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【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第三章 ロベルク地方編~軍事同盟を作って、魔王軍の討伐に乗り出した~

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第八十二話 竜口窮鼠陣



 ミーチャに案内されて、私達は廃村となったアライ村へと向かった。

 昔アライ村に住んでいたミーチャの話では、廃坑となったアライ鉱山の坑道の一つに、アライ山を抜ける坑道が存在するらしかった。


「もうそろそろです」

 話すミーチャの前から、数人の兵士が走ってくる。偵察として先行させた兵士だ。偵察兵の顔は険しく、緊張に表情が強張っている。


「魔王軍ですか!」

 駆け寄ってきた偵察兵に、私は戻ってきた理由を尋ねると、偵察兵は顎を引いた。

「場所は? 数はどれくらいです?」

 私は即座に馬を降り、地図を広げる。そして視線は部隊を率いているアルやレイ、オットーにグランとラグン。ハーディーの代わりにグラハム騎士団を率いているデミル副隊長に向けて、集まるように目で指示する。

 主だった部隊長達はすぐに駆け寄り、簡易の作戦会議を始める。


「ロメリア様。魔王軍ですが、この先の廃坑前で魔王軍同士が交戦しています」

「なんですって?」

 偵察兵の報告を聞き、私は声を撥ね上げた。

「まず、巨大な、背の大きな魔族の部隊が三百体ほど、廃坑の前に展開しています。そしてその三百体を囲む形で、赤い鎧を着た魔族五百体が三方から攻撃を仕掛けています」

 偵察兵は私が広げた地図を覗き込み、アライの廃坑を指さす。そして廃坑を取り囲むように三つの地点を指さし、交戦している魔王軍の部隊を示す。


「魔王軍はどこの部隊かわかりますか? 掲げていた旗は?」

「背の高い三百体の魔族は、赤いほうき星の旗を掲げていました。ただ、赤い鎧の魔王軍は、旗を掲げておらず、所属は分かりません」

 私が尋ねると、偵察兵は片方の所属が分からないことを告げた。

 だがそれだけでおおよその見当はついた。


 おそらく旗を掲げていない方は、バルバル大将軍の兵士達だろう。そしてほうき星の旗を掲げる巨体ばかり集めた部隊こそ、バルバル将軍を敗走させ、ミカラ領を襲った魔王軍だと予想出来た。

 バルバル大将軍の残党達は、赤いほうき星の魔王軍を主の仇と考えて攻撃を仕掛けているのだ。旗を掲げていないのは、もはや自分達は魔王軍ではないという表れか、何にしても魔王軍同士が争っているこれは好機だ。


「アル、レイ、グラン、ラグン、オットー。貴方達は五つの部隊に分かれ魔王軍を包囲してください。デミル副隊長。貴方は騎兵部隊を率いて、私に付いて来てください」

 私は交戦する魔王軍の周囲を、包囲するように指さした。

 本来歴戦の魔王軍を包囲することは簡単ではない。しかし交戦中ならば後ろを取れる。うまく包囲すれば殲滅も可能だ。


「ロメリア様、まさか」

 レイが私のやろうとしていることに気付き、声を上げた。

「ええ、『竜口窮鼠陣』で行きます」

「ちょっと待ってくださいロメ隊長! あれはまだ未完成!」

「そうです。まだ訓練中です。実戦で使うには早すぎます」

 アルとレイが口を揃えて無理だと話す。


 竜口窮鼠陣は私が考案し、現在訓練中の戦術だ。

 蟻人戦を経て、私は戦場を俯瞰して捉えることが出来るようになった。

 戦場全体で起きることをつぶさに感じ取れ、敵の守りが強固なところ、あるいは意識が向いていない箇所がなんとなく分かるのだ。


 何故私に、そのような能力が獲得出来たのかは分からない。

 だが一度の偶然ではなかったらしく、バルバル大将軍との戦いを経て、訓練でもある程度戦場全体の動きを把握できるようになった。


 原理は不明であるが、戦場に立つ私にとっては有益な能力だった。何せ敵の動きや隙が把握出来るのだから、戦術面で大きな有利といえる。

 しかしこの能力にも、一つの限界が存在する。敵が敷いた陣形が、付け入る隙がないほど完璧だと打つ手がなくなるのだ。


 前回のバルバル大将軍との交戦では、バルバル大将軍が負傷しており、戦場に立てなかったため隙があった。

 だがもしあの時バルバル大将軍が指揮を取っていれば、陣形に隙や弱点など存在せず、負けていたのは私達の方だっただろう。

 敵の隙を見分けることが出来る能力だが、そもそも敵に隙がなければ十分に機能しない。だが隙が無いならば生み出してやればいいのだ。


「訓練通り、まず私が騎兵部隊を率いて敵陣に切り込みます。貴方達は歩兵部隊を率いて魔王軍を包囲し、連動して魔王軍を攻撃してください」

 私はアルやレイ、グランとラグン、そしてオットーに命じる。

「待ってください、ロメ隊長。騎兵部隊には俺も入ります」

「そうです、少数で敵陣に突撃するのです。せめて周囲をロメ隊全員で固めてください」

 アルとレイが待ったをかけた。

 確かに、少数で敵陣に突撃するのだから、騎兵部隊は敵に簡単に包囲されてしまう。

 自ら竜の口に飛び込むようなものだ。


「それはだめです。訓練でも分かったでしょう。竜口窮鼠陣は歩兵部隊との連動が何より重要です。貴方達は歩兵部隊を指揮し、魔王軍を外から包囲してください」

 私は首を横に振って、アルとレイを諭した。


 竜口窮鼠陣は大胆かつ緻密な戦術だ。

 敵陣に少数で突撃することで、敵の守りを乱して隙を生み出す。その隙を包囲した歩兵部隊に突かせる。

 敵が包囲する歩兵部隊に対処しようとすれば、内部に入り込んだ騎兵部隊が攻撃を仕掛け、敵が内部に入り込んだ騎兵部隊に対処しようとすれば、包囲した歩兵部隊が圧力をかける。


 突撃する騎兵部隊は、竜の口に飛び込んだ鼠だが、竜の腹わたを食い破る窮鼠となる。

 これが竜口窮鼠陣。

 完成すればあらゆる敵を倒す切り札となる戦術だった。


いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 同士討ちしてるしてる敵にわざわざ突っ込むの不自然すぎる…
[気になる点] 戦えない指揮官が1番危険な場所に飛び込むのはどうなんだ?正直簡単に死にそうな気がするんだが。 魔王軍同士の争いが終わってから、もしくは終わりが近づいてから戦闘をしかけた方がいいんじゃな…
[一言] 無茶するなぁ
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