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第十一話


 嫌われていると思っていたサーシャ·バルスト嬢が快く副団長の任についてくれたのでまた目標に一歩前進だ。 

 オズワルド帝国は、また攻めてくるだろう。

 四つの連合国側ではなく、マーダー王国を。

 以前のような規模ではなく、本腰を入れて攻めてくるだろう。

 その時こそ私の目標が大きく進むのだから楽しみで仕方ない。



            ◆◆◆


――オズワルド帝国拝謁の間にて。


 オズワルド帝国皇帝――ユウマ·オズワルドは憤慨していた。


「三万もの兵が壊滅状態で十二神将の一人であったガルボが一撃でやられただとっ!?」


 皇帝陛下のあまりの剣幕にボロボロの状態で帰ってきた数名の兵士は体を震わせる。

 今にも兵士達を殺しそうな勢いの皇帝を横に控えていた長い黒髪の美女、賢者マーリンが諌める。


「陛下、彼らは壊滅状態の中から情報を届けようと必死で戦場から脱してきた者達です。どうかその剣を収めください」


「……許せ、僕が短慮だった」


 兵士達は、滅相もないと土下座している。


「それでそのウォーロック要塞が原因で三万の兵士達やあの大槍使いのガルボがやられたのか?」


 その言葉に兵士達は震えながら首を振る。


「た、確かにウォーロック要塞は強固で、更に筒状の兵器でこちらの士気は下がっており、ガルボ将軍も「一旦立て直す」と一時撤退を指示しておりました。しかし、要塞から一人の少女が我らの陣の真ん中に飛び出してくると、兵士達が吹き飛ばされ、ガルボ将軍が突撃するもまるで紙くずの様に切り伏せられました。少女の進撃は止まらず、残ったのは私達と重傷で病院にいる数十名だけです。陛下、あれは幼女の皮を被った悪魔です!」

 

 喋っている兵士は涙目になっており、他の兵士達も戦場での出来事が余程トラウマになったのか今にも錯乱しそうになっている。


「話は理解した。無理をさせて悪かった。もう下がっていい。しっかりと養生するといい」


 皇帝の言葉に泣きながら下がって行く兵士達。

 皇帝は兵士達が居なくなると、場所を移動し、私室で帝国宰相のロックド·フランと賢者マーリンと三人で話し合いを始める。


「三万の軍勢を壊滅状態にした幼女の情報は分かったかロック?」


「はい、マーダー王国に潜伏させている者によりますと、マーダー王国の魔導学院を五歳で入学し、一週間で卒業し、その後冒険者になり、七歳にて冒険者最高ランクSSSになり、現在は八歳にして、マーダー王国軍大佐にして子爵の爵位を持ったアクセル公爵家のご令嬢とのことです。兵士が言っていた筒状の兵器は魔導銃と呼ばれていて、この兵器の他にも魔導通信機という離れた相手との連絡が可能な魔道具を作ったのも彼女らしいですな。マーダー王国では神童や英雄と呼ばれておるようです」


 自分の顎ひげを片手で触りながら説明するロックド宰相。


「とんだチート野郎だな。そいつは間違いなく転生者だな」

 

「陛下と同じということですね」

 マーリンが重要な部分を指摘する。


 「ああ、しかも中々の切れ者らしい。銃や通信機なんかがあることは僕でもわかる。でも作れるかと言ったら作れない。でもそのフューリって奴は作れるだけの頭脳を持っている。これは倒すのは難しい。まだ四つの国の連合も侵略出来ていないのにこのままじゃ北の大陸を統治しているフィンデル教皇国との戦いまでに大陸を侵略するのは難しい」


「ええ、今はおとなしくしていますが、必ずこの中央大陸へと侵略しに来ます。それに対抗する為にも中央大陸の統一は重要なのですが、とんだ伏兵が居ましたね」

 

「だが、こっちには二千年を生きているエルフの賢者マーリンとその賢者に育てられたエルフとして転生して三百年以上は経つ皇帝である僕がいる。それにこっちには一人欠けてしまったけど、十二神将が居るし、剣聖もいる。なにより僕が帝国を建国してから帝国最強とも言っていい大将軍である重剣グラム·ペイルがいる。例え敵がチートでもこっちにもチートは何人もいる。だけど、フィンデル教皇国と戦う前に戦力が削れるのは痛い。今まで通りに四つの連合国と戦っても後ろからマーダー王国に攻撃されるだけ」

 皇帝が悩んでいるとマーリンが助言する。


「やはり邪魔なのはマーダー王国です。前回の大敗は油断からなるもの。今回は万全を期して十二神将を三名、それから私と陛下にも出陣してもらいます。十二神将はそれぞれ三万の兵士を持ち、陛下は近衛兵一万をお持ちです。私は兵こそ持ちませんが、この魔法の腕は役にたつかと」


