03 紅蓮の帆船
朝起きたら、雨が家に打ち付けていた。時々雷も鳴っている。昨日の予想が当たったようだ。とりあえず冒険服に着替えご飯を食べた後、ダンジョンに行こうと傘やレインコートを探す。が、見つからなかった。
「うーん。どうしたらいいかなぁ。傘さえあらばいいのにな。」
ボソッと呟いたとたん、左手に何かが流れるのを感じた。すると左手の甲に紋章が浮かび上がり、光だした。すると左手の前に光の玉が現れ形を変え始め、なんと傘の形になった。ビニール傘のようだ。
「もしかして、身武、出来ちゃった?」
まさかこんな形でできてしまうとは。まあこれで外に行ける。準備をして、雨と風の中ダンジョンに向かった。
ダンジョンに着くとそこにはロック教官とお祖母ちゃんがいた。
「おはようございます、教官。久しぶり、お祖母ちゃん。」
「おはよう、元気そうだねぇ。」
「うむ、おはよう。その傘は…ちゃんと使えているようだな。かなり早く魔力を扱えるようになったな。昨日は何をしていんだ?」
「昨日は一日中鑑定をしていました。この傘を出せたのはさっきです。」
「そうかい。鑑定も僅かだけど魔力を使うからねぇ。持ってやるとその分手先に魔力が集中するからそれで早くに出来るようになったんだよ。」
「何かが流れるのを感じたんだけどこれが魔力か。」
「そうだ。ではこれから魔力操作を教える。そうだな、まずはその傘を光の玉の形に戻すことをしてみるとするか。頭の中でさっき見た光の玉を思い浮かべてみろ。」
「わかりました。」
そう言って思い浮かべてみる。すると傘は