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【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第三章 ロベルク地方編~軍事同盟を作って、魔王軍の討伐に乗り出した~

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第九十七話 最後に勝てばよいのです

ちょっと短いです



 子供のような魔族を人質に取り、私は寝息を立てるガリオスと対峙した。

 生き埋めとなった状態から脱出するには、なんとしてでもガリオスをうまく使わなければいけない。

 それが唯一の活路、生き残る道だった。

 それは分かっている。だが眠るガリオスを見て私の中で感情があふれ出した。


 胸の中から溶岩の如き煮えたぎる怒りがあふれ出し、私は感情の赴くままに腰の剣を抜くと、ガリオスに向けて振り下ろした。

 剣はガリオスの堅牢な鱗に阻まれ弾かれる。だがそれでも構わず私は何度も刃を振り下ろした。

 剣を振るう私の胸の中には、ただ悲しみと怒りがあった。


 こいつらが、こいつらさえいなければ!


 私の脳裏には、これまで魔王軍の犠牲になった人たちの顔が思い出された。

 こいつらさえいなければ、ミーチャもカーラさんも死なずに済んだ。ミシェルさんやトマスさんも、小さなセーラも死ぬことはなかった! 

 こいつらさえいなければ! 多くの悲劇が無かったのだ!


 私の頬を、一筋の涙が流れる。

 私は全身の力を込めて剣を振り下ろしたが、非力な私では眠るガリオスの寝首すらかけず、その鱗には傷一つつかない。


 私はどうしてこれほど非力なのだ。

 悔しさに顔を歪める私の背中に、呟きのような声がかけられる。

「雛鳥よ。敵を憎むな。判断が鈍る」

 人の言葉を話したのは、人質として捕らえた小柄な魔族だった。

「と、これは余計な言葉だったかな」

 小さな魔族が笑う。


 魔族が何を言う。

 一瞬そう思わないでもなかったが、私は小さく頷いた。

「いえ、自戒します」

 私は流れる涙をぬぐい、魔族に対して頭を下げた。


 相手は魔族であり、憎むべき敵である。

 だが魔族であっても、正しいことを言うことはある。正しいものは受け入れねばならず、敵の言葉であっても認めなければいけなかった


 私に戦う力はない。頭だけが、思考することだけが唯一の存在価値だ。

 頭脳を活かすためには常に冷静で居なければいけない。そのためには敵を憎む感情すら不要だった。

 ミーチャの犠牲も、カーラさんが亡くなったことも、ミシェルさんやトマスさん。セーラが身代わりになったことも、全ては過去だ。どれほど後悔してももはや取り消せない。


 だが未来は別だ。

 私がより早く、より良い判断や指示を下せば、それだけ犠牲が減り、多くの人を助けることが出来る。

 少しでも犠牲を減らすことが出来るのなら、私個人の感情は考慮に値しない。

 たとえ憎むべき敵でも、へつらいの笑みを浮かべ、愛想笑いをし、満面の笑みで握手すべきだった。


 すべての魔族を殺し尽くすまでは。


実はこのエピソードを書くために、今回ロメリアを生き埋めにしました。

「敵を憎むな、判断が鈍る」名画『ゴッドファーザー』の名台詞です。


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― 新着の感想 ―
[良い点] この二人がいずれ大舞台で戦うのかなあ
[一言] >すべての魔族を殺し尽くすまでは。 なるほど。非戦闘員である魔族の扱いをどうするのか?という疑問への答えはこれでしたか。 でも実際子供の魔族などを目の前にしたとき、殺せと命令できるかなぁ…
[一言] ちょっと良い奴に見えた
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