魔王倒して軍隊組織して、もう三年が経った~
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第三十八話 竜に挑みし六人

いつも感想やブックマーク評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

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 エリザベートがロメリアを見送った後、前を見ると、そこには山脈の如き巨体を誇るガリオスが、右肩に棍棒を担ぎ待っていた。


「そろそろ始めて良いか?」

「あら、待ってくれてたの~ 顔に似合わず紳士的ね~」

「強い奴の乱入は大歓迎だ」

 エカテリーナが妖艶な笑みを見せると、ガリオスもまた子供のように笑った。


「呂姫、エカテリーナ。気をつけて。その魔族は魔王ゼルギスの弟です」

「へぇ、ゼルギスの……」

 エリザベートが教えると、呂姫が目を細める。


「ん? なんだお、お前兄ちゃんのこと知ってるのか?」

「知ってるも何も、倒した一人なんだけど?」

「へぇ、そりゃあ楽しめそうだ」

 ガリオスが笑うが、対する呂姫も鈴を転がすような声で笑った。


「強がりを言うわね、そんな手でどうやって楽しむというの? 仇討ちも出来ないわよ」

 呂姫はガリオスの切断された左手を見た。これにはエリザベートも勝利を確信する。

 不意打ちの奇襲とはいえ、左手を取ったことは大きい。先程『守護』の壁を打ち破った一撃は本当に凄かったが、もうあれが使えないのであれば、戦力は半減したと同じだ。


「仇討ちをするつもりはねーよ。負けて死んだ奴が悪い。でも、手を斬られたのは久しぶりだ」

 ガリオスが切断された左手首を掲げ、断面を見せながら力を込める。

 すると傷口からの出血が止まり、桃色の肉が膨れ上がる。そして肉が破裂したかと思うと、傷口からは勢いよく肉が飛び出し、手の形となった。


「ん、動く動く」

 ガリオスは新たに生えた左手を開いては閉じ、感触を確かめている。

 肌を覆う鱗までは再生しておらず、血管や筋肉がむき出しの状態だ。だが動きには問題ないらしく、ガリオスは再生したばかりの手で棍棒を軽々と操る。


「うわ~ 気持ち悪い~」

 エカテリーナが嫌悪に顔を歪める。

 エリザベートもこれには驚いた。魔王討伐の旅で、強力な魔族を何体も目にしたが、失った手足を生やすような奴は一体もいなかった。


「化け物め。でも蜥蜴のように手足は生やせても、頭までは再生しないでしょ」

 呂姫がガリオス相手に、一歩も引かず啖呵を切る。

「ああ、それは試したことはないな。お前らが俺の首を落とせたら、首が生えてくるか試してみるよ」

 ガリオスも豪放磊落に笑う。


「んじゃ、がんばって首落としてくれよな」

 吠えるように声を上げ、ガリオスが大棍棒を振りかざした。

 呂姫が幅広の刀を構えたが、その前にアルビオンとオットー、そしてカイルが立ちはだかる。

「ちょっと、ロメリアの部下か知らないけど、邪魔しないでよ」

 呂姫がアルビオン達を睨んだが、その言葉を無視して。カイルが剣を片手にガリオスに単身突撃した。


「ん? いきなりちっこいのが来たな」

 ガリオスが相手にするのも面倒だと棍棒を払った。

 唸りを上げる棍棒が、小兵のカイルを薙ぎ払ったかに見えた。だがカイルは地面に顔がつきそうなほどに身をかがめ、巨大な棍棒の下を潜る。そしてガリオスの股の間を通り抜け、すり抜けざまにガリオスの太腿を剣で切り裂いた。


