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第十二話


 現在民衆の前で戦功を評価されている。


「フューリ·アクセル子爵前へ。この度の戦の勝利と帝国との同盟関係を作った功績に対して、軍の階級を少将とし、爵位も伯爵とする。更に今回の戦で手に入れた土地を貴殿の領地とすることを許可し、今回の働きに見合った報奨金を授ける」


「ありがたき幸せ、慎んで拝領致します」


 民衆達は大歓声で喜んでくれる。

 今や町を歩くだけで声をかけられる様になった。   

 正直面倒臭いが、皆善意で声をかけてくれているのでしょうがない。英雄の道を進むのを決めたのは私なのだから。

 そうそう、もらった領地はさっそく魔法で家を建てたり、土を耕して農業が出来る環境を作ったりしている。

 まだ村レベルだが、人は結構集まって来ている。

 これも英雄効果かもしれない。

 後は孤児院を建てた。

 昔から寄付はしていたが、やはり未だに孤児はどこにでもいる。

 戦争だけじゃなく、魔物の被害もあるので、孤児は必ず出てくる。

 偽善にしか見えなくても私はやる。最後の転生ライフは好き勝手に生きると決めたからこの村は、真面目に生きている人達が得をする村にする。

 そしていずれは優しさで溢れた国をここに創る。

 その為にはもっと功績が必要だ。

 そう言えばオズワルド帝国の皇帝が西大陸と東の大陸もフィンデル教皇国の攻撃を受けていると言っていたな。

 もう帝国と戦う事はないので、書類仕事は部下に任せてまずは西大陸に行ってみる。

 まずはマーダー王国と友好な関係の国――シュライバン共和国を目指そう。流石に子供一人の旅は何かと不便だから護衛をアンリとターナに頼んだら喜んでついてきてくれた。

 まずはマーダー王国の港町から船に乗って西大陸で一番近くにある港町へと向かっていたのだが、海賊船とバッタリ遭遇。

 敵が何かする前に海賊船に乗り込み全員をバインドの魔法で縛る。前にもこんな事あったなぁと思いながら海賊船を元々乗っていた船に牽引してもらう。

 西大陸の港町に着いたら海賊と海賊船を町の警備兵に引き渡すと賞金首だったらしく、思わぬ収入を得た。

 シュライバン共和国の首都ラライヤはこの港町から馬車で三日かかるらしい。

 まぁ、急ぎな旅でもないし、ゆっくりと旅を満喫しよう。

  

 


 なぜこう何度も盗賊に引っ掛かるのかそういう呪いでもかかっているのか三日間の間に二つの盗賊団に絡まれ捕縛し、魔法で引きずっている。その数六十名。

 シュライバン共和国の首都ラライヤの門に着くと、盗賊の受け渡しをする。

 あまりの盗賊の多さに人の目を引き付ける。

「私は門番長のアレク·ノースと申します。この者達はシュライバンでも有名な二つの盗賊団です。捕縛してくれた事を感謝します。それでさぞ名のある方とお見受けしますが、あなた様は?」

 対応してくれた門番長は人間が出来ているらしく、見た目八歳の少女を前にしてこの対応は素晴らしい。


「これは失礼しましたわ。中央大陸のマーダー王国から参りました、フューリ·アクセルと申します。実は確認したい事があって大統領のクレイ·エンメル氏にお会いしたいのですが、。マーダー王国国王陛下の密書も預かっております」


「アクセル家と言えばマーダー王国の四大貴族の一柱ですな。それにマーダー国国王陛下の密書をお持ちと言うことですね。すぐに面会出来るように致しますので私の後に付いてきてもらえますか?」

 アクセル家の名前を聞いても顔色を変えず、王の密書があると言えば迅速に対応するこの門番長欲しい。

 門番長に馬車を引いてもらい、首都ラライヤの真ん中にある豪奢な白い建物の敷地内に入っていく。

 馬車を降り、白い建物の中の応接室に通される。

 数分待っているとコンコンとノックの音がして、「失礼するよ」と言いながら黒人の男性が入ってきた。


「待たせて申し訳ない。シュライバン共和国の大統領をしているクレイ·エンメルだ。遠路はるばる大変だっただろう?」


「いえ、初めての長旅でわくわくが止まりませんでしたわ。マーダー王国から来たフューリ·アクセルと申します。クレイ氏に会えて光栄ですわ」


「こちらこそマーダー王国の英雄フューリ·アクセル少将に出会えて光栄だよ」

  

