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第六話


 私は久しぶりに我が家に帰る。

 父は泣きながら私を抱きしめようとするけど当然かわす。

 そして母と久しぶりに抱きしめ合う。


「しばらく会わないうちにまた大きくなりましたね。聞きましたよ。冒険者の最高ランクになって大活躍だったとか。それを聞くたびにケガをしてないかビクビクしたものです」

 

「ご心配をおかけして申し訳ありませんわ。ですがこの通りピンピンしております。お父様にもご心配をおかけして申し訳ありませんわ」

 すると無視されたのに落ち込んでいたお父様は笑顔になって抱きつこうとする。当然かわす。

 

「あまりお父様をいじめてはダメよ。あなたがあの邪竜ジャバウォックを倒したと聴いた時はどこかケガしてないか一番あなたの事を心配していたのですからね」


 そう言われると胸が痛い。邪竜ジャバウォックとの戦いは確かに死ぬかと思った所が何回もあった。この世界のSSSランクモンスターを舐めていた。

 しょうがないから両手を広げ父の抱きしめを受け止める。


「うぅ、無事で良かった。本当に無事で」

 泣きながら私を抱きしめるお父様を見て反省する。

 百八回も転生してると、どうも自分の命を軽く見てしまう。

 自分をこうして心配してくれる人の為にももう少し慎重に生きよう。なんせこれが最後の人生なのだから。


 お父様が落ち着いたみたいなので早速本題に移る。


「軍に入るだと!? わかった軍の高官になりたいのだな、それなら、高官専用の学校への手続きをしよう」


「いいえ、お父様。私は普通の軍学校に入りたいのです」


「な、何を言っているんだフューリ!? あそこは貴族が行くところではない。あそこはなれても下士官にしかなれない場所だ。それにあんなむさ苦しい男だらけの場所に大事なお前を行かせるなんて無理だ!」


「お父様お願いします。どうしても軍学校に通いたいのです!」


 頭を下げる私に困った顔をするお父様。

 どうしても軍学校には行かせたくないらしい。

 だがここで助け船が出る。

 

「そこでどうしてもしたい事があるのね?」


「はい、どうしても普通の軍学校じゃないとダメなんです!」


「ねぇ、あなた、今までだってフューリは結果を出してきたじゃない。そのフューリがここまで言ってるんだからやらせてあげましょう?」


「……わかった。ただし辛くなったらすぐに帰って来なさい」


「ありがとうございますお父様」


 

 こうして再び王都に帰ってきた。以前は王立魔導学院に通うため、そして今回は王都にある軍学校通うため。

 軍学校は3ヶ月で兵に育て上げ、軍に配属される。

 私の目的は、現在の軍学校の育成能力把握と有望な軍人見習いがいるなら私の部下にする事である。

 なのだが軍学校に入って一週間、なんだこのレベルの低い鍛練は! 無駄も多いし、これは改善しなければならないといけないみたいだ。

 校長に直談判し、教官が教えている兵見習い三十人と私が一週間教えた兵見習い三十人を戦わせて勝った方の指導で今後軍学校を指導させると確約させた。

 結果は私が率いた三十人が無傷で大勝利。

 今後は、私の指導の仕方で教える事になった。



           ◆◆◆


 今回入学してくる者の中に公爵令嬢で魔法の天才で冒険者ランクSSSの七歳の少女――フューリ·アクセル嬢居る。

 どうせ親の権力を使って魔導学院を一週間で卒業したり、ランクSSSもギルドに圧力をかけて無理矢理SSSランクになったに違いない。

 だがこのベンジャミン軍曹が指導官になったからには、子供だからといって容赦はしない。地獄を見せてやる。


 あっれー? おかしいな。この一週間、地獄の基礎訓練したつもりがフューリ嬢が一番余裕そうにこなしている。

 それどころか一番体力のない女子見習い兵を担いで訓練をこなしている。

 気にくわない。そんな俺からのプレゼントだ受け取れ。


「誰が仲間を助けろと言った。命令違反でフューリ見習い兵、グラウンド百周しろ!」


 しかし、フューリ嬢は涼しげな顔で「了解しました」と言い、残りの兵の訓練がまだ終わっていないのに百周走りきり、他の兵に混ざって基礎訓練を再開する。

 

 本日の訓練が終わり、兵見習い達がボロボロに疲れきってるのを確認し、満足な気持ちで帰ろうとしたのに、いけすかないフューリ嬢が俺の訓練は無駄が多く、各個人に適した訓練を行うべきだと教官である俺に口答えしてきた。イラついたのでフューリ嬢の頬を叩く


「生意気だなぁ。ここでは教官が言うことが絶対だ。例え公爵令嬢だったとしてもな。教官に口答えした罰だ。グラウンド千周してこい!」


 他の見習い兵達があんまりだという目で俺を見てくる。

「なんだー? お前らも千周走りたいのか?」


 すると目をそらす見習い兵達。

 だというのに、フューリ嬢は「了解しました」とグラウンドを猛スピードで走っている。この分だとすぐに千周走り終わりそうなんだけど化け物か?

