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第九話


 見事ウォーロック要塞の難攻不落さを証明でき、機嫌良く国王陛下に会いに行く。転移したのは、国王陛下の私室。

 事前に私室に来るように通信機で言われていたので私室に転移すると、叔父上が悩ましげにこちらを見た。


「きたか。えらくド派手にやってくれたみたいじゃないか」


「ええ、ウォーロック要塞はどんな攻撃を受けても傷一つつかない難攻不落さを敵側にド派手に見せつけましたわ」


 はぁー、と溜め息をつく叔父上。


「ああ、確かにお前が作った要塞は新兵器の魔導銃、魔導ライフルに魔導通信機を含めて難攻不落だということを証明した。だがド派手にやってくれたと言ったのは、要塞の方ではなくお前が直接敵陣に乗り込んで三万の軍勢を壊滅に追い込んだ事だ。お前は頭が良いから敵を追い返すだけに留めるだろうと思っていたのに。おかげで四つの連合軍よりもマーダー王国の方が目をつけられた」


「それは申し訳ありませんわ。ですが、挟まれた帝国は動きにくくなったのは事実でしょ? しばらくは停戦状態になりそうだし、今のうちに連合国にも強くなってもらいましょ?」


「それは魔導銃や魔導ライフルに魔導通信機を四つの国々にも渡すって事か?」


「ええ、そうですわ。安くはない値段で買って頂きますが」


「あれだけの強力な兵器を他国に渡しても大丈夫なのか?研究されて製造される可能性もあるんじゃないか?」

 

「その心配はございませんわ。私以外製造できないように術式をかけてありますから」


「そうか、それならいいんだが。それと今回の戦争での三万人の軍勢を壊滅、更に難攻不落の要塞の建設、新兵器の魔導銃、魔導ライフルに連絡手段を短縮にした魔導通信機の発明。流石にこれだけの功績をあげられたら、それに見合った褒美を与えなくてはならん。それも臣下や民達の前でな。お前にはこの国の英雄になってもらう。覚悟しておけ」


「望むところですわ!」


 数日後、要塞には最低限の人間を残し、今回の戦功の叙勲式の為、現在国王陛下の前で、片膝をつく私。民や臣下の観てる中で私の功績が伝えられる。


「大儀であった。それゆえそなたには、ウォーロック要塞の総司令官並びに大佐に昇進し、爵位も子爵だ。それと我がマーダー王国の偉人にしか与えられない獅子光人章を与える」


「ありがたき幸せ」

 獅子光人章を国王陛下に右胸辺りにつけられる。

 

 その瞬間、民や臣下から拍手が送られる。

 これで今日から英雄のフューリ·アクセルの誕生だ。

 ここまでは計算通り。そしてこのあとの事も大体想像がつく。

 有名人になった途端に毎日、暗殺者が私の元にやってくるようになった。

 時には食事中に、時にはお風呂に入ってる時、一番多かったのは、寝込みを襲うのが多かったが、どれも歯応えのない奴らばかりだったので、その場で尋問した後殺した。時には尋問する前に自害する奴もいた。

 暗殺者の依頼者で一番多かったのはオズワルド帝国貴族達。次に我が国の貴族。

 別に予想していたのでショックはなかったが、そろそろ腕利きの暗殺者来ないかなと思っていると来た! それも飛びきり凄い奴が!

 今までの奴らは殺気が駄々漏れだったが、こいつは違う。

 誰にも気付かれずに要塞の中にある私の私室までやって来た。

 今も気配を殺しつつ天井に隠れている。

 別の人生で一流の暗殺者になる人生を送っていなかったら、気付かなかったかもしれない。


「大変素晴らしい気配の殺し方ですが、天井にいるのはわかっていますよ」


 こう言うと逃げると思ったが、天井から十五才程の黒髪の少年が姿を表す。


「あら、逃げないのですか?」


 まぁ、逃げようとしても逃がさないが。


「あんたに恨みはないが、あんたを殺さないといけない理由がある!」

 すると、彼の影から黒い剣の形をしたものが無数に出て彼も手に二本の刀を握っている。

 

