十六話
私は四つの町を作る資金は手に入った為、四つの町の開拓は部下や私の領地に住みたいとやって来た大勢の民衆に任せる事にして、五年前にアクセル家が所有する山の中に作った鍛治場にテレポーテションで向かう。
作るのは剣ではない。
装着するだけで使用者の機動力、攻撃力を三倍程に上げ、防御力は私の防御魔法を付与した魔導石を胸の中心に埋め込んだ為、今までの兵士の防御力の十倍と言ってもいい、パワードスーツを作る。兜はフルマスクのヘルメット状にし、中に小型の通信機を埋め込む。
更に背面にスラスターを作る事によって通常の飛行魔法よりも速く空を飛べるようにする。
正直言って二年の期間で出来るか不安だが、やるしかない。
その間の部下達は書類地獄と戦う子供になるだろうが、未来の国の為と頑張ってもらおう。べ、別に書類仕事に嫌気が指したとかそういうのではない。大事な事なので二回言わせてもらう。嫌気が指したわけではない。
一年半かけてようやく完成したパワードスーツは百人分量産した。
早速携帯電話で国王陛下に連絡する。
「お久しぶりです叔父上。新兵器が完成したので今からお見せに行ってもよろしいでしょうか?」
「うむ、今は私室に一人でいるのでかまわない。すぐに来るといい」
「了解しました、テレポーテション!」
叔父上の私室に着くなり、抱き締められる。
「この~心配させおって。一年半の間、私がどれ程寂しかったかわかるかい!?」
「わかりましたから放して下さい、苦しいです」
「おっと、すまない。それで自分の本来の仕事を部下に丸投げしてまで作った新兵器というのはどれだい?」
嫌味が凄い。ほったらかしにしていたのが嫌だったのか大の大人が拗ねている。いい年したオッサンの拗ねてますアピールは無視し、早速アイテム袋からパワードスーツを取り出して叔父上に手渡す。
「ほう、これが新兵器か。鎧にしては薄い装甲だが大丈夫なのか?」
「それを今から修練場にてお見せします」
修練場に叔父上と一緒に向かうとそこではバーナード·シュナイダー元帥が兵士達の訓練に付き合っていた。
「これは陛下にフューリ殿ではないか。久しぶりに一緒に訓練しに来たのかフューリ殿」
彼――バーナード·シュナイダーは四大名家のシュナイダー公爵家の当主にして、軍でも三人しか居ない(私を含めて)元帥だ。そしてお父様の親友でもある。
「いいえ、今回は新兵器の試験運用をする為にここへ来たのです。もしよかったら手伝って頂けませんか?」
「フューリ殿の頼みを断るわけないだろ。で、何をすればいい?」
「今訓練している中で、シュナイダー元帥を除いた一番強い方と一番弱い方に真剣勝負をして頂きたいのです」
「それはどういう意図があるんだ?」
「戦って頂ければわかります」
「……まぁ、フューリ殿の頼みだ。ガゼルとリーファ来い」
二人ともシュナイダー元帥な呼ばれ前に出てくるが、リーファの顔が青白くなり震えている。
「シュナイダー元帥、どうして彼女はあんなに怯えているのですか?」
「そりゃあ、ガゼルはうちの軍の第一大隊長でな、俺の所のNo.2だ。かたやリーファは先週入隊したばかりの新人二等兵だ。怯えるのもしょうがないだろ」
私はリーファ二等兵に近づくとパワードスーツを渡す。
「これを着て戦うんですか!? 正直重くてまともに戦えないた思うのですが!?」
「騙されたと思って着て戦って下さい」
リーファは震えながらパワードスーツに着替えに更衣室へと行く。
◆◆◆
な、何でこんなことにぃぃ!?
