05 キャベツとマルバ
台風にような嵐が去って2日目。今日もいい天気だ。
「おはよう、ショウノ。」
「おはよう、お祖母ちゃん。」
朝の挨拶をお互いかわす。顔を洗って着替えたあと、海岸の岩場へとでかけた。そこにいる2〜3cm位の巻き貝を一人で黙々と集めている。
「まとまっているな。おっ、これは大きいぞ! ってヤドカリか…」
一喜一憂しながらも一キロぐらい集めて家に帰って来た。なぜ集めたかというと、夕飯で取ってきた食料の大部分を使ってしまったからである。
家に帰るとお祖母ちゃんが野菜を食べやすい大きさにカットしておいてくれた。僕はまず、昨日残った魚の身と骨を分け、みをたたいた。そして取ってきた貝を鍋に入れて煮て、アクを取ったあと、叩いた身をスプーンを使って丸め、鍋に入れさらに野菜を入れた。つみれ汁の出来上がりだ。出来立てをマジックボックスに入れ野菜サラダと果物も入れて、冒険者たちがいるダンジョンへと向かった。
みんなで朝食を食べた少しあと、みんなで手分けして食料調達へ出掛けた。朝食で野菜も魚も尽きてしまった。僕は今日は野菜調達へと向かった。ドワーフの三兄弟は手先が器用のようで昨晩の皿やスプーンなど斧一本で作ってしまった。そして、モリなんかも作っていた。それを持って数人の冒険者と一緒に海へと向かっていった。僕はお祖母ちゃんとヒゲおやじとエルフ3人と一緒に森へと入っていった。途中でお祖母ちゃんとヒゲおやじは薬草を取りに行くといって別行動になった。
森に入って数分後、目の前にサルスベリのような幹が見えた。近づいて上を見上げてみると、僕はビックリした。
「キャベツって木になるんだっけ?いや、違うよな。」
「キャベツってなんだ?これはマルバの木だぞ。知ってるだろ。」
そう言ってぼやきに反応してくれたのは、茶髪で短髪のファッサだ。
「いや、初めて見たよ。僕の知ってるキャベツ、いやマルバは土の上に直接はえているから、こんな風に木になっているのはみたことがないんだ。おどろいたよ、でも味や食感は一緒だったな。」
「所変わるとものも変わってくるもんだなあ。朝食で食べたのはマルバの蕾だよ。ほら、見えているだろ、枝のとこに付いてんのが。でも、この木、滑りやすいから取るのがムズいんだよ。」
そう言われたので触ってみる。ツルッツルだよ!それにヒゲおやじの頭並みに反射してるよ。摩擦係数0なんじゃないかな。
「確かに、これだけ滑ると取るのもむずかしいな。」
そう言うとファッサに変わって金髪ロングのリーフィードが話してきた。
「そうだよね。もう少し低いとこにあると楽なんだけどね。昨日は低いところにあったのをとったからよかったんだけどね。ファッサは、もう少し取るぞとか言って勢いよく登っていったのに足を滑らして落ちて、尻餅をついて、あっはは・・・思い出しただけでお腹いたくなるよ・・・」
この前の敬語とか話していたのは真面目モードの時のようで、今はフランクに話している。目付きの変貌ぶりが凄いな。その二人を止めに入ろうとしている金髪で短髪、眼鏡をかけているのがウォルスだ。
「ほら二人ともやめたまえ。全くいつもこんなんだからこの前みたいな連携ミスをするのだよ。すまないね、ショウノ君。バカな二人で。」
「「誰がバカだ!」」
「息ピッタリではないか。」
「ふんっ、ほら取るぞっていってもどうやるんだ?3m近く上にあるぞ。」
「それは大丈夫だよ。」
そう言って身武で柄の長い枝切りばさみを思い浮かべ、出す。
するとエルフ達が食いついてきた。
「昨日もどこからかモリとか包丁とか出していたけど、それってどうやってるの?」
「うーん、こ、これは僕たちの町の秘伝の技なんだよ。あははは…」
「すごいよな!オレにも教えてくれたら使えるようになるか?」
「いや、おそらくこれはユニークスキルの一種のようですね。おそらく、習得は不可能でしょう。」
「うーん、ウォルスが言うんだったら間違いないか。オレも使ってみたかったな。」
悔しがるファッサ、しかしすぐに切り替わった。
「まぁ、ウジウジしていても仕方がないな。よし、じゃあショウノはそのハサミで切っちゃってくれ、オレ達が落ちてくるマルバをキャッチするからさ。2.3個でいいぞ。こいつら足が早いからさ。」
そう言われたので上を見上げて切るのを選ぶ。おっ、あれは色がきれいでまん丸で美味しそうだ。
「よし、切るよ。」
「おう、いつでも来い!」
実と枝の間に刃を入れ切った。ちゃんとキャッチしたようだ。そのあと、もう2つ取った。ハサミをしまい、取ったマルバを持った。やっぱりキャベツだ。そんなことを思っていると、
「おや、美味しそうなマルバだねぇ。いいのがとれたじゃないか。」
そう言ってやって来たお祖母ちゃんと、少し涙目のヒゲおやじ。二人は薬草やほうれん草(?)などの葉物やニンジンみたいなものを取ってきている。僕たちは喋ってばっかりだったのでマルバだけだ。ごめんね、お祖母ちゃんたち。
「ショウノ君、君からいただいた分はあると思うよ。」
そう言ってヒゲおやじは薬草を渡してくれた。
ダンジョンへの帰り道、何でヒゲおやじが少しショボくれてるのかお祖母ちゃんに聞いたところなんと告白されたそうだ。治療する姿が白衣の天使に見えたらしい。実際は天使ではなく神なんだけどね。そしてお祖母ちゃんはさりげなく断ったそうだ。この短時間にこんなことがおきていたとは。
ダンジョンに着いたときには海にいっていた冒険者たちは大量だったのかほくほく顔で待っていた。そのあと、昼食を作って食べていたとき、リーフィードの元に王都からの妖精がきた(らしい)。
「どうやら、明日辺りに王都から冒険者やギルドの人たちが到着するらしい。」
そうみんなに伝えていた。これからこの島は賑やかになりそうだ。
読んでいただきありがとうございます。ストーリーを進めて早くヒロインを出したいのですがもう少し時間がかかりそうです。




