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第八話


 ボクはルート。十五才。魔導学院を卒業し、宮廷魔導師になった今穴掘りをしている。

 なぜ穴掘りをしてるかというと、あの化け物、フューリ·アクセルがマーダー王国を囲う岩山を砦にしようと国王陛下に進言した為である。

 現在、土魔法を使える魔導師を主軸にし、岩山の中をアリの様に掘りまくり、人が住めるように、木や鉄で補強している。

 何故今更岩山を貴重な魔導師やお金を使って要塞化する必要があるのかと、フューリはマーダー王国の大臣や他の貴族などに非難されたが、国王の勅命により岩山の要塞化が始まった。

 もちろん、発案者のフューリ·アクセルも一緒になって穴を掘り、補強している。

 そんなフューリに声をかけられた。


「久しぶりですね、ルート·マイル準男爵。あの頃からあなたには、魔法の才能がありましたが、まさかこれ程までに成長なさるなんて努力ももちろんしてるんでしょうが、やはり天才ですね」

 

 なんと魔導学院最年少入学で最速で卒業し、冒険者になったと思ったら、二年でSSSランクの最高位冒険者になり、さらに軍に入り、最年少で少佐と男爵の爵位を持つ真の天才にして化け物のあのフューリ·アクセルがたった一週間クラスメイトだったボクを覚えていてくれた?


「ボ、ボクの事を覚えているのですか? たった一週間クラスメイトだったボクを?」


「水、土、風、聖属性の四つの魔法を使えるフォースで魔力量が多いのに、魔力のコントロールも上手かったルートさんを覚えていない筈がありませんわ。それと爵位とセカンドネームおめでとうございますわ」


 爵位と言っても一世代限りの準男爵だけど、貴族の証であるセカンドネームも陛下から頂いた。

 宮廷魔導師になると、平民でも一世代限りではあるけど貴族に成れると聴いてから死に物狂いに魔法の訓練を行った。

 元々の才能と努力でなんとか宮廷魔導師に成れたけど、この子は違う。この子は多分帝国に居る賢者マーリンよりも強い。

 そんな彼女に名前を覚えていてもらったなんて宮廷魔導師に成れた時と同じくらいに感激だ。


「ありがとうございます。まさかフューリ少佐がボクの事を覚えていてくれていたなんて感激です!」


「短い間だったとはいえ、私達はクラスメイトだったのですからフューリで結構ですわ。その代わり私もルートと呼ばせて頂きますから」


 ボクの貴族のイメージは、サーシャ·バルストの様な傲慢で平民を下に見ている連中だ。

 準男爵になったあとも元平民から貴族になったから、偽者や貴族になっても平民の匂いがするわなど、嫌みを言われ続けた。


 なのに目の前のフューリ·アクセルはそういった貴族の傲慢さがない。

 本当にボクの事を称賛していて、皮肉さも全然感じない。 


「じゃあフューリって呼ばせてもらいます」


「ルート、二人の時は敬語は必要ないわ」


「……うん、わかった。二人の時はため口で話すよ、よろしくフューリ」


「ええ、よろしくルート」

 お互いに笑顔で握手をする。

 

「早速で悪いんだけど右の岩山の要塞化が遅れてるの。そちらに向かって、手伝ってきてもらってもいいかしら?ここの補強や穴掘りは、私がするから」


「わかったよ、じゃあ行ってくる」


 ボクはボクとは住む世界の違う人間で、その才能から化け物だと思っていたけれど、訂正する。彼女はたくさんの才能にめぐまれているが、心は優しい。

 ボクは、普通の天才でいいやと思っていたけれど、これからは少しでも彼女に追いつけるように更に魔法の腕前を上げる事を心の中で誓った。



            ◆◆◆

 

 ルート。魔導学院の時から目をつけていたが、優秀な魔導師に成長しているようだ。

 それに宮廷魔導師長などの土魔法に優れた魔導師達とサポートしてくれるおかげで要塞化は着々と進んでいる。

 そして西側、東側、南側の壁には私が防御魔法の術式を込めた魔石を埋め込んである。そしてこちらからは、矢や遠距離魔法を撃つ為の大人の拳サイズの穴をいくつも開けてあるし、遠くの距離を見るため為の魔導望遠鏡も私が作って各各ブロックに配置してある。

