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【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第四章 セメド荒野編~魔王倒して軍隊組織して、もう三年が経った~
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第二十話 王国会議室

いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

コミックス発売に関連してか、すごくのビックマークや評価が伸びております。

ありがとうございます。

嬉しいので急遽更新

とりあえず一週間ぐらい毎日更新しますので、よろしくお付き合いください。


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 ライオネル王国王城ライツの執務室では、エリザベートがアンリ王と共に緊急の会議に参加していた。

 議題はもちろん、突如現れた魔王軍に対する対策である。


「会議を始める前に事実確認だ。本当に魔王軍が現れたのか?」

 アンリ王はまず、魔王軍出現の報告が誤報でないことを確かめた。

「はい、アンリ王。情報に間違いありません。南方にあるフラム地方の村が襲撃されました。討伐に向かったフラム地方の守備隊五百人が、魔王軍の姿を目撃しております」

 武官の一人が机の上に地図を広げ、王都より南に魔王軍を示す黒い石を置いていく。


「まて、南方のフラムだと? 北ではないのか?」

 アンリ王は報告に待ったをかけた。

 これはエリザベートにも驚きだった。魔王軍の本拠地であるローバーンは北方の半島、かつてはローエデン王国があった地に築かれている。魔王軍が北から来るのならばともかく、エリザベート達がいる王都より南に出現するのはおかしかった。


「どういうことだ? 北の国境であるガザルの門はどうなっている?」

 アンリ王は国境の状況を尋ねた。

 魔王軍の支配地域に面している北の国境には、再侵攻に備えてガザルの門と呼ばれる城壁が建設され、ザリア将軍率いる黒鷹騎士団が防衛についている。新たな魔王軍が出現したということは、黒鷹騎士団が敗れ、ガザルの門を突破されたことを意味する。それ故にアンリ王は緊急の会議を開き、エリザベートも出席したわけだが、どうも様子がおかしかった。


「それなのですが、北の国境に異変はありません。現在、確認の早馬を走らせていますが、襲撃を知らせる狼煙や鐘、伝令の鳥などはガザルの門から届いてはおりません」

 別の武官が、国境に異常がないことを告げる。

「ではどこからやって来たというのだ!」

 アンリ王の問いに、答えられる者はいなかった。


「陛下、今はどこから来たかを話すより、対処の方を優先させましょう」

 エリザベートはうなだれる家臣達に助け舟を出した。

「むっ、そうだな。確かに南方は重要だ。すぐに討伐に当たらねばな」

 エリザベートの言葉に、アンリ王も頷いた。

 王国の南は肥沃な土地が広がっており、穀物の一大生産地であった。これまで国内を魔王軍の残党に荒らされてはいたが、それでもなお余裕があったのは、王国の食料庫とも言える南が被害を免れていたからだ。


