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【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第四章 セメド荒野編~魔王倒して軍隊組織して、もう三年が経った~
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第二十四話 ゲルドバの号令

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 魔王軍特務遊撃隊と名付けられた部隊を率いるゲルドバは、赤銅色の鎧を着た五百体の歩兵と共に森を進み、ロメリアとかいう女を追撃していた。


 戦術上の都合で騎兵がおらず、ゲルドバ自身も騎乗せず、兵士と共に歩んでいる。少し格好がつかない形だが、もう慣れたものであった。

 ゲルドバはダリアン監獄から解放されてから、ギャミの策に乗り、すでに五つの国を荒らし回っていた。そしてこのライオネル王国が六国目だった。


 ゲルドバの歩みは軽い。実のところゲルドバはギャミが考えた浸透戦術を気に入っていた。

 ギャミを認めるのは腹立たしいが、これまでの戦いでゲルドバは百近い村を焼き、万を超える人間を殺してきた。だが人間共の国にこれほどの被害を与えながらも、ゲルドバの兵士にはほとんど損害がない。大戦果と言える。


 徹底的に敵の戦力と戦わず、後方の無防備なところを襲撃する。やっていることは盗賊の類と変わらないのだが、効率の良い作戦ではあった。それに少数で大軍を手玉に取るというのも、ゲルドバの好みの大胆な作戦であり、悪い気はしなかった。しかも運よく、ギャミが賞金を懸けたロメリアとかいう女が見つかった。


 事前の取り決めでは、賞金首を見つけた場合は無理をして戦う必要はなく、ギャミが別の策を講じるということになっていた。

 だが相手は女である。別動隊を待つ必要もなかった。それにゲルドバが首を取れば、賞金は倍額という約束もある。賞金で兵士達を労いたかった。


「ゲルドバ将軍」

 歩みを早めるゲルドバに、偵察兵が駆け寄って来る。後方の索敵に出していた兵士だ。

「どうだ、やはり敵は来ていたか?」

「はい、将軍の推測通り、人間共は我々に対する包囲網を作り上げていました。ですが包囲網はまだ完成していません。あと一日は猶予があります」

 ゲルドバが尋ねると、予想した通りの答えを偵察兵が返した。


 ロメリアとかいう女が指揮する部隊は、騎兵三百人でゲルドバに挑み、現在は敗走していた。一見すると軍才がない行動に見えるが、ゲルドバは自分が追わされていることに気付いていた。このままでは前後を敵に挟まれ、分散して逃げれば網にかかり殲滅されてしまうだろう。

 それ故にゲルドバは行軍を急がせつつ、襲撃部隊を何度も送り込み、相手の歩みを遅らせた。これにより一日の時間を稼いだ。


 ゲルドバはギャミが寄越した地図を取り出し、再度周辺の地形を確認した。

 地図によると、このまま進めばやがて森がなくなり、岩山がある荒野に出るはずだった。

 恐らく人間共は、包囲網を作り上げてこの荒野で待ち構え、前後を挟撃する作戦だったのだろう。だが包囲網が完成する前に追い付くことが出来た。


 事前の作戦が崩壊した以上、人間共は荒野を馬で突っ切り距離を稼ぐだろう。だが荒れ地を抜ける道は隘路しかなく、馬での通行は不向き。

 歩兵で騎兵に追いつくのは骨が折れるが、隘路に追い込めれば追いつける。

 ゲルドバは勝利を目算して、兵士達と共に森を抜けた。

 だが森を抜けたゲルドバが見たのは、馬で荒野を駆け抜ける敵軍の背中ではなく、岩山を登る人間共の姿だった。


「ん? なんだ、あれは?」

 ゲルドバは人間共が登る山頂を見た。

 岩山の頂には石が積まれ、砦のようなものがあった。しかしギャミの地図には、ここに砦があるなど記されていない。

「ゲルドバ将軍!」

 先行して敵を追跡していた偵察兵が、ゲルドバの姿を見て駆け寄って来る。


「なんだ、あの砦は!」

「はい、どうやら古い遺跡のようです」

 ゲルドバが問うと、周囲を調べていた偵察兵がすぐに答えた。

「遺跡、遺跡か! なら駐屯する部隊などはいないのだな?」

「はい、人の気配は全くありません。かなり古いもののようです」

「なるほど、奴らはここで時間を稼ぐつもりか」

 偵察兵の報告を聞きながら、ゲルドバは頷く。


 隘路で戦う不利を避けたのだろうが、これはこちらにも好都合だった。

 ゲルドバの部隊は、槍兵と弓兵はいるが騎兵がいない。逃げる敵を追いかけるのは、機動力の点で不安があった。しかし砦に籠もるのであれば、その不利がなくなる。ゲルドバ達も攻城兵器を持っていないが、遺跡となった砦であれば、そんな物は必要ない。

 ゲルドバは岩山を仰ぎ、砦を眺めた。


 見たところ、砦の遺跡はなかなかに堅牢な造りをしていた。砦中央に大きな楼閣が建てられ、荒野の全体を見渡せるようになっていた。砦の周囲は北の後方が切り立った崖となっており、近寄ることすら難しい。西も傾斜がきつく登りにくい。門がある正面の南と、東の斜面は緩やかで登りやすそうに見えるがそれが罠だ。守備側は南と東に戦力を集中すればいい。

 何も考えずにこの砦に手を出せば、いたずらに損害が増えるだろう。籠城しながらも攻め手の戦力を削る。攻撃的な砦と言える。だがそれも、砦が万全の状態であればの話だ。


 廃棄されてどれほどの年月が経っているのか、正面を守る門の扉は朽ちてなくなり、西の壁は崩れている。東の壁も穴だらけだ。どこからでも攻めることが出来る。

 敵は崩れた石や柱を移動させ、扉のない門や穴の開いた壁を塞ごうと努力しているが、焼け石に水だろう。それに修繕を待ってやる理由もない。


「よし、お前ら、城攻めだ。女の首を取った者には褒美をやる。しっかり働け!」

 ゲルドバは部下を激励する。褒美と聞いて兵士達は笑い、牙を見せた。

 すぐさま城攻めの陣形が整えられ、兵士達が盾を連ね、弓兵が砦に狙いをつける。


 ゲルドバ自身は少数の兵士と共に、正面と東側がよく見える位置に移動する。ゲルドバ達が準備を整えると、砦の方でも動きがあった。壁の上に蒼い鎧を身に着けた兵士が弓兵を率いて砦の上を固めた。開け放たれた門の奥には、赤い鎧の兵士が槍を構えている。


 さらに砦の中央に建てられた楼閣には、花の紋章があしらわれた旗が立てられ、三人の兵士に守られた、白い鎧を着た女の姿が見える。賞金首であるロメリアとかいう指揮官だ。

 ゲルドバは楼閣の上に立つ女を見た。逆に女もこちらを見返す。どうやら向こうは楼閣で指揮を執るようだ。確かにあそこなら三方を見渡せるだろう。


「面白い、指揮でこのゲルドバに挑むつもりか!」

 牙を見せてゲルドバは笑った。

「いいだろう。お前ら、我らが軍団の威力をとくと見せてやれ!」

 ゲルドバは兵士達に命令を下した。


ロメリアないしょばなし

ギリエ峡谷の金山開発のアイデアは

ゴールドラッシュで一番儲けたのは、金を採掘しに来た人ではなく、金を採掘しに来た人にスコップを売った人という逸話から

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