「闇魔法に東洋の剣術ですか、楽しみですね~」

 

「……参る!」


 無数の影剣を飛ばしてくる。それを避けると、本命は彼が持つ二刀みたいだが、いつも持ち歩いてある2つの短剣で止める。

 ヤバイな。この世界で今まで戦ってきた奴らよりも強い。

 これは彼の本気が見たい。ここではお互いに本気で戦えないので外で戦う事を提案すると黙って頷いてきた。

 要塞から離れた人気のない場所で再び戦いを始める。

 月の光を浴びて至るところに影が。

 そしてその影が彼の最大の武器となる。

 先程とは比べようもない程の数の影剣が襲ってくる。

 双短剣術と防御魔法でなんとか捌くが本命の彼の二刀流が襲いかかってくるが、その攻撃は数センチの所で私が生み出した影剣で受け止められる。


「誰が影剣を使えないと言った? それに私は全属性の魔法を使える。つまり闇魔法に有効な聖属性の魔法も使える。それでもまだ戦う?」


「それでも俺はお前を殺さなければならない。でないと、でないと!!」


 ボロボロになりながらも立ち向かってくる彼。

 欲しい。この力、何よりこの折れない心が欲しい。


「何があなたをそうさせるのですか? よければ理由を教えて頂けないでしょうか?」


「……不治の病の弟がいる。でもお前を殺せばどんな病気も治せるエリクサーを貰う約束をしている。だから!」


 なるほど確かにエリクサーならどんな病気だって治せますわね。


「確かにエリクサーなら治せるでしょう。しかしあなたに依頼した貴族が本当に幻の薬草エリクサーを持っている確証はおありで?」


「……確証はない。だけど今まで弟の看病を無償でしてくれていた人だ」


「なるほど、では一度弟さんに会わせてくれないかしら。こう見えて回復魔法も得意なんですよ」


「……お前なら治せるのか?」


「見てみないと分からないですが、殺すのはその後からでもよろしいでしょう?」


「……ついてこい」


 どうやら依頼者の家は、マーダー王国内らしい。

 案内された家は財務大臣を務めるガラル·ポイ侯爵家だった。

 色々と黒い噂が絶えない奴だ。

 早速忍び込んで暗殺者の弟の病状を見る。

 結果、不治の病でもないただ毒に侵されてあるだけだった。

 すぐに回復魔法で毒素を抜き出し、体力を回復させた。

 青白かった顔も赤みがさし、もう大丈夫そうだ。

 どうもガラル侯爵が暗殺者を利用する為に毒物を弟に与えていたようだ。

 事の顛末を暗殺者に話すと、騙されていた事に怒ったのか一目散にガラル侯爵の所に行き、瞬殺。

 だがこれでは彼は今後裏の社会では生きていけないだろう。


「もしよかったら私の部下になって欲しいの。来てくれるならもちろん弟さんも一緒に。いかがかしら?」


 その言葉に暗殺者は涙を流し頷いた。


「ところであなたのお名前は?」


「アルベル·ビーツ。弟がアンヘル·ビーツ」


「へぇ、セカンドネームを持っているのね」


「俺らが住んでいた東方の国ではセカンドネームなんて当たり前だった」


「そう、そうなのね。よろしくアルベルにアンヘル」


 こうして優秀な暗殺者を手に入れた私だけど、後から叔父上に聞いたら、アルベル·ビーツは剣鬼と呼ばれる程の強さを持つ有名な暗殺者だったらしい。

 思ったより強い暗殺者が手に入ってラッキーだった。

 これでまた私の夢に一歩近づいた。

 ちなみに元気になったアンヘルには文官の才能があったらしく、総司令官である私の書類仕事を手伝ってくれている。

 これは思ったよりも夢の日は近そうだ。



読んで、ありがとうございました。

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