 どうやらこちらの情報は把握しているらしい。

 お互いに握手をし、さっそく国王陛下からの密書をクレイ氏に渡す。

 手渡された密書を黙々と読むクレイ氏。


「……やはり中央大陸にも北の魔の手が伸びていたか。この密書には可能な限りの現在の西大陸の情報をフューリ少将に伝えるようにと書かれている。まず始めに西大陸が二つの国で割れてるのは知ってるだろう?」


「はい、西大陸の北側を領土にしているブランタニア国と南側を領土にしているここシュライバン共和国ですね?」

 

「ああ、そうだ。そして現在ブランタニア国がフィンデル教皇国と戦争をしている。今の所海上での戦いで止まっているみたいだが、いつ大陸に上陸してくるかわからん状態だ。何せフィンデル教皇国の戦力は一つの聖騎士団だけなのだからな。知っているだろう? フィンデル教皇国の七つの聖騎士団団長は冒険者で言うとSランク以上の化け物揃い。さらに聖騎士団に所属している百名がAランク以上の猛者ばかりなのだから、いくら少なくても一人の質が違い過ぎて上陸される可能性は高い」


「シュライバン共和国は力添えはしないのですか?」


「ブランタニアが滅べば次はシュライバン共和国が狙われるだろうからね、当然ブランタニアに協力の話は持ちかけたさ。だけど、昔から仲が悪かった二つの国が外敵が出来たからと言ってそう簡単に協力出来るわけもなく断られたよ」


「それではシュライバン共和国はこれからどうするのですか?」


「未来の侵略に備えて戦の準備をするしかないと言うのが答えだよ」

 眉間にしわを寄せる大統領。打つ手がないんだろうなぁ。

 そこでクレイ氏に帝国との戦争で大活躍した魔導銃と魔導ライフルに魔導通信機を買わないか持ちかける。

 

「いいのか? そんな強力な魔導具を他国に売って」


「中央大陸ではもう流通し始めてますし、あくまでも売るだけで作り方は教えません。それに友好国であるシュライバン共和国が滅ぼされては困りますもの」


「正直ありがたい話だ。この魔導銃や魔導ライフルも強力な兵器だが、この魔導通信機は時代を変える程の兵器となる」


 やはり大統領なだけあって情報の伝達の早さと正確さがいかに重要かわかっている。


 アイテム袋から数百もの魔導銃や魔導ライフル、魔導通信機を取り出し、案内されたシュライバン共和国の武器庫に置く。

 足りなければ私に魔導通信機でご連絡頂ければ持って来ますので今回はこれだけでよろしいでしょうか?」


「ああ、十分だ。さっそく明日からの軍の訓練に導入しなければならないな!」


 先程までは侵略される恐怖で表情が暗かったが今は対抗出来る可能性が出来て顔色が良くなった。


「いやぁ、今日は本当にありがとう。今夜はラライヤで一泊するのだろう? ならぜひ我が家へ来ないか? 妻の料理は格別だよ」

 

 ここは親密になっていた方がいいだろう。


「それではお言葉に甘えさせて頂きますわ」


 クレイ氏には奥さんと二人の娘さんがいて久しぶりに家族団らんな暖かい食事を食べた気がする。

 最近仕事ばかりで実家には帰っていないし、近々帰るのも良いかもしれない。

 

 翌日になり、ブランタニア国にも訪問しようとした私だったが、クレイ氏によると今のブランタニアは厳戒体制状態の為、入国事態が厳しく、他国の人間が入るのは無理だろうとの事。

 とりあえずは西大陸の現状も理解出来たし、クレイ氏という太いパイプも作れた。兵器も沢山売れたし、結果は上々。

 次は東大陸に向かおうと馬車に乗り、七才の時にリヒャルト·マスケインと別れる際に彼は西大陸に向かうと言っていたことを思い出す。私も九才となり、約束の日まであと三年。元気にやっているのだろうかと思いながら馬車の中で眠りに落ちる。


読んで頂きありがとうございました。

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