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第十四話

 

 内通者か。正直推理とか苦手なのだがしょうがない。

 城の見回りはヤマト王から許可を頂いている。

 城のあらゆる人物に話を聞いていく。

 その中で内通者候補は三人に絞られた。

 一人はヤマト王の弟のサトル·ヤマト。

 裏で本当の国王は俺だと吹聴しているらしい。

 二人目は宰相のゲンジ·ミツナカ。

 宰相という立場を利用して色々と汚い事をやっているらしい。

 三人目は財務大臣のオブラ·ミヤナギ。

 財務大臣の立場を利用して国の金に手をつけているらしい。

 最初は料理に毒物を入れられる料理人か、料理を運ぶ者を怪しんだが、毒物を入れたと思われる女中が遺体で見つかったらしい。

 恐らく口封じで殺されたのだろう。

 差し向けられている暗殺者も自害か殺されている所からしてヤマト国でも相当の権力を持っていて、現ヤマト国王を殺したい理由を持つのは、この三人ぐらい。

 この三人は黒い噂が絶えなかったし、この中の誰かが黒幕なのは間違いない。

 でも探偵ごっこにも飽きたのでこの怪しい三人に見えない魔力糸をつけ、内通してる現場を無理矢理抑えるやり方に変える事にする。

 すると、深夜に三人とも移動し始めた。

 三人が移動した場所は全く同じのスラム街のある建物の中。

 まさか三人とも黒幕だったとは、意外だったが、横にいるヤマト国王は意外でもなかったらしく、顔色一つ変えていない。


「恐らく現場には、フィンデル教皇国の者が居る可能性がありますが、陛下も着いてこられますか?」


 ヤマト国王はすぐに縦に首を振り、現場に着いてくるのが決定。

 敵に気取られるのはまずいので、現場に向かうのは、少人数でとお願いし、現場に向かうのは、私とアンリとターナ、アルベルにヤマト国王と、国王直属の近衛隊隊長と副隊長になった。


 気配を消す魔法を全員にかけ、さっそくスラム街の建物に向かう。

 普段の夜のスラム街は色々と危険らしいが、気配を消す魔法が効いている為、なんなく建物の入り口前につく。

 建物の入り口には門番が二人いたがアルベルの闇魔法で中の者達にバレる事なく簡単に始末できた。

 中の様子を確かめる為、ドアに耳を近づけると、ヤマト国王の次の暗殺の仕方について話していたのでドアを蹴り破って中に突入。

 突然の侵入に驚くヤマト側の三人と、涼しげな顔でこちらを見ているフィンデル教皇国の聖騎士団の格好をした十名。


「おやおや、あれほど尾行には気をつけるように言ったのにつけられていたみたいですよ、お三方」


 侵入してきた中にヤマト国王を見つけた三人は、あたふたしているが、聖騎士団の中で一番偉そうな男は、「せっかく殺したい人物が来てくれたのです。ここで死んでもらいましょう」とこちらに殺気をぶつけてくる。

 中々強いみたいだ。恐らく騎士団の団長なのだろう。SSランクの冒険者ぐらいの実力は持っているみたいだし、他の聖騎士団の連中もAランク以上の強さを持っているみたいだ。

 これは試金石として申し分ない。

「アルベル·ビーツ。ここの敵はあなた一人で倒しなさい」


「了解した」


 そういうと腰の双刀を抜き、闇魔法で影剣を無数に生み出し、敵に特攻する。

 

「無茶だ。彼の強さは知っているが、聖騎士団長は化け物揃いで聖騎士団の騎士達も一人一人が強者だ。いかに彼が剣鬼と恐れられている冒険者でも一人でなんて」

 ヤマト国王が心配の声をあげるが、この程度の強者達に負ける程度なら私は彼を家来になんかしない。

 出会った時から強かった彼が半年でどれ程強くなったか見ものだ。


「彼はいずれ私の左腕になってもらう存在。この程度の敵に勝ってもらわねば困りますわ」


 アルベルは他の聖騎士達を影剣で圧倒し、聖騎士団長とは直接ぶつかり合っていた。


「おいおい、ヤマト国にこんな化け物が居るなんて聞いてないぞ!」

 

 アルベルは影剣を自由自在に動かし、踊るように聖騎士団長に剣撃を浴びせる。


アンリが「綺麗といい」、ターナはアルベルの魔剣士の才能に見惚れている。


 戦っているうちに団長以外の聖騎士は影のロープで縛られており、団長の方も汗をかき、息も絶え絶え状態になっていた。


「これは退散した方が良さそうだ。僕は青の聖騎士団団長――サザンカ·フリーズ。君の名は?」


「アルベル·ビーツ。フューリ·アクセルの剣だ」


「アルベル·ビーツね。覚えておくよじゃあね!!」

 魔法で霧を生み出し、晴れた時には、捕縛していた筈の聖騎士達も消えていた。残されていたのはヤマト国側の三人だけだった。

 そのあと、愚かな事に誤解だと口にする内通者の三人組は捕縛され、近衛隊長と副隊長に連れていかれた。

 

