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【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第四章 セメド荒野編~魔王倒して軍隊組織して、もう三年が経った~
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第三十七話 思わぬ再会

いつも感想やブックマーク評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

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 ガリオスの大きい棍棒がエリザベートを叩き潰そうとしたその瞬間。突如光の玉が飛来し、ガリオスの顔に着弾して爆発した。大気を震わせる爆発に、ガリオスが振り下ろした棍棒の軌道がそれて空を切る。


「おおっ? なんだぁ」

 顔面で爆発が起きたというのに、ガリオスはただ驚きの声を上げただけだった。そして顔から煙を上げながら、光球が飛来した方向を見た。


 エリザベートもつられて見ると、土煙の奥に一人の長身の女性の姿が見えた。

 黒い三角帽子をかぶった女性は、同じく黒のローブドレスを身に着け、長い杖を掲げていた。顔は帽子に隠れて見えなかったものの、長い髪に豊かな胸、引き締まった腰。そして帽子の下からは赤い唇が覗いていた。


「なんだ、お前?」

 ガリオスが突如現れた女性に棍棒を向ける。

 女性はガリオスに返事せず、杖を向ける。すると杖の先端に魔法陣が生まれ、一条の電撃が放たれる。

 ガリオスは後ろに飛んで電撃を避けた。だが後ろに下がったガリオスの顔に影がさす。

 自分に降り注いだ影にガリオスが気付き、身を翻して棍棒を掲げる。見上げれば宙を舞うように跳躍した一人の女性が、ガリオス目掛けて幅広の刀を振りかざしていた。


 ガリオスが棍棒を掲げて奇襲を防ごうとするが、放たれた刃はガリオスの棍棒を掻い潜り、左手首を切断した。

 鮮血とガリオスの手首が戦場に舞う。


「おおっ、やるな!」

 左手を斬り落とされたガリオスは、低く唸った後、右手で棍棒を薙ぎ払う。

 女性は蝶のように後ろに宙返りをして、棍棒を華麗に避けた。

 見事な体術を見せたその女性は、美しい黒髪をしていた。新緑を思わせる鮮やかな服は、東方の騎馬民族が使うとされる民族衣装。手に握る幅広の刃も、同じく東方に伝わる刀だった。


「貴方達は!」

 エリザベートは、突如現れた二人の女性に見覚えがあった。

「エカテリーナ! それに呂姫!」

 エリザベートが黒いドレスの女性と、緑の服の女性を見て名前を呼ぶ。

 二人は間違いなく三年前、アンリ王子と共に魔王討伐の旅をした仲間だった。


「二人共どうして?」

「どうして? 呼んだのはそっちでしょ?」

 エリザベートの問いに、呂姫が呆れた声を上げる。

「そうそう、助けて〜って手紙くれたじゃない」

 エカテリーナが笑う。


 確かに不安を覚え、助けを求めるべく二人には手紙を出した。しかし来てくれるとは思わなかった。二人とは旅をした仲ではあるが、ロメリアと同様に円満に別れたとは言い難かったからだ。

 三年前、ロメリアがアンリ王子から正式に婚約破棄された時、三人は表向き仲良くはしていたが、その裏ではアンリ王の心を射止めるため、熾烈な争いを繰り広げていた。


 エカテリーナと呂姫もアンリ王子を愛していた。だがエリザベートは決して譲れず、二人に身を引くように頼んだ。いや、それだけでない。王子が自分を選ぶよう、教会の勢力を駆使して圧力をかけ、王子を自分のものにしたのだった。

 恋に敗れた二人が、エリザベートのことを恨んでいてもおかしくはない。


「エカテリーナ? 呂姫?」

 エリザベートがなぜ来てくれたのか尋ねようとした時、そこにロメリアが六人の兵士を引き連れてやってきた。ロメリアも二人の顔を見て驚いている。


「ヤッホ〜、ロメリア久しぶり~」

 エカテリーナが間延びした声で、ロメリアに向かって手を振る。だがロメリアはエカテリーナの軽い挨拶に、返事を返せないでいた。


「いろんな意味で、感動の再会、とはいかないわね」

 呂姫の鋭い瞳が、片腕を失ったガリオスを見る。腕から血を流しているとはいえ、ガリオスの闘志はいささかも衰えてはいない。


「まぁ、積もる話と恨み言は後にして、今は目の前の敵よ。王子抜きだけどいつもの陣形で行く!」

 呂姫が過去を一時棚上げし、よく通る声で指示を出す。旅の最中、戦いの場ではアンリ王子と呂姫の指示に従うことになっていた。


「私が前。エリザベートは守護を! エカテリーナは魔法の準備。間違えて私に当てないでよ」

「分かった」

「そっちこそ~ 腕は落ちてないでしょうね」

 呂姫の指示にエリザベートは立ち上がり、エカテリーナが不敵に笑う。


「ロメリア、あんたは」

「分かってる」

 呂姫が見ると、ロメリアはすでに動きだしていた。


「アル、オットー、カイル。貴方達は呂姫の指示に従い、ここでガリオスを防いでください」

 ロメリアが引き連れてきた兵士に命じる。

 すると赤い鎧を着たアルビオンを始め、巨大な戦槌を持つ巨漢の兵士オットーと、体中に短剣を括り付けた兵士カイルが、ガリオスの前に立ちはだかる。

 俗にロメリア二十騎士に数えられる、アンリ王も認める騎士達だ。


「シュロー、メリル、レット。貴方達はギュネス将軍を運んで」

 さらにロメリアは、残る三人にギュネス将軍を運ぶように命じる。

「呂姫、ここは任せました。アル達三人をここに残します。なんとしてでも、その魔族を押さえてください」

 ロメリアはそれだけ言い残すと、ギュネス将軍を抱えた三人の兵士達と後ろへと下がっていく。


 思い切りが良く、状況を理解した行動なのだが、なんとも可愛くなかった。

 そういうところだぞ。と、エリザベートは内心思うが口には出さないでおく。呂姫とエカテリーナを見ると、彼女達も呆れて笑っていた。


 息を吐いた後、エリザベートは表情を引き締める。そして呂姫達と共に前を見た。

 そこには棍棒を抱えたガリオスが、竜の笑みを見せていた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 負けるなガリオス! 戦えガリオス! ガリオスッ! ガリオスッ!
[良い点] 第一話から一気に読んでしまいました、面白いです [一言] 「そういうところだぞ」 なんだかツボってしまいました
[良い点] ハーレムパーティー(王を除く) [気になる点] ロメリアがカワイク無いのはいつもの事としてアンリ居ない方が纏まりが良いな [一言] 3人が1人の男に執着してるのに、1人だけ婚約者の地位にい…
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