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【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第四章 セメド荒野編~魔王倒して軍隊組織して、もう三年が経った~

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第二十三話 囮として逃げていたら敵に追い付かれた

いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

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 グラハム伯爵領の南にあるバラドの森を、鈴蘭の旗を掲げる騎馬の列が行軍していた。

 私は馬で移動しながら、小さくため息をついた。


「お疲れですか? ロメリア様」

 私の右隣で、空のように蒼い鎧を着たレイが馬に乗り、ため息をついた私に尋ねる。

「最近は襲撃続きで、夜もゆっくり休めていませんからねぇ、ロメ隊長も辛いでしょう」

 左隣からも声が聞こえ、炎のような赤い鎧を身に着けたアルの姿がそこにあった。


 確かに私は疲労していた。

 ようやく国内の魔王軍の掃討に成功し、同盟軍を解散してカシューに戻っている最中だった。やっとゆっくり出来ると思ったのに、突然グラハム伯爵領に魔王軍が突如出現した。私は一緒に帰還していたカシュー守備隊の面々と共に、魔王軍討伐に向かった。

 しかし現在は敵の反撃を受け、騎兵三百人を連れて追われる身だ。魔王軍の追撃を受けてすでに二日。食料も残り少なく、ゆっくり休むことも出来ない日々が続いている。

 だが私の疲労は、何も追撃してくる魔王軍の圧力だけではなかった。


「アル、レイ。少し近いのでは? 少し離れなさい」

 私は挟むように並走する、アルとレイを見た。二人の息遣いさえ聞こえるほどの至近距離で、圧迫感がものすごく、なんとも息苦しい。

「申し訳ありませんが、そのご命令を聞くわけにはいきませんね、ロメ隊長」

「いかにロメリア様の御命令とはいえ、これ以上離れるつもりはありません」

 アルもレイも私の命令を聞く気はないと、頑として譲らなかった。


「もう少し手元に兵力を残してくれれば、ここまで気を遣う必要はなかったんです」

「そうです。せめてロメ隊をもっとこちらに配置していれば」

 アルとレイが私の判断を批判する。

 確かに現在、私の手元の兵力は少なく、手足となるロメ隊もアルとレイの二人しかいなかった。かつてないほど無防備だが、これが正解なのだ。


「仕方ないでしょう。敵は大軍であれば逃げてしまうのです。長々と追いかけっこをやっていればいたずらに被害が増えるだけ。少数で誘い出し、追撃してくる魔王軍を討つしかありません。そのためには、別動隊を任せたグラン達の戦力を充実させないと」

 私は魔王軍の戦術に対する策を語った。


 敵と戦いわざと敗れて敗走し、魔王軍を誘い出す。そして後方に配置したグラン達と共に魔王軍を挟撃する。これが私の描いた作戦だ。確実な殲滅のためには、後方の別動隊にこそ戦力を集中させる必要があった。


「グラハム伯爵に手紙を出し、各都市を防衛する兵力を動員して、包囲網を敷くように頼んであるのでしょう? 我々が無理をする必要はないのでは?」

「確かにヴェッリ先生とクインズ先生をお父様の下に送り、包囲網を敷くように依頼しましたが、今回出現した魔王軍は、少数で敵地に潜入してきた精鋭です。一筋縄ではいきません」

 レイが無理をする必要はないと言うが、この敵は私達が相手をすべきだ。


「素晴らしい戦術眼で、このまま死んだらただの阿呆ですけど」

 アルが憎まれ口を叩く。確かに、偽の敗走をしていて本当に敗北したら、間抜けというほかない。

「私だって死ぬつもりは――」

 ありませんと言おうとした時、進む先の木の梢が僅かに動き、一体の魔王軍の兵士が現れる。木の上に潜んでいた兵士は、弓を引いて矢を放った。


 私に向かって放たれ矢は眼前にまで迫り、矢尻の形さえはっきりと見える。だがその矢は、目の前を走った銀光の一閃が薙ぎ払った。

 目だけを右に向けると、側にいたレイがいつの間にか抜刀していた。神速の刃は目で追うことも叶わず、遅れてやって来た風圧が私の前髪を撫でていく。


「敵! 襲!」

 左隣にいたアルは、魔王軍の襲撃を報せながら槍を投げる。投げられた槍は狙い違わず木の上で矢を放った魔族の腹を貫く。

 アルの言葉に兵士達が戦闘体勢に入る。ほぼ同時に、森の中に潜んでいた魔王軍の兵士が飛び出す。その数は四体。突如現れた魔族は、全員が私に刃を向ける。


「させるか!」

 アルが剣を振るって魔王軍の兵士を斬り捨て、レイが私を守り、決して敵を寄せ付けない。

 少数の敵兵士は即座に討ち取られ、味方に被害は出なかった。

「やっぱりこいつら、ロメ隊長を狙っていますね」

 アルが剣についた血を振り払いながら、倒した魔族を見下ろす。


「それも今日で三度目です。遅延行動にしては多すぎでは?」

 レイが襲撃の多さも言及した。

 確かに追撃されてから二日、頻繁に接触を受けている。行軍を遅らせるための襲撃はある程度計算に入れていたが、回数があまりにも多すぎる。これでは襲撃というより、私に対する刺客だった。どうやら魔王軍の中で私は、殺したいほど人気のようだ。