「先程、フラム地方の守備隊が魔王軍を目撃したと言っていたが、その後どうなった?」

 アンリ王が問うと武官が答えた。

「はっ、はい。守備隊は五百体から千体程の魔王軍を目撃したとのことです。しかし、魔王軍は守備隊を見るとすぐに後退したとのことです」

「なんだ、少ないではないか」

 武官の報告を聞き、アンリ王は拍子抜けしたように声を上げた。

 周りの家臣達も、少ない敵兵に安堵の息を漏らす。


「その程度の敵であれば、三千人もいれば十分でしょう。さっそく王都周辺の守備隊を集め、討伐部隊を編成します」

「いえ、待ってください。先程の報告ですが、五百体以上の魔王軍は、同じく五百人の守備隊を見て交戦せずに後退したのですね?」

 討伐部隊の編成にかかろうとする武官に、エリザベートは待ったをかけた。


「は、はい。守備隊は魔王軍を追跡したようですが、魔王軍には逃げられたようです」

「ふん、魔王軍は臆病なようだな」

 武官の報告を聞き、アンリ王は鼻で笑った。しかしエリザベートはそうは思わなかった。

 エリザベートは軍事に明るいわけではない。だがこれまで多くの茶会で交渉や密会を重ねたことで、相手の意図を読む目だけは鍛えられた。

 そのエリザベートの目には、魔王軍の動きに底意地の悪さを感じた。


「陛下、討伐には総力を傾けるべきです。兵数も最低で五千人は必要でしょう」

「多く見積もっても千体程度の魔王軍に、そこまで必要か?」

 エリザベートの言葉に、アンリ王は首を傾げる。

「相手がまともに戦ってくれるのであれば、三千人もいれば十分でしょう。しかし敵は討伐部隊を見て、逃げるかもしれません」

 エリザベートは、机に置かれた地図を指差した。地図の上には黒い石が配置されている。先程武官が置いたもので、魔王軍が出現した個所を示すものだ


「今回現れた魔王軍は、普段守備兵のいない場所に攻撃を仕掛けています。そして守備隊と遭遇しても交戦せずに後退しています。敵がこれを徹底した場合、討伐部隊を見ても交戦せず、分散して逃げる可能性があります。そうなれば殲滅するには包囲網を敷くしかありませんが、こちらが網を広げれば、魔王軍は集結して、手薄となった場所を狙うかもしれません」

 エリザベートの言葉に、アンリ王を始め家臣達は舌を巻いた。


「それは……確かに、もしそうなれば、討伐に手を焼くな」

 エリザベートの言葉に、アンリ王も頷いた。

「だがそれが事実なら、討伐部隊の指揮官は、並みの将軍では務まらぬぞ」

 アンリ王が顔をしかめる。

 魔王軍は現場の指揮官に、かなり自由な裁量を与えているのだろう。対応するためには、こちらも優秀な将軍に、大きな権限を与える必要がある。

 だが経験豊富で優秀な将軍は、多くがザリア将軍の派閥に取り込まれている。彼らに大きな裁量を与えれば、謀反を起こされる可能性があり、魔王軍より危険と言えた。


「討伐隊を任せられる将軍がいないぞ」

 アンリ王は顔をしかめて唸ったが、エリザベートは微笑んだ。

「いいえ、部隊を任せられる者はいます。それも今この場に」

 エリザベートがアンリ王を見ながら話すと、家臣達は、一体誰だと視線を彷徨わせる。

「……そうか! 私に出陣しろと言うのだな」

 視線の意味に気付き、アンリ王は笑顔を見せた。


「陛下! それはなりません! 危険すぎます!」

 武官の一人が、アンリ王の出陣を止めに入った。

「だが私が行くほかあるまい。それとも、代わりとなる将軍がいるのか?」

 アンリ王の言葉に、武官は黙らざるを得なかった。

「王国の要である南方が脅かされたとあっては、もはや放置は出来ん。私自らが軍を率いて成敗してくれる。これで誰が英雄か、民も思い出すことだろう。なぁエリザベート」

「はい、陛下のご威光に、多くの者がひれ伏すことでしょう」

 機嫌よく話すアンリ王に、エリザベートも同意する。


「よし、ではさっそく軍の編成に当たれ。親衛隊を動員せよ! これは勅である」

 アンリ王が親征の勅を発する。勅が発せられた以上、家臣は従うほかない。

「伝令!」

 アンリ王が早速部隊の編成を指示しようとすると、執務室に伝令の兵士が駆け込んでくる。

「東にも、魔王軍が現れたとのことです!」

 伝令の報告に、落ち着きかけていた執務室は、にわかに慌ただしくなった。


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― 新着の感想 ―
ギャミほどの男が考えたゲリラ戦術の概念を普通に看破してる……そして他の面子も鼻で笑ったりしない。王に讒言吹き込むマンみたいなテンプレ佞臣奸臣も前の回でいなかったし、地味に優秀……。
[良い点] 王を乗せるのがうまいな、戦も仕切るのだろうな
[良い点] おもしろー! よくある婚約破棄ものかと思って読み始めたら面白くて一気読みしちゃいました! 微力ながらロメ様を応援したいので続けて書籍版にいってきます!
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