私は病気の母や妹の為に一番手っ取り早くお金が手に入る兵士になっただけ。
国王陛下やシュナイダー元帥、そしてあの英雄のフューリ·アクセル元帥の目の前でガゼル大隊長と戦うなんて無理ぃぃ。
フューリ元帥にパワードスーツっていう重くはないが軽くもない鎧を渡された。
こんなので戦ったらまともに動けないと思いながら着る。
案の定重い。と思っていたらフルマスクのヘルメットから『魔力を流してみて』と言われる。
流してみると先程までの重量感がなくなり、まるで何も着ていないかのように重さを感じさせない。
でも軽くなった所であのガゼル大隊長に勝てるわけないと思いながらガゼル大隊長と対峙する。
「元帥閣下の命令だからな。すまないが本気で戦わせてもらう」
早速ガゼル大隊長が攻めてきた。攻めてきたんだけどあれ~ガゼル大隊長の動きってこんなに遅かったけと思いながら攻撃を避ける。
ガゼル大隊長が驚きの顔をしている。無理もない私だって何がなんだか分からないのだから。その後も回避できる攻撃ばかりで余りにも隙があったので横っ腹に一撃放つと流石ガゼル大隊長反応して横腹に剣を構えている。これは防がれるなぁと思っていると剣ごとぶっ飛び壁に激突するガゼル大隊長。
まだ戦おうと立とうとするガゼル大隊長だったけど、フューリ元帥閣下から「「そこまで!」と言われたので戦いは終わったけどあのパワードスーツは何だったのだろう。
◆◆◆
戦いを見終わった後最初に口を開いたのは叔父上だった。
「凄まじいなあのパワードスーツは。装着者の能力を飛躍的上げるのか」
「ええ、魔力を流す事によって装着者の身体能力を約三倍程にあげ、防御力では通常の兵士達の十倍程の強度を持っています。さらに飛行魔法も通常の三倍の速度で飛行できます」
シュナイダー元帥は頭を掻き、驚きの表情を隠せていない。
「……それで今パワードスーツは何着あるんだフューリ殿?」
「百着程用意はしております」
「売ってくれ! 金はいくらでも出す」
「申し訳ありませんがまずは私の部下達に装着させますわ。そして、現在オズワルド帝国がてこずっているフィンデル教皇国をこのパワードスーツを使って撃退しようと考えておりまして、医科がでしょうか国王陛下?」
「後にパワードスーツはマーダー王国に出回るのか?」
「いえ、あくまでも自分の軍と陛下の近衛隊にだけ配るつもりです」
「そりゃあないぜフューリ殿。うちには回してくれないのか?」
「私一人で作っているので時間がかかるんです。わたしの軍と陛下の近衛隊に回ったら、シュナイダー元帥の所にも回しますので申し訳ありませんが、少しお待ちを」
「そういうことなら我慢するが、新兵器をいきなりフィンデル教皇国にぶつけて大丈夫なのか?」
「ええ、さっきの勝負のおかげで勝てると確信しましたので、さっそくオズワルド帝国皇帝陛下にお伝えしなければなりませんね」
オズワルド帝国の皇帝ユウマに話したところ喜んで帝国の北の砦に入るための手紙を書いてくれる。
「北の砦は、うちの最強重剣グラム·ペイルがいる。北の砦はグラム一人でもっているようなものだ。どうかグラムの力になって欲しい」と書き上げた手紙を私に渡しながら訴えかける。
「ああ、了解した。必ずやグラム·ペイル殿の力となり北の連中を追い返してやるさ!」
オズワルド帝国の北部は雪と風が激しいので飛行船での移動は断念し、その代わり魔導キャンピングカーと魔導車でパワードスーツを装着させた百名の部下と、ルートとサーシャを連れて行ってる最中に絶品な食材と言われているSランクモンスター冬竜を撃破し、皆で軽く肉パーティーをした。
雪と風のせいで少し遅れたが、帝国の北の砦メサイアに到着し、門番にユウマからもらった手紙を渡す。
すぐに中に通され砦の中に入る。砦の中心地に立派な天幕が張られており、門番が先に入り数分後、門番が中にはいっていいと言ったので入室すると、そこには、右目に眼帯をした偉丈夫が座っていた。
「手紙を読ませて頂いた。グラム·ペイルと申します。今回のそちらの武力に期待させて頂く」
「マーダー王国のフューリ·アクセルです。あなたの凄さは聞いています。あなたと一緒に戦えて光栄ですわ」
「それはこちらのセリフだ、マーダー王国の英雄と戦えるのは素直に嬉しい。よろしく頼む」
握手をし、軽い宴があった後、天幕から出て空を見る。
寒いのもあってか天の川が見える。
もしかしたらオーロラも見えるかも知れないなと思いながら用意されたテントに入り、明日からの戦争の事を考えながら就寝した。
読んで頂きありがとうございました。




