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【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第四章 セメド荒野編~魔王倒して軍隊組織して、もう三年が経った~
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第二十一話 王妃の出征

いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

発売されたコミックの人気があるようで、うれしい限りです。ありがとうございます。

コミック発売を記念して、今週は毎日投稿しようと思いますので、よろしくお願いします。


それと今回の話しですが、書籍化したものより追加分が多くなっております。書籍化時にはページ数が足らず、削った分がありましたので。ちょっと加筆してあります。



 さらに別の魔王軍が出現したという報告がもたらされ、会議室は騒然となった。

「なんだと、場所はどこだ!」

「それが……グラハム伯爵領とのことです」

 アンリ王の問いに、伝令が躊躇しながら答えた。

 グラハム伯爵領と聞き、アンリ王の目が険しくなる。逆に家臣達の目を泳がせた。グラハム伯爵領は、アンリ王やエリザベートと因縁深いロメリアの生まれた領地だからだ。


「これは、我々が対応しなくても……」

「そ、そうですな、グラハム伯爵領には優秀な騎士団がいることですし……」

 家臣達は王家とロメリアの関係を考え、東には派兵しない方向で話をまとめようとした。確かに国内の魔王軍を駆逐した、ロメリアとその騎士団がいれば、助けなど必要ないかもしれない。

「いいえ、フラム地方に兵士を出す以上、グラハム伯爵領にも兵士を送るべきです」

 家臣達とは逆に、エリザベートは討伐隊を送るべきだと話した。


「エリザベート、本気か?」

「私とてロメリアを救うのは本意ではありません。ですが派兵せねば、民に『王家はロメリアに嫉妬したのだ』と言われてしまいます」

 アンリ王の言葉に、エリザベートはため息交じりに答えるしかなかった。


 王家とロメリアの間に確執があることは、すでに広く知られている。だがそれはあくまでも噂話だ。婚約破棄の一件以来、両者の間に争いや問題は起きていない。しかしここで兵士を送らなければ、対立が明確なものとなってしまう。内心はどうあれ対外的には動くべきだ。


「確かに……グラハム伯爵家も我が国の民だ。助けないわけにはいかない」

 アンリ王もため息を吐く。

「しかし任せる将軍がおらんぞ」

 先程解決した問題が再度浮上してしまい、アンリ王が頭を悩ませる。


「……分かりました。東には私が行きましょう」

 エリザベートの言葉に、アンリ王を始め家臣達が全員驚く。

「待て、それは駄目だ。お前が戦場に行くなど認められない。子供達をどうするつもりだ」

 アンリ王が止めたが、エリザベートは首を横に振った。


「ですがこれも必要なことです。南を陛下が親征される以上、東にもそれなりの人物を送らなければいけません。その点、私が行けば顔は立ちます」

 エリザベートの言葉にアンリ王は顔をしかめた。しかしすでに勅を発してしまった以上、親征を取り消すことも出来ない。


「それは……確かにその通りだが……」

 アンリ王は言葉を濁した。

「それに民にも、そろそろ誰が本物の聖女なのかを、思い出してもらわなければいけませんからね」

 エリザベートは笑って見せた。


 王妃が戦場に出るなど普通はありえない。しかしエリザベートは王国では聖女として讃えられ、アンリ王と共に魔王ゼルギスを討った英雄の一人なのである。自分が戦場に出ることは、アンリ王が親征することと同じだけの価値があった。


 ただアンリ王の言われるとおり、子供達と離れ離れになることが問題だった。

 長男のアレンは泣き虫で、エリザベートがいないとよく泣く。次男のアレルは逆にまったく泣かず、病気なのかと不安になる時がある。

 手はかかるが私の愛しい子供達、片時も離れたくはなかった。しかし子供を戦場に連れて行くわけにはいかない。断腸の思いで別れるしかない。


「では南には陛下が。グラハム伯爵領には私が行くことでよろしいですか?」

「いや、待て。グラハム伯爵領には私が行こう。南には君が行け」

 アンリ王は交換を申し出る。

「いいえ、私が行ったほうがいいでしょう。陛下、ロメリアと会った時に冷静で居られる自信がありますか?」

 エリザベートの指摘にアンリ王は鼻に皺を寄せた。


 アンリ王がロメリアを助けに行くのはいいが、その後でもめ事を起こされては困る。

 民衆に評判のいいロメリアともめ事を起こせば、人気を失うのは王家である。人気取りのために兵を出したというのに失っては意味がない。ロメリアと会っても、仲良く握手の一つもしなければいけないのだ。


「だが君はどうなのだ? ロメリアと会って、冷静でいられるか?」

 同じ言葉を返されて、今度はエリザベートが言葉に詰まった。

 ロメリアと会うとどうなってしまうのか、エリザベートは自分でも分からなかった。王妃として冷静に振る舞えると思うのだが、一方で顔を見た瞬間、殴ってしまうかもしれなかった。


「……だい、じょうぶ、です。心配なさらないでください」

 エリザベートは何とか口を動かした。

 ロメリアと会えばどうなるか予想もつかない。だが自分も以前の小娘ではない。数年とはいえ国母として、この国で王妃を務めてきたのだ。感情で動くようなことはしないと、自分を信じるしかない。


「わかった、君がそこまで言うのならそうしよう。だが部隊の編成は私が決めさせてもらうぞ。ギュネス将軍を連れていけ」

「ギュネス将軍を、ですか?」

 エリザベートは意外な人選に驚いた。


 ギュネス将軍は年が若く、まだ経験が足りないとも言われている。だが才能は豊かで家柄も申し分ない。

 アンリ王はいずれギュネス将軍に全軍の指揮権を与え、ザリア将軍の代わりにしようと考えているはずだ。お気に入りの将軍を自分の横に置かず、エリザベートに貸してくれるとは思わなかった。


「これは命令だ。あと親衛隊の精鋭も付ける。必ず生きて戻るのだぞ」

 アンリ王の有無を言わさぬ強い言葉に、エリザベートは胸が熱くなるのを感じた。


おまけ ~ロメリアないしょばなし~

登場人物名前の由来

ロメリア ジャンヌダルクの母親の名前がロメ。

アル 英語のオールから

レイ 零から

グラン、ラグン 童話グリとグラから グラ、ラグと名付けたけれど呼びにくいので少しいじった

オットー おっとりしているから、あと後々結婚させる予定を考えていた。初期イメージはベルセルクのピピン

カイル 身軽な奴→軽い→カイル。初期イメージはベルセルクのジュドー

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 王様サイドが一方的にロメリアさんを嫌ってるように感じるのだがなんでやろ? それと嫌い方が子供じみてるのもなんでやろ?
[一言] 能力はあるけど若い将軍とか絶対揉め事起こすやん
[一言] オットーとカイル、ベルセルクのキャラのイメージで読んでたら、そのまま元ネタだったとは。 その後の運命までは元ネタ通りににならないでほしい。
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