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第十三話


 フューリ姫と別れてからの僕は西大陸を中心に冒険をし、二年が経った今僕はブランタニア国に居る。

 ブランタニアに入国したのはSSランクになった一年前にブランタニアの闘技場で武闘大会が開催されると聞いたからだ。

 その武闘大会で優勝し、ブランタニアでは知らない者はいない程の剣士になってしまった。そのお陰で北のフィンデル教皇国との戦争に駆り出されてしまった。今のブランタニアは厳戒体制が敷かれており、入国はもちろん、外に出る事さえ出来ない状態。

 ギルドからも要請があった為仕方なく戦争に参加する事になった。

 とりあえず、敵はまだ上陸していないけど、それも時間の問題だ。

 だからこそ海上戦で追い返さないといけない。

さっそく身体強化の魔法をかけ、海上戦の行われている敵の船に降り立つ。敵はAランク以上だし、連携もとれていて手強そうだが所詮Aランクだ。SSランクの僕には雑魚でしかない。

 しかし、一人だけ僕に匹敵する人物がいた。


「よくも部下達を痛めつけてくれたな! フィンデル教皇国赤の聖騎士団団長であるこのナーバが相手をしよう!」


 そういうとあっという間に距離を縮ませ、剣を振ってくるナーバ。

 縮地という技だ。後方への縮地も出来るのか翻弄してくるが、多くの剣聖を輩出してきたマスケインの者が縮地が出来ない訳がなく、こちらも縮地を仕返す。

 ナーバは相手が縮地が出来ないと油断していたので僕の剣撃をまともにくらい吹き飛び壁に激突する。


「ぐはっ! てめぇ、縮地が出来るからって調子に乗るなよガキがっ!! なぜ赤の聖騎士団と呼ばれているか教えてやるよ! エンチャントフレイムソード! さらにフレイムブーストで機動力もあげさせてもらった。さっきの縮地と一緒だと思うなよ!!」


 確かに先程よりも圧倒的に早い。しかも剣が放つ炎に当たれば黒焦げになること間違いないだろう。

 まぁ、当たればだけど。


「なぜだっ!? なぜ当たらねぇ! スピードは完全にこっちの方が速いのに!」

 

 いかに早かろうと、そんなに殺気を出していればあなたの攻撃なんて余裕でかわせますよ。それに殺気を出してくれてるから攻撃も当てやすいですしね!」

 僕の剣撃がまたもナーバにヒットする。避けては当てるの繰り返しでナーバはボロボロになる。


「くそっ! ブランタニアにこんな化け物がいるなんて聞いてないぞ。ちっ今回は負けを認めてやるよ」というと、ナーバは飛行魔法で上空に上がり、巨大な炎の塊を作る。


「生き残りが捕虜になったり船を奪われるのは嫌なんでね。燃やしていくわ。燃やし尽くせコロナボール」


 そういうと、巨大な炎の塊がフィンデル教皇国の船目掛けて放たれる。

 しかし、僕の渾身の一線がコロナボールを二つに斬り、二つに別れたコロナボールは船を避けて海に落ちる。次の瞬間大量の水蒸気が発生し、周囲が霧状になる。

 霧が晴れる頃にはナーバの姿は見当たらなかった。


「ちっ、クズが、次に会った時は必ず仕留める」


 僕は味方を殺そうとしたナーバに怒りながらも、船に残されたフィンデル教皇国の兵士達を縄で縛りあげていく。



 ブランタニアの首都マロニエのギルドに向かった僕はブランタニアの国王トール三世に呼ばれてると聞き、ブランタニア城の謁見の間にて現在片膝をつき頭を下げている。


「顔を上げよ」

 

 トール三世の言葉を聞き、顔をあげる。

 

「此度の戦での活躍聞いておる。他国の人間なのによくぞ戦ってくれた、礼をいう」


「僕にはもったいなき言葉です」  


「謙虚だな。今回の戦でお主がいなければ被害は甚大だったと聞いている。褒美は何が良いか爵位や領土か?」


「私には既に主がいます。それゆえこの国の貴族になる訳には行きません」


「ほう、それは興味深い。余の誘いを断る程の者か?」


「すみません、しかしフューリ姫は命を賭ける価値のあるお方です!」


「お主のような人間こそ余の家来に欲しいのだが、余の国を救ってくれた英雄だ無理は言うまい。褒美は報奨金を多めにやろう」


「ありがとうございます」

 

「しかし、お主は現在マロニエのギルドを軸にして冒険者をしていると聞いておる。何故だ?」


「主と三年後までにSSSランクの冒険者になって再会すると約束してますので、魔物が多いブランタニアはSSSランクを目指すのに適しているんです」


「なるほど、お主の主は中々無茶を言うみたいだな。それならば三年間フィンデル教皇国の聖騎士団達からこのブランタニアを守るという依頼はどうだ?もし受けてくれるのならば報奨はSSSランクの昇格だ」  


