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【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第三章 ロベルク地方編~軍事同盟を作って、魔王軍の討伐に乗り出した~

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第七十四話 ロメリアの後悔



 騎兵部隊だけでミカラ領へと急行した私達を待っていたのは、燃え尽きたミカラ家の城館と略奪された村の姿だった。

 のどかだったミカラ領は戦火にまみれ、畑の上にはロベルク同盟の兵士達の死体が積み重なり、血と臓物で出来た丘となっていた。

 おそらく魔王軍の仕業だろう。だが魔王軍はすでにこの場から立ち去り姿はない。

 後に残されているのは、破壊と略奪の痕跡だけだった

 

「ああ、そんな……お母様、ソネット……どうして……なぜこんなことが」

 燃え尽きた城館を前にして、ソネアさんが膝から崩れ落ちて嘆く。

「ミア! ミア!」

 ミーチャが焼け落ちた城館に駆け寄り、瓦礫を退けてミアの姿を探す。

 私も凄惨な光景に思考が停止したが、すぐに自分自身に喝を入れる。

 悲嘆に暮れている時間などなかった。こんな時だからこそ、的確に行動しなければいけない。


「アル。近くにまだ魔王軍がいるかもしれません。グレンとハンスを連れて周辺を警戒してください。レイ、貴方はセイとタースを連れて村人や負傷者の捜索と救出を」

 私はロメ隊の面々に命令をくだす。

 魔王軍の姿はないが、私たちの存在に気付き、戻ってくるかもしれない。そして周辺では、殺戮の難を逃れた村人が戻ってきていた。多くの人々は怪我をして傷付いている。彼等を助けなければいけなかった。


「グレイブズ、貴方は生存者から話を聞いて、何が起きたかを調べてください。カールマン。貴方達癒し手は負傷者の治療を」

 私は古参兵のグレイブズと、癒し手のカールマンに命じる。

 グレイブズは以前ミアに声をかけていた。カールマンはミアの先輩であり、ミアのことを妹のように可愛がっている。

 二人共ミアの安否が気になるだろうが、私の命令に従って行動を開始する。


「ミーチャ! 何をしているのです!」

 私は瓦礫を退けてミアさんを探すミーチャに、鋭い声を飛ばした。

「ロメリア様、お願いです。止めないでください。ミアを探さないと」

「だからこそ、何をしていると聞いているのです!」

 なおも瓦礫を退けるミーチャに向かって、私は怒鳴った。


「貴方は、ミアさんが死んだと思っているのですか?」

「そんな! 生きていると信じています!」

 私の言葉に、ミーチャが睨む。

 ミアさんの死を口にした私が許せないのだろう。


「なら探すべき場所が違うでしょう。その下には死んだ人しかいませんよ」

 私は先程ミーチャが退けていた瓦礫の下を指さす。

 残念だが、その下には死者しか居ない。ミアさんの生存を信じているなら、別の場所を探すべきだ。


「魔王軍はロベルク同盟の兵士を殺していますが、村人はほとんど殺していません」

 私は村の家屋を見回した。

 ミカラ領の村は掠奪されているが、村人の死体はほとんど無い。掠奪による食料の補給が魔王軍の目的だったからだろう。村人の殺戮は本来の目的ではなかったはずだ。

 ロベルク同盟の兵士が殺されたのは、おそらく抵抗して戦ったからだろう。


「魔王軍は城館を攻撃しましたが、人を殺す目的ではなかったはずです。逃げた人を追いかけてはいません。城館の裏門から逃げた人も多いはずです」

「ミアが裏門から逃げたと?!」

 私の言葉にミーチャが希望を持つ。


 ミアさんが逃げ延びた可能性はある。

 魔王軍がやって来た時、ミアさんは地下牢に閉じ込められていたはずだ。もし閉じ込められたままなら、ミアさんは助からない。

 しかしカイル達はミアさんを助けるべく動いていた。カイル達がミアさんを助け出し、裏門から逃げて難を逃れたかもしれない。


「城館の裏手を探しましょう。助かっているとするなら、裏門にいるかもしれません」

 私はミーチャやソネアさんと共に、護衛の兵士を引き連れて城館の裏手に回った。

 焼け落ちた城館を迂回して裏手に回ると、そこには小さな川があり、破壊された橋があった。そして橋の前には数人の人が横たわり、あるいは座っていた。

 座っていた者が私達に気付くと、立ち上がり手を振って合図をする。手を振っていたのはロメ隊のジニだった。


「ロメリア様! ここです」

 ジニの隣では、メリルも立ち上がり声をあげる。

 横たわる人の中には、カイルにレット、シュロー。そして修道服を着たミアさんの姿があった。


「ミア!」

 横たわるミアさんの姿を見て、ミーチャが駆け寄る。

「ミーチャ……さん?」

 ミアさんは怪我をしているようだが、生きており、声に気付いてうっすらと目を開けた。


「よかった。本当によかった!」

 ミーチャが喜びのあまり大きな声を上げる。すると声に反応して、赤ん坊の鳴き声が響きわたった。

 鳴き声に釣られて視線を動かすと、メリルが赤ん坊を抱いていた。カーラさんの娘で、ソネアさんの妹であるソネットだ。


「ああ、ソネット」

 ソネアさんがメリルに駆け寄り、妹を受け取る。

 姉に抱かれて安心したのか、ソネットは泣き止み眠り始めた。

「ソネア様。申し訳ありません。魔王軍に襲撃されて城館は焼け落ち、カーラ様とカルス様が亡くなられました」

 メリルがカーラさんとカルスの死を告げる。

 家族の死に、ソネアさんが涙する。


「ロメリア様。申し訳ありません。私達がいながら、お二人を助けることが出来ませんでした」

 メリルやジニ、そして横たわるレットとシュローが謝罪する。

「いえ、貴方達はよくやってくれました」

 私はメリル達五人を労った。

 彼らの奮戦を疑う余地はない。皆が大きな怪我を負っていた。

 メリルは左腕がなく、座ったままのレットは両手がなく、横たわるシュローは左足をなくしている。カイルにいたっては全身に火傷を負い意識がない。


 全員が命懸けで戦ってくれたことがわかる。

 彼等に責任はない。責めを追うべき者が一人いるとするなら、それは他の誰でもなくこの私だ。

 この事態の責任は全て私にある。なぜならこの惨劇を防ぐことが出来たのは、このロベルク地方では私しかいなかったからだ。

 私の無能が、この事態を引き起こした。

 自らの不甲斐なさに、私は歯噛みした。


いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

十一月十八日にロメリア戦記の二巻が小学館ガガガブックス様より発売します。

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
流石に北部同盟を潰す話の顛末が酷い。 ミアの戯言で選り抜きの兵士を失くし過ぎている。 後々、この時の兵士がいればよかった、となるだろうし。兵の育成は時間資金労力全てかかる。ので現代でも下手な兵器より…
[一言] 確かに責任は指揮官が全て負うものだが、あまりにも抱えすぎてるな
[一言] うーむ、死人を悪く言うのはあれなんだが…カルスの爺さんマジで糞だったな。 せめて生きててくれれば、魔王軍の脅威を大々的に宣伝してもらって、改めてロメリアに付くことを示してくれればよかったのに…
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