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【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第四章 セメド荒野編~魔王倒して軍隊組織して、もう三年が経った~
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第三十二話 悪鬼現る

いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

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「エリザベート。ありがとう」

 負傷した兵士達を治療すると、ロメリアが礼を言った。

「その素直さを、さっきも見せなさい」

「でも、たいして可愛くもない私の顔と、兵士達の手足とでは比べものにならないですよ」

 ロメリアのこの言葉には、側にいたアルビオンやレイヴァン、そして手足を治療されたメリル達が苦笑いを浮かべる。


「この娘は本当に……いや、もういい。それより、貴方の兵士も傷付いているでしょう。癒し手をそちらに派遣しますから、負傷兵をすぐに治療しなさい」

 エリザベートは親衛隊に、ロメリア騎士団と協力するように指示を出す。

「変わられましたね」

 治療を買って出たエリザベートに、ロメリアが感慨深い声で答える。確かに三年前の自分なら、こんな事はしなかっただろう。


「別に、この戦いに勝つために必要だからです」

「そうですね、確かに目の前の敵は問題です。エリザベート。あの一番大きな翼竜を見てください。その背中に旗があるのが見えますか?」

 ロメリアが空を舞う翼竜の中でも、一際巨大な個体を指差した。他の翼竜と比べても倍近く大きい。その背には黒い旗が立てられ、赤いほうき星が輝いている。


「あのほうき星の旗印。あそこにいるのはおそらくガリオスです」

「ガリオス?……まさか、あのガリオスですか?」

 エリザベートは尋ね返した。


「そのガリオスです。魔王の実弟にして、ダカン平原でアンリ王子を打ち破った」

 ロメリアが頷いたのを見て、エリザベートは戦慄した。


 ガリオス。その名前は今や大陸中に響き渡っていた。

 三年前、アンリ王子を一騎打ちで打ち破った事を皮切りに、ガリオスはその巨大な足で大国のすべてを踏み荒らした。暴風雨の如き脅威が、また王国にやって来たのだ。

 セメド荒野での戦いは、かつてない激戦となるだろう。


「……実は王都を立つ前に、エカテリーナと呂姫に手紙を出しておいたの」

 エリザベートは、共に魔王を倒した仲間の名前を出した。

 ガリオスと戦うことを予想していたわけではなかったが、出陣の前日、エリザベートは言い知れぬ不安を感じ、エカテリーナと呂姫に助けを求めたのだ。


「手紙を受け取ってすぐに来てくれていれば、もう合流出来ていてもおかしくはないのだけれど、不在だったのか、それとも助けに来るつもりがなかったのか……」

 エリザベートは姿を見せない仲間のことを思い、ため息をついた。

「どちらにしても、今ある戦力で戦うしかありません」

 ロメリアが現実を示す。確かに、ないものをねだっても仕方ない。


「エリザベート王妃、移動します。ご準備を」

 散らばった騎兵部隊の集結を終えたギュネス将軍が、エリザベートに移動をうながす。

「分かりました。ではロメリア、また後で」

 エリザベートはロメリアと別れて、ギュネス将軍と共に森の前へと移動する。


「おお、エリザベート王妃、ギュネス将軍。お会い出来てよかった」

 エリザベート達が森の前へと移動すると、重装歩兵千人を率いるレドレ千人隊長が駆け寄ってきた。側にはバーンズ副隊長もいた。


「レドレ、よく火の中を突破したな」

「はい、ロメリア騎士団が山火事を踏破すると言うので、我々も負けてはいられませんでした。しかしスローン、ルイボ、フレドの部隊は敵と交戦しており、到着にはもう半日程かかります」

 ギュネス将軍がレドレ千人隊長を讃えると、千人隊長は胸を張って報告した。


「火事を越えてきてすぐで悪いが、見ての通り魔王軍が空から来た。すぐに戦闘準備だ。陣形を整えるぞ」

 ギュネス将軍はこの場所を本陣として即席の軍議を開く。


 軍議にはエリザベートも立ち会い、その周りにギュネス将軍を始め騎兵部隊を率いるコスター千人隊長とセルゲイ副隊長、そして先程合流した重装歩兵部隊を率いるレドレ千人隊長とバーンズ副隊長が集まる。


 その周囲を本陣付き護衛として十人の精鋭が守りを固め、突撃や後退を知らせる七人の喇叭兵。旗を支える旗持ちが二人待機している。さらに癒し手が二十人いるが、こちらは現在ロメリア達の部隊の治療に当たらせている。簡易の治療が終わり次第、戻ってくるはずだ。