 聖騎士団もとりあえずは東大陸から撤退したらしいし、ひとまず安心だ。

 問題も片付き、ヤマト国とマーダー王国は同盟関係になる事になった。これで味噌や醤油などが流通されるのかと思うとわくわくが止まらない。

 アルベルはまだしばらくヤマト国で冒険者をするみたいなので三年後に会いに来るように伝える。

 それと西大陸のシュライバン共和国と同じように魔導銃や魔導ライフル、魔導通信機を売り込む。


「今回は大変世話になった。今回の件で芋づる式に不正を働いていた者達が出てきた。これで貴殿から買った兵器でフィンデル教皇国の侵略を阻む事も出来そうだ。改めて礼を言う。ありがとう」

 

「いえいえ、これは自国の為でもありますので頭を上げて下さい」

 他国の一貴族に頭を下げる王。この王は尊敬できる。

 そう思いながらヤマト王と握手をし、馬車に乗り込む。

 さぁてやっと自国に帰れる。一度行った場所はテレポーテンション出来るのだがせっかくだし、ゆっくりと馬車と船で帰る事にした。

 

 マーダー王国に戻るとまず国王陛下の元に行き、西大陸と東大陸の現状を報告する。


「やはり、北の侵略はどちらの大陸でも行われていたか。しかしシュライバン共和国とヤマト国と同盟関係になれたのは大きい。

これでフィンデル教皇国も下手に手を出せなくなっただろう。今回の件でまたフューリの功績を派手に民衆に伝えねばな」


「ええ、それはどうでもいいのですが、そろそろ抱きつくの止めてくれませんか叔父様」


「可愛い姪が無事に戻ってきたんだ! これくらいいいじゃないか!」


 三十分抱きつかれてやっと解放された。

 次に向かうのは、実家であるアクセル公爵家。

 シュライバン共和国のクレイ氏の家族団らんな所を見て、久しぶりに帰りたくなったので帰ってきたのだが、お父様に帰るなり熱い抱擁されてしまった。避けようと思えば避けれたが、心配をかけたと思うし、黙って抱かれていると弟のマクスわ抱いたお母様が近付いてくる。

「お帰りなさいフューリ。無事で何よりだわ」


「ええ、心配かけてごめんなさい」


 私は一つ勘違いをしていた。どんなにチートな九才でも両親にとってはただの九才の我が子なのだ。

 余程心配してくれていたのだろう。お母様は涙目で、お父様は号泣していた。反省せねば。

 実家には三日間滞在し、ここでアンリとターナと別れ、ウォーロック要塞に戻ると、総司令官室で書類の山と格闘している副官のリッサ少尉と副官補佐のアンヘルが涙目で近付いてくる。


「「やっと帰って来てくれました~」」


 相当書類仕事が地獄だったのだろう。二人には二日程休日をやり、この残りの地獄は私が引き受けよう。


 相当な地獄だ。判を押しても押しても減らない。おかげで右手が軽い腱鞘炎になっている。徹夜をし、朝になったので朝食を食べに食堂に行くと、持ち帰ってきた醤油や味噌がさっそく料理に使われていて眠気が吹き飛んだ。

 もちろん自分も嬉しいが、皆も喜んで食べているみたいで良かった。黙々と食べていると、ルートとサーシャが木札を持って近付いてくる。


「おはようフューリ、お帰りなさい」「フューリ様お帰りなさいですわ」


「おはようございますですわルート、サーシャさん。そしてただいまですわ」


「帰ってきてそうそうに大変みたいだね。すごい隈ができてるよ」


「ええ、書類仕事がなかなか終わらなくて徹夜ですわ」


「それは大変だねぇ」

 

「もしよろしければお手伝いしましょうかフューリ様?」


「本当に? 手伝ってくれるならありがたいですけどよろしいのですか?」


「まぁ、ボクら魔導師は戦う以外は訓練しか仕事がないからね。貸し一つだよフューリ」


「ルートまで!? ありがとう助かりますわ」


 朝食を食べた後、二人が手伝ってくれたおかげでなんとか二徹は回避できた。

 書類仕事は終わったし、明日は城に行って報奨を民衆の前でもらわなくてはいけない。

 疲れたしもう寝よう。



 マーダー王国王都の大広間にて民衆が熱い視線を送る中、私の今回のシュライバン共和国とヤマト国との同盟という大きな功績に対する報奨が発表される。


「フューリ·アクセルよ今回の同盟の件、誠に大義であった。そなたの働きに報いる為、爵位を侯爵とし、軍の階級を元帥とする!」


 民衆からざわめきが起きる。

 当たり前だ階級なんて一つずつ昇格するのが、普通なのに一つ飛ばしどころか二つ飛ばしで最高位の元帥に昇格だと!?

 ただでさえスピード出世しまくりなのに元帥になってしまったらいらぬ敵を作りそうで嫌なのに、民衆の手前断る事など出来るわけもなく、この日最年少の元帥が誕生した。


読んで頂きありがとうございました。

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