 だが宰相であるロックドは皇帝が出陣するのは反対らしい。


「陛下にもしもの事があったらどうするのです! 陛下よりも重剣のグラム殿に動いてもらった方が良いのでは?」


「宰相の陛下を心配する気持ちはわかります。ですが、今北の帝国基地にいるグラム殿を動かせば、フィンデル教皇国に隙を見せる事になります。あそこにグラム殿が居るからこそフィンデル教皇国も動けないのです。それに今回の戦いは士気が下がってしまった兵士達を鼓舞する必要があるのです。それゆえに陛下に出陣してもらい兵士達の士気を上げたいのです」


「……わかりました。国の守りは残りの十二神将と剣聖殿で十分でしょう。陛下を頼みましたぞマーリン殿」


「ええ、それではマーダー王国のウォーロック要塞攻略に向かうとしましょうか陛下」


「ああ、チート野郎がどれ程の者か同じ転生者として品定めしてやるよ、フューリ·アクセル!!」




            ◆◆◆


 帝国に忍び込ませていた隠密兵から連絡がきた。

 帝国がウォーロック要塞目掛け進軍を開始。

 その数約十万。その中には賢者マーリン、皇帝であるユウマ·オズワルドも入っているらしい。

 前回の大敗が余程堪えたと見える。

 今回の戦い次第で私の計画が上手くいくかが、決定すると言ってもいい。

 マーダー王国国王陛下の私室へテレポーテションし、帝国の動きを陛下に伝える。


「今回の数は前回の三倍以上で賢者マーリンと皇帝も進軍な参加しているか。大丈夫なのかフューリ?」


 その心配は負ける事よりも単純に姪が危険じゃないかと伝わって来たので、叔父である国王陛下に抱きつく。


「叔父様の心配はありがたいです。ですが、正直私が負ける姿を想像出来ますか?」


 そう言うと国王陛下は苦笑いし、「確かに出来ないな」と呟く。

「それでは行って参りますわ」


 そういい残してウォーロック要塞に戻り、要塞内全区画に放送ようのスピーカーを置いてあるため、要塞の皆に言葉を伝える事が出来る。


『皆様、ごきげんよう。もう皆様知っているかと思いますが、帝国の軍隊がこちらに向けて進軍してますわ。ウォーロック要塞にやって来るまでおよそ三日。前回の大敗が余程堪えたのでしょう。だから今回はあの賢者マーリンと皇帝まで出てきてるそうですわ。敵の数は三倍以上。このウォーロック要塞がいかに強固か改めて知らしめるチャンスですわ。今回勝利したら報奨もさぞや多い事でしょう。そして勝利したあかつきには、三日間宴をしますので、皆様の活躍を期待してますわ!』


 放送を切ると、要塞内のいたる所から気合いの叫び声が聴こえる。

 どうやら士気を上げるのに成功したらしい。

 さぁ、始めようか戦争を!


 計算通り三日経ってようやくウォーロック要塞の近くまでやって来た帝国軍。

 要塞前に陣どられる前に一発大きいのをお見舞いしますか!!


「我はすべてを持つものなり。我はすべてを放つものなり。今こそ空が堕ちる時、我の願いに応え発動せよビッグバン!!」


 普段なら無詠唱や短縮詠唱なのだが、全属性を持ってしか発動出来ないこの究極魔法ビッグバンは流石に詠唱しないと発動出来ない。 

 だけどその分威力は絶大で、慌てて防御魔法を張ったみたいだけど、見ただけで二万程兵が減ってるのがわかる。

 よし、最初の先制パンチは上手くいったし、後は籠城戦といきますか!




            ◆◆◆


 何なんださっきのバカデカイ光の爆発は!?

 とっさにマーリンが防御魔法を張ってくれたお陰で全滅は免れたが、ふざけるな! 今の一発で我が軍の二割が消え失せた。

 しかもさっきのバカデカイ魔法でマーリンは凄く疲弊している。世界最強の魔導師の筈のマーリンがだ。

 なのにあの少女は一発魔法を発動させただけで要塞の中に戻って行った。

 今の魔法で疲弊したからか? 違う、あの顔は籠城戦を楽しもうとしている顔だ。

 転生して三百年以上経つ中でこれ程までに屈辱を味わったのは初めてだ。

 籠城戦を選んだ事を後悔させてやる。

 

 籠城戦が始まって五日目。事態は驚く程に変化がない。

 いやどちらかというと僕ら帝国兵の方が疲弊してるし、怪我人も多い。

 あちらは要塞自体に強力な防御魔法がかけられていて、疲弊から治ったマーリンの強力な魔法でも効果がなく、あちらは余裕で魔導銃や魔導ライフルなどでこちらを狙撃しまくっている。