「私達を追いかける理由が増えたのですから、好都合と思いましょう」

 私の言葉にアルとレイは顔をしかめる。

「ロメリア様」

 後ろから声がして振り向くと、三人の兵士がやってくる。シュロー、レット、メリルの三人だった。


「シュロー、後方はどうですか?」

 私は偵察に出していたシュローに、後ろの様子を尋ねる。

「はい、魔王軍は距離を詰めてきています。このままでは今日の昼には追いつかれます」

 シュローの報告を聞き頷く。やはり魔王軍はどうあっても私を殺すつもりのようだ。

 だがこれは少し問題だった。事前の計画では、あと一日は敵を引きつける予定だった。別動隊のグラン達が追いつくにも時間が必要だし、お父様に頼んだ包囲網もまだ完成していない。


「先程また襲撃を受けたと聞きました。やはり我々も前方警戒に行きましょう」

 メリルが後方の見張りではなく、前を守ると提案する。

「いえ、貴方達は後ろをお願いします。敵に追いつかれるかどうかが重要ですので」

 私は首を横に振り、メリル達を前に出さないことに決めた。私の身を守ることが第一としたアルとレイも、配置換えには言及しなかった。


 私の命令にメリルは顔を歪め、右手で左腕を握った。メリルの右手の先に左腕はなく、短い袖が揺れていた。

 この三年の戦いの負傷だ。メリルは傷を負い、左腕を失う大怪我を負った。隣に立つシュローは左足がなく、義足を付けている。レットも両の手首を失い、義手を装着していた。

 本来なら年金を受け取り、後方で兵士の育成でもしてもらいたいのだが、シュロー達は戦場から離れることをよしとせず、義手義足を装着して、私に付いて来てくれている。


「ロメリア様。我々も戦えます。どうか兵士として仕事をください」

 両手が義手のレットが膝をついて懇願する。レットの義手には刃が仕込まれてあり、常に敵を倒す心構えは出来ていることは知っている。


「いいえ、ダメです」

 私はレットの懇願にも首を横に振った。

「しかし! 私達は!」

 シュローが食い下がるが、私は冷たい目で三人を見た。

 私の視線を受けて、シュロー達は何も言えなくなり、引き下がっていった。


「ロメ隊長」

 一部始終を見ていたアルが私に声を掛けるが、私はそれ以上言わせるつもりはなく、ひと睨みして黙らせた。

 シュローやアルが言わんとすることは分かる。兵士として死にたいのだろう。指揮官としては、彼らに死に場所を与えてやるべきなのかもしれない。

 だがそれは兵卒の思考で、男の考え方だ。かっこよく戦ってかっこよく死ぬ。男の人はそれで笑って死ねるのかもしれないが、私は違う。せっかく拾った命をむざむざ散らせるなど馬鹿のすることだ。

 私は彼らがどれほど望もうと、楽な死を与えるつもりはなかった。


「……進みますよ。しばらく進めば小川があるはずです。そこで小休止します。馬にたっぷりと水を飲ませ、水筒の水を補給しておいてください。そのあとはバラドの森を出ます」

「森を出た後はどうするので? 予定ではあと一日は時間を稼ぐ必要があるんですよね?」

 アルが今後の予定を尋ねる。


 当初の予定では、バラドの森を抜けた先にあるセメド荒野で魔王軍を待ち受け、挟撃する予定だった。しかし敵に追いつかれてしまった。あと一日をなんとかして稼がなければいけないが、正面からぶつかれば敗北は必至だ。


「では、遺跡めぐりといきましょうか」

 私の言葉に、アルとレイは顔を見合わせた。


ロメリアないしょばなし

登場人物名前の由来

アルビオン ガンダムに出て来る強襲揚陸艇から

レイヴァン 映画「トップガン」でトム・クルーズが愛用していたサングラスメーカ、レイバンから


ゼルギス 濁点の多い字にしようと考えて付けた

ガリオス 同じく濁点が多いあとオスとつけたら男度が上がるかと思って

ギャミ これも濁点縛り、ドラクエⅤの敵ボスからも引用


カシュー地方 ロードス島戦記砂漠の王国フレイムの初代国王

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― 新着の感想 ―
[一言] 魔王軍よ,何故馬を狙わない?逃げたい敵の足を奪え。
[良い点] コミックから来て一気読みしました 魔王討伐から戦後処理、内政によるその後のお話と言うのがとても面白くて読み始めましたがその後もとても楽しく読ませて頂きました 最新話もとても面白かったです…
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