「まずここに本陣を置く。そして陣立てだが……」

「ギュネス将軍、待ってください。先程判明したのですが、今回の敵はガリオスです」

 エリザベートは、ロメリアに教えてもらった情報を明かす。


「ガリオスですと!」

 敵の名前を聞き、ギュネス将軍達も顔をこわばらせる。

 親衛隊の中には、ダカン平原での激戦を経験した者も多い。魔王の実弟ガリオスの強さを知っているのだ。


「……ならば、相手に不足はありませんな! レドレ、お前は重装歩兵六百を率いて右翼を担当しろ。バーンズ、お前は重装歩兵四百を率いて中央を支えよ」

 ギュネス将軍が気を吐き、重装歩兵部隊千人に命令を下す。


「左翼はロメリア騎士団に担当してもらうよう、先程伝令を出した。あとは……」

 話しながら、ギュネス将軍は騎兵部隊を率いるコスター千人隊長と、セルゲイ副隊長を見る。

「セルゲイ、お前は騎兵四百を率いてバーンズと連携して中央を守れ。コスター、お前と六百の騎兵は予備兵力として待機だ。状況によっては右翼や左翼にも割り振るが、一番の目的は分かっているな」

 ギュネス将軍は、コスター千人隊長の目を見て確認する。


「はい、ガリオスを討つのですね」

「そうだ。ガリオスを討ち、大陸中にライオネル王国親衛隊の力を知らしめるのだ!」

 ギュネス将軍の号令に、隊長や副隊長が声を上げ、陣形の構築に向かう。


 エリザベートは視線を荒野に移すと、翼竜に乗る魔王軍が次々に降下を始めていた。

 巨大な翼を持つ竜が着陸し、赤銅色の鎧を着た千体の魔族が大地に降り立つ。その鎧は先程ロメリアと交戦していた魔族の者達と同じだった。おそらく同じ部隊なのだろう。ならば連中にとっては仲間の仇討ちとなる。戦意は高いとみるべきだろう。


 大地に降りた翼竜は飛び立たず、そのまま翼を休めていた。その前を赤銅色の鎧を着た魔王軍が陣形を組む。

 魔王軍が敷いた陣形は、典型的な横陣だった。千体のうち中央に四百体、左右にそれぞれ三百体と、変わったところは見られない。兵種は歩兵のみで騎兵無し弓無し。

 しかし空には、まだ三百頭程の翼竜が大きく弧を描き滑空していた。上空にいる三百頭の翼竜はどういうわけか、着陸する様子を見せない。


「ギュネス将軍、配置、完了いたしました」

 一人の兵士が本陣に駆け寄り、陣形の配置が終わったことを告げた。

 エリザベートは左翼を見ると、ロメリア騎士団も歩兵六百人で横陣を敷き、右寄りに歩兵二百人の予備兵力。左端に騎兵二百人を同じく予備兵力として待機させている。

 こちらも陣形はほぼ完了している。魔王軍が降下し終える前に攻撃を仕掛ければ、有利な形で戦争を始められる。


 親衛隊を率いるギュネス将軍も同じことを考えたらしく、セルゲイ副隊長を呼びつけ、敵の態勢が整う前に先制攻撃を仕掛けようと動きを見せる。

 だがその時、空で旋回していた翼竜のうち、一際巨大な翼竜が群れから離れたかと思うと、地面に激突せんばかりの勢いで急降下を開始した。そして地面すれすれで羽毛のない翼を翻し、急反転して上昇していく。その時、上昇する翼竜の背中から巨大な塊が落下した。


 それは遠目にも分かるほど、巨大な魔族の体だった。

 翼竜の背中から飛び降りた魔族は、大地に大きな音を立てて着地した。その地響きは遠く離れた本陣にも届き、エリザベートの胸を打った。


 大地に降り立った魔族は、その体を震わせたかと思うと、口を天に向けて開き咆哮を放った。

 空を斬り裂き、その場にいる兵士全ての胸を射貫く大音声。


 ガリオス。

 大陸にその名を轟かせる悪鬼が現れたのだ。


最強登場!

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― 新着の感想 ―
[一言] よくあるBOSS登場のモーションじゃん! 空から降ってきて身震いした後に天に咆哮! ガリオスかっけぇ( *°∀°* )
[良い点] ガリオスを知っているのに恐慌状態にならないなんて、ロメリアも親衛隊も長年戦い続けて力がついてるからなんですかね。続きが楽しみです。 [一言] 最近知って読み始めました。本も買いました。 更…
感想一覧
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