表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第三章 ロベルク地方編~軍事同盟を作って、魔王軍の討伐に乗り出した~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

160/465

第六十九話 激突グエンナVSカイル②



「カイル!」

 メリルは、宙に放り出されたカイルを見て叫んだ。

 数年来の戦友は、まるで自ら炎に飛び込むように、燃え盛る城館に飲み込まれていった。

 炎の中に投げ込まれたカイルからは返事はなく、逃げ出ても来ない。助けに行こうにも、燃え盛る炎に近くことすら出来なかった。


「……カイル」

 メリルは戦友の死に動揺したが、仲間のレットやジニ、シュローといった面々は怒りに燃えていた。


「よくもカイルを!」

 シュローが剣を手に飛び込もうとするが、メリルは手を伸ばして制した。

「待て、迂闊に突撃するな。シュローお前は左だ。レットは右! 正面は俺とジニだ。全員で掛かって仇を討つぞ!」

 メリルは激昂する仲間を抑えて指示を出した。強敵グエンナ相手に、怒りのままに突撃したら死ぬだけだからだ。


 シュローやレット、ジニは怒りに燃えながらも、グエンナを倒すための指示に従い、グエンナを包囲する。

 対するグエンナは炎を背にしながら、口で左手に突き刺さった二本の短剣を引き抜く。

 ギザギザの牙で、短剣を咥えて吐き捨てるグエンナの目には勝利の笑みがあった。五人の中で最も腕が立つカイルを倒したことに、勝利を確信しているのだ。


「いくぞ!」

 メリルの声に反応して、ジニが先行する。

 向かい来るジニに、グエンナが大剣で迎撃する。

 ジニが飛び退き、降りかかる巨大な刃を寸前で回避した。その隙にシュローとレットが左右から同時に斬りかかる。

 グエンナは望むところとばかりに大剣を振るい、二人と切り結ぶ。

 そこにジニとメリルが加わるも、恐るべき力と速度、技の正確さの前に近づくことが出来ない。


「グエンナァァァァァ」

 攻めきれないことに業を煮やしたジニが、叫びながら両腕を広げる。

「斬れるもんなら斬ってみろ!」

 手足を大の字に広げるジニに、グエンナも応じる。

「おもしれぇ」

 挑発に笑うグエンナが、長大な刃をジニ目掛けて垂直に振り下ろす。

 すぐ目の前でその光景を見ていたメリルには、真っ二つに両断されたジニの姿が見えた。


 だがそれは錯覚が見せた幻影だった。

 ジニは極限まで刃を引きつけ、最小限の動きで後ろに下がり、グエンナの大剣を回避していた。

 革鎧と服が切り裂かれたが、服の下の体は無傷。まさに紙一重の見切りだ。


 極限の回避を見せたジニは、目の前に振り下ろされた大剣を剣で押さえつける。さらにメリルとレットが刃を重ね、グエンナの大剣を封じる。


「シュロー!」

 メリルが叫ぶと、シュローが左からグエンナに飛び掛かった。


「覚悟!」

 シュローがグエンナの顔に目掛けて剣を振るう。

 グエンナの顔に刃が吸い込まれる。だがグエンナは自身の顔に振り下ろされた刃に牙をむき、あろうことか剣に向かって噛みついてきた。

 金属の刃と魔族の竜の如き牙が激突する。

 シュローの剣はグエンナの二本の牙を折り、口を顎の付け根まで斬り裂くも、グエンナは恐るべき咬合力でそれ以上の刃の侵入を阻止した。


「おひぃ」

 刃を咥えながら、グエンナが口の端を歪ませる。

 驚愕に見開かれるシュローの目が、激痛によってさらに開かれる。グエンナの左拳が放たれシュローの腹にめり込んだからだ。

 シュローは反吐を吐き、グエンナの足元に崩れ落ちる。


「シュロー!」

 メリルが叫ぶが、助けに行こうとした瞬間、グエンナが大剣を引いて、メリル達に向かって突きを繰り出す。

 メリル達三人は後ろへと飛んで突きを回避したが、グエンナの大剣はメリル達ではなく、メリル達の足元である地面に突き刺さった。


 地面を突き刺したグエンナは、大剣をはね上げて大量の土をジニの顔にぶつける。

 突然の目潰しに、視界を塞がれたジニの動きが止まる。動きの止まったジニに、グエンナが大剣を振り下ろした。


「ジニ! 上だ!」

 すぐそばにいたレットが叫び、剣を上に向けて降り注ぐ大剣を防ごうとする。遅れてジニも剣を掲げる。

 二人でグエンナの大剣を受けるが、支えきれずに二人が吹き飛ばされて倒れる。


「ハハハハハッ、いい攻撃だったぞ」

 グエンナが噛み締めたシュローの剣を吐き捨てて笑った。

 シュローはグエンナの足元で倒れ、ジニとレットも起き上がれない。


 唯一立つメリルを、グエンナの双眸がとらえた。


いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

ロメリア戦記の二巻が、十一月十八日に小学館ガガガブックス様より発売予定です。


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] やっぱつええ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