 そんなことよりもさっきフューリ嬢を叩いた右手がめっちゃ痛いんですけど。

 軍学校の保険医に診てもらうと右手が骨折してるらしい。

 保険医は聖属性魔法が使えるので回復魔法で治してもらう。

 おのれ~、フューリ嬢め。明日はもっと辛い訓練にしてやると意気込んでいたら、校長室に呼ばれた。

 何でも一週間後に俺が指揮する三十名とフューリ嬢が指揮する三十名とで戦闘し、勝ったほうの指導で見習い兵達を指導すると確約したらしい。なお、一週間の間は別々に訓練する事と校長に言われた。

 言われっぱなしは、しゃくに触るので俺のほうの三十名とフューリ嬢の三十名は俺に決めさせて欲しいとお願いしたら、フューリ嬢が事前に教官に選んでもらって構いませんと言っていたらしい。

 どこまでも鼻につくガキめ! 

 それなら遠慮なく今までの訓練に良くついてきた者を俺の指揮下に置き、訓練についてこれなかった者をフューリ嬢側に送る。

 これだけで勝ったも当然だが、念には念を入れて訓練を強化する。これで確実に勝てるだろう。フューリ嬢の悔しそうな顔を想像すると、一週間後の戦いが楽しみだ。

 


 何なんだこれば!? こちらは優秀な者ばかりを集めて更に厳しい訓練をさせたはずなのに、一方的やられた。なぜだ?

 疑問に思っているとフューリ嬢が近付いてくる。


「戦いを見てまだ分からないのですか? 皆が皆歩兵の要素があるわけではないのです。斥候や誘導、罠、弓矢、戦術など人によって得意不得意がありますわ。ならその長所を活かした訓練と編成をすれば体力や力がなくても勝てますのよ」

 

 なるほどな仲間を良く見てその長所を伸ばすか。その考えは俺にはなかった。


「じゃあ俺がしてきた事は間違いだったって事か」


「それは違いますわ。基本の訓練があったからこそ私達のチームは長所を使って勝てたのですから何事も配分ですわ。これからは基本訓練に三時間あてて、あとは長所を伸ばす時間にすればいいのですわ」


 なるほどな。俺の完敗だフューリ嬢。




 少し先の未来だが、訓練の仕方を変えたこの軍学校は優れた兵を生むと評判になる。




            ◆◆◆


 私は軍学校に三ヶ月居る間、育成マニュアルを作る片手間で戦術の才を持つ二人を見つけていた。

 一人は教科書通りの綺麗な戦術を組む茶髪の男子マルコ。 

 そしてもう一人は訓練の間私がおんぶしたりフォローしていた黒髪の女子イリス。このイリスは軍学校での三十名対三十名の戦いで私でさえ出て来なかった突飛な作戦を思いつき勝利に大きく貢献した。


 三ヶ月で軍学校を卒業したら普通は即軍に配属されるが、この二人には、私と一緒に高官用の軍学校に通う手配した。

 本来なら平民である二人が高官用の軍学校に通うことはまずない。

 何故なら高官用の軍学校は貴族の為にあるようなものだからだ。

 余程の大物の推薦状か、戦で活躍して出世しない限り高官用の軍学校には入れない。

 そして、マルコとイリスは私が推薦状を書いた為、入学できる。

 ここでマルコとイリスには、この世界での戦術を学ばせつつ、私がこの世界では新しい戦術を叩き込んで、秀才と天才の軍師になってもらう。

 二人は貴族の嫌がらせにも負けず、どんどん知識を得ていく。


 マルコの家は中々大きい商人の家なのだが、三男の為軍人の道を選んだらしい。戦術の基本が出来ていたのは、裕福な為戦術学の本を読み漁っていたらしい。

 イリスは貧しい農家の生まれらしいが、下に妹が二人いて、養う為に入れば給料がもらえる軍学校に入ったらしい。

 

 高官用の軍学校は一年間で卒業だ。

 わたしは百八回の転生の間に死ぬ程戦術学を学んだので二人にその知識を授ける。

 そして一年が経つ頃には、二人は軍師として他を圧倒する程の才を身につけ、晴れて高官用の軍学校を好成績で卒業した。

 私はというともちろん首席で卒業した。


読んで頂きありがとうございました。

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