 西側、南側、東側の道は繋がっており、緊急時にも各ブロックから応援が呼べる。

 それよりも周囲に驚かれたのは、東側と南側に扉を付けた事だ。

 そんなことをしたら敵が入りやすくなると思ったのだろうが、扉は冒険者時代に手に入れたオリハルコン、アダマンタイト鉱石を混ぜた物で作っているし、扉には魔石嵌め込んでおり、その魔石と連動して開くようにできる魔石を各ブロックの司令官に渡してある為、他の人間が開ける事はできない。西側は海沿いであった為、非常事態の際に脱出出来るように秘密通路を作り、船を浮かべさせている。岩山だった頃よりむしろ頑丈になった元岩山を国王陛下はウォーロック要塞と名付けた。

 国王陛下や宰相、他の大臣などに何故扉をつける必要があったのか聞かれたので答えてやった。

 答えは単純。その方がオズワルド帝国が身動き出来なくなるから。

 今までは、岩山があった為、マーダー王国は後回しにされていた。

 現在、中央大陸を統一しようと目論むオズワルド帝国は、四つの国々が同盟を組んだ連合国軍を相手していた。

 このままいけば圧倒的な兵力の差でオズワルド帝国が勝っていただろう。

 でもオズワルド帝国には勝ってもらっては困るのだ。

 あくまでオズワルド帝国の目的は中央大陸の統一。

 なら連合国軍が負けた後は、どんな手を使ってでもマーダー王国と戦争するだろう。

 そうならない為にも岩山を要塞化し、扉をつけ、いつでも後ろから攻撃出来るんだぞと脅しの為に作ったと説明した。

 ついでに国王陛下に連合国軍に加盟する様に進言した。

マーダー王国と連合国軍に挟まれたオズワルド帝国はマーダー王国も警戒しないといけない為、連合国軍に力を割けなくなり、オズワルド帝国の侵略は一時停滞するだろうとも進言した。

 その間に私は、試作していたある兵器を国王陛下に見せ、兵器の量産の許可を得た。

 これでウォーロック要塞は無敵になるだろう。

 早く御披露目がしたいと思っていると、我慢が出来なくなったのか要塞の南側のブロックを任されていた私の所へ三万人程の帝国軍が攻めてきた。

 魔法や矢や岩投機で攻撃してくるものの、要塞はびくともしない。当たり前だ。私が防御の術式をかけてあるのだから。

 そしてこちらは新兵器の魔導銃と魔導ライフルで敵を撃ちまくる。魔力を魔導銃に取り付けられている魔石に流し、トリガーを押すだけで普通の銃の弾よりも強力な圧縮された魔力弾が敵を倒しまくる。

 魔力は誰にでもあるので、これなら魔導師でなくても中級魔法と同等のものを簡単に撃つことが出来る。

 ライフルも同じ作りだが、弓矢の名人に使ってもらうことによって、敵の隊長格がバタンバタンと倒れていく。

 敵の魔導師が空から攻撃しようと試みているが、魔導銃や魔導ライフルは言わば無詠唱魔法と同じなのだ。

 空の敵も墜落していく。

 魔導銃も魔導ライフルも素晴らしい兵器なのだが、魔導師以外の兵は、魔力が多いわけでもないので、疲弊してきている。

 まぁ、これだけ圧倒すれば、敵も撤退を考え始める頃だろうが、そうはさせない。


「ちょっと遊んできますわね」

 私の副官にそう伝えると私は、飛行魔法で要塞を出て、敵の密集地目掛けて突貫する。

 敵は必死で矢や魔法で私を攻撃するが、その程度では私の防御魔法は破れない。

 敵陣のど真ん中に着地する。

 無双ゲームの様に私が攻撃する度にドカンドカンと敵が吹っ飛びまくる。

 何か強そうな格好をした武将もいたが、関係なくドカンドカンと吹っ飛ばしまくる。

 夢中になっていると、いつの間にか立っている敵兵は居なくなっていた。

 久しぶりの戦争で興奮してやり過ぎた様だ。反省。

 しかし、これでウォーロック要塞の難攻不落さが証明されたし、万々歳だ。

 ウォーロック要塞を満足げに見ていると、魔導銃と一緒に作った魔導通信機から声がする。

 それは副官のリッサ·メルス少尉からだった。

 なんでも連合国軍を攻めていた帝国軍が撤退したとの報告があったらしい。

 まぁ、いきなり三万の軍が壊滅すれば、他所との戦争どころじゃない。

 これで一時的にも連合国軍の国々も疲弊を回復出来るだろう。

 さぁて要塞に戻ろうとしたら、通信機から至急マーダー国の城に来られたしと、連絡が入った。


 久しぶりの戦争で疲れて正直すぐにでも休みたいのだが、国王陛下の命令らしく、プラチナブロンドの髪をかきあげ、しょうがなく城にテレポートの魔法で転移する。


 

読んで頂きありがとうございました。

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