「ありがとうございます。ぜひその依頼受けさせてもらいます」

 この依頼でSSSランクに昇格してくれるなんてありがたい事だ。

 こうして僕は三年間ブランタニアに滞在する事になった。 

 待っててください姫。必ずや強くなってあなたの元に馳せ参じます。 



            ◆◆◆


 東大陸を目指して西大陸の港から出ている船に乗っている私達は現在巨大なイカ――クラーケンと戦闘していた。

 とはいっても私は戦闘に参加しておらず、護衛のアンリとターナに任せている。

 アンリもターナも伊達に私の警護をしていない。

 クラーケン程度なら簡単に倒せるだけな腕を持っている。

 よーし、今日の夕御飯はイカづくしだ。

 しかも船の船員に聞いたところ、クラーケンは大変美味らしい。

 だが傷をつけすぎると味が低下してしまう為アンリとターナは出来るだけ傷つけないように急所の目と目の間を貫くタイミングを見計らっている。

 アンリが触手の囮になっているうちに見事にターナがクラーケンを一発で仕留める。


「見事な倒し方だったわアンリ、ターナ。おかげで今日はイカづくし料理よ!」

 

 料理は私がする事にした。

 魔法で素早く捌き、クラーケンの天ぷら、クラーケンの刺身、クラーケンの煮物そしてクラーケンのイカ飯の完成だ。

 刺身は、港町にあった魚醤につけて食べる。

 もちろん醤油の方が良いのだけれど無いものはしょうがない。

 魚醤でも十分美味しいし、すべての料理が普通のイカよりも美味しい。

 アンリやターナだけじゃなく船員や他の乗客も夢中でイカ料理を食べている。

 東大陸まで時間があったのでアンリとターナを鍛えたり、魚釣りをしながら時間を潰し、ついに東大陸に着いたが、見た感じ江戸時代の日本という感じだ。

 東大陸はヤマト国が統一しているらしい。ここまで乗っけてくれた船員達に礼を言い、ヤマト国の首都であるエノトまでは馬車で二日の距離らしい。

 昔の日本という感じからして多分私が欲しい物が沢山あるに違いない。

 だがまずはこの国のトップに話を聞きに行かねばならない。

 そう言いながらも馬車に乗っていた二日の間甘味や醤油や味噌を使った料理を堪能しながらエノトまで向かった。

 エノトに着くとさっそく城に向かう。

 門番にマーダー王国から国王陛下の密書をヤマト王に届けに来たと言ったらあっさり城の中に通され、ヤマト王が居るという部屋に入ると、見るからに殿様的な人物とその隣に見覚えのある顔がいた。


「何でアルベルがここに居ますの!?」

   

「ギルドからの依頼でヤマト王の警護をしているんです」


「ほう、そなたらは知り合いか!」


「殿、彼女が話していた俺の主です」


「ほうそなたが見た目は幼女だが、中身は化け物のフューリ·アクセルか! ずっと会ってみたいと思っておったのだ」

 

 アルベルを睨む。誰が化け物だ。


「そう思ってもらって光栄ですわ。ですがその前に我が国王陛下からの密書をご覧ください」


 密書を渡し、ヤマト王が密書に集中しているうちにアルベルに文句を言う。


「誰が化け物ですって?」


「真実じゃないですか俺より強い人に会った事なかったんで化け物呼ばわりされていた俺よりも強いなら化け物でしょ」


「……アンリ、ターナこいつの意見どう思われます?」


 二人に話を振ったところ目を逸らされた。

 皆が化け物だと思っていたなんて軽くショックだわ。

 落ち込んでいると、密書を読み終わったヤマト王が笑いながら「別に悪口で言っておった訳じゃないぞ。何せ弟と自分の命な恩人だと話しておったからな」と告げる。


 アルベルに顔を向けると顔を赤くさせ顔を背ける。

 何だ可愛い所あるじゃないか。


「密書を見せてもらった。お主達の予想通り北大陸の侵略はここヤマトでも起きておる。その関係でアルベルには私の護衛を頼んでいるのだ。実はここ最近暗殺者が頻繁に現れておっての。食事にも毒が仕込まれていたりしているのだ。それが、ちょうどフィンデル教皇国が北から責めて来たと同時に始まっての」


「それってつまり城の中にフィンデル教皇国と繋がっている者が居るってことですか?」


「私はそう思っておる。そこでフューリ少将に繋がっている内通者を見つけて欲しいのだが頼めるか?」


 正直推理ものは苦手なのだが、ヤマト王に借りを作るチャンスだし、いっちょやりますか!


「お任せください必ずや内通者を捕らえて見せましょう」


読んで頂きありがとうございました。

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