 連れてきている十二神将の三人の内の二人が魔法の直撃をくらって大怪我をして後方のテントで治療中だ。


籠城戦が始まって十日目。こちらの疲弊が大きい。

 多目に食糧は持ってきたつもりだったが、このままじゃ持たない。

 そう思っていると、あの忌々しい少女が再び要塞から出てきた。

 完全にこちらを舐めている。

 良いだろうそっちがその気なら願ったり叶ったりだ。

 指揮を十二神将のアトラに任せ、マーリンと僕とでフューリ·アクセルを仕留める。

 

「出てきた事を後悔させてやる!」


「出来るものならばどうぞ?」


「ふざけるな、たかが人間に転生したからといって、エルフに転生してから三百年生きている僕と二千年生きているマーリンを舐めるなよ!」


「ふっ、たかが三百年しか生きていないエルフと二千年しか生きていないエルフで私をどうにか出来ると思っているのかしら?」


「なっ、まるで僕達よりも長く生きているみたいじゃないか!」


「そう言ったのに通じてないみたいね」


 喋りながら戦うも僕達二人は翻弄されている。

  

「な、なぜ殺さない? 殺そうと思えばいつでも殺せる筈!」


「それはあなたが私と同じ転生者だからよ。話せるならゆっくりと話したいし、なぜ中央大陸の統一にこだわるのか聞いてみたかったの。もしよろしければ、もうこの戦いは終わりにしましょう?」 


「ふざけるな! こっちは死者がたくさん出てるんだ! 今更後は引けない!!」


 そう言った瞬間空気が重たくなった。この経験はグラムと戦った時と似ている。体が無意識に震え始めた。

 それを見たマーリンがま「降伏しましょう」と言ってきた。

 ふざけるなと言いたかったがいつの間にか腰が抜けて地面に倒れていた。


「……わかった。降伏しよう」


 それからウォーロック要塞から治療部隊が出てきて僕らのケガを治していく。

「話はとりあえず、ユウマ陛下とマーリンさんとしたいのだけど、ここじゃ話しにくいし要塞の中でしましょうか」


 そう言って僕とマーリンを要塞の中に連れていく。

 連れてこられたのは、牢屋などではなく、応接室だった。

「前から気になってたけどなぜ統一したがるの?これ以上帝国の領土を増やしても手間がかかるだけなのに」


 こいつには話してもいいか。でもその前に。

 

「僕達より長生きしてるなんて言ってたけど、君の噂なんか聞いたのは最近だぞ?」


「正確には百八回転生してますの。転生した中で三千年エルフとして生きた事もあるし、少なくても五千年以上は生きた事になりますわね」


「百八回だって? そんなに転生してるなんて勝てないわけだ」


 もう苦笑いするしかない。マーリンも驚いてる様で口が開きっぱなしだ。


「それで何で執拗に中央大陸を統一しないといけないのかしら?」


「それは私から説明しよう。北のフィンデル教皇国は知ってるかい?」


「ええ、名前だけなら」


「そのフィンデル教皇国は北の大陸を統一したら西大陸や東大陸、そして中央大陸を統一しようと動いているの。そしてこの三つの大陸を統一したら南の大陸も統一するだろうね。でも黙って統一されるなんて嫌だろう? だから中央大陸を統一して力を大きくしようとしたのだけれど、どうやら無理の様だ」

 

「それって四つの連合国の様に私達と連合を組むのはダメなのかしら?」


「侵略しようとしたのに力を貸してくれるのか?」


「ええ、中央大陸の統一が教皇国の狙いなら遅かれ早かれマーダー王国も狙われるでしょうですしね。まぁ侵略しようとしたのだからそれ相応の賠償金は払って頂きますが」


「ああ、わかった。協力してくれるのなら賠償金ぐらい出すさ」


「後、今回戦った戦地をマーダー王国にお譲りしてもらえます?」

 

「帝国の領土と言っても何もない所だからやるのはかまわないけどそれだけで良いのか?」

 

「ええ、それだけで大丈夫です。それでは他の四つの国にも話して同盟を組みましょう」


「ああ、わかった。ありがとう」


「しかし、そのフィンデル教皇国はそんなに強いのですか?」


「七つの聖騎士団を持ち、各聖騎士団団長は、冒険者で言うとSランク以上の実力者ばかりで、聖騎士団総長はSSSランクの力の持ち主らしいし、教皇もSSSランクの魔導師で、何よりあの国には天剣がいる」

 

「天剣?」


「ああ、神から教皇国に送られた剣で使用者を天剣が決めるんだが、今の天剣ソラ·アデュミエールはうちの重剣グラムでも正直勝つのが難しいと思う程の強さだ。だからこそ大陸を統一して力をつけようと思っていたけど同盟という道もあったんだな。視野が狭かったようだ」


「正式的な同盟は各国の代表を集めてする事にしましょう」


「ああ、了解だ」 

 

 話終えると帝国軍は帝国へと戻って行った。

 こうして二回目のウォーロック要塞での戦いも勝ったし報奨金が楽しみだ。


読んで頂きありがとうございました。

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