「うぉ、潜った?」

 ガリオスは切られたことよりも、棍棒を潜り、股の間を通り抜けられたことに驚愕していた。

 見ていたエリザベートも、当たれば必死の一撃を、臆することなく掻い潜ったカイルの胆力に舌を巻く。

 驚くガリオスの正面に、足音が迫る。戦槌を構えたオットーが雄牛の如く突進していた。


「俺と力比べをしようってのか? いい度胸だ!」

 ガリオスは喜色満面で、右手で握った棍棒を振り下ろす。

 オットーの戦槌とガリオスの棍棒が激突し、特大の火花が生まれる。

 ロメリア二十騎士に数えられるオットーは、素晴らしい体格の持ち主である。だが相手は地形すら変えるガリオスである。正面から挑むのはあまりにも無謀だった。


 エリザベートは棍棒に叩き潰されるオットーの姿を想像した。だがオットーが振るった戦槌はガリオスの棍棒を弾き返し、その巨体を一歩後退させた。

 オットーは両手であり、ガリオスは片手だった。全力のガリオスに勝ったとは言えない。だがそれでも、人間がガリオスを後退させた瞬間と言えた。


「おおっ、やるなぁ!」

 自分が力比べで負けたというのに、ガリオスは笑っていた。

「なら、もう一丁受けてみろ」

 ガリオスが今度は両手で棍棒を振りかぶる。エリザベートの守護の壁を打ち破り、地形すら一変させたあの一撃だ。あれを放たせてはいけない。


「エカ、魔法を!」

 エリザベートはエカテリーナに援護の魔法を指示しつつ、自身は守護の壁を張り、オットーを守ろうとする。

 だがその時、オットーの横から炎のように赤い鎧を着たアルビオンが飛び出す。

 アルビオンが槍を向けると、槍からは猛火が吹き出し、ガリオスを包み込む。


「しゃらくせぇ」

 炎に包まれたガリオスが、棍棒で炎を薙ぎ払った。炎の影からアルビオンが槍を繰り出す。

 アルビオンの突きがガリオスの右腕に突き刺さる。

 不意打ちで腕に一槍くれただけだというのに、アルビオンが笑う。次の瞬間、ガリオスの右腕の傷から炎が噴き出る。噂に聞く必殺の魔槍『火尖槍』だ。


「おおっ!」

 ガリオスが傷口から噴き出る炎に驚くも、左手で傷口から噴き出る炎を、まるで蚊でも潰すように叩いた。それだけで、傷口から噴き出る炎が消えて鎮火する。


 必殺の魔槍が蚊を潰すように防がれてしまい、アルビオンが顔を歪める。だが素早い身のこなしを誇るカイルに、ガリオスに匹敵する力を持つオットー、そして魔法と槍を同時に繰り出すアルビオン。この三人に加え、呂姫とエカテリーナ、そして自分がいれば、もしかしたらガリオスを倒せるかもしれないとエリザベートは思った。


 エリザベートはガリオスから一瞬目を離し、戦場全体を見た。

 すでに中央は半壊し、陣形を保てていない。右翼も魔王軍に侵食され乱戦になりつつある。左翼のロメリア騎士団は頑張っているが、こちらも劣勢を強いられている。


 このままではたとえガリオスを倒せたとしても、戦争そのものは敗北する。そうなればいくらエカテリーナや呂姫が強くとも、数には勝てない。軍を立て直そうにも、兵士を指揮するギュネス将軍が倒れ、エリザベート自身もここを動けなかった。


 ロメリアだ。すべてはロメリアにかかっていた。

 この戦場の趨勢は、戦う力のない一人の女に委ねられた。


ロメリアないしょばなし

ガリオス最近の悩み

ガリオス「なぁ、首を斬られて再生した場合、これって首から体が生えてくるのか? それとも体から首が生えてくるのか?」

ギャミ「もしかしたら両方かもしれませんな」

ガリオス「俺が二体もいたら便利だな」

ギャミ「確かに戦力は倍ですが。食費も倍増。周囲に降りかかる迷惑は、そのさらに倍となるので、面倒見切れないからやめてください」

ガリオス「……」


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 127話でアルとガリオスが一戦交えていますよね? その時『火尖鎗』が通じていなかったのに、今回は通じると思ったのは何故?(成長し、今度は効くと思った?) ガリオスは一度技を受けたことが…
[良い点] ガリオスとギャミは仲が良くてほっこりする [一言] 戦えない一人の女と言うが指揮官先頭なんて事は勇者がやってれば良いのでホントに戦局を判断できる指揮官は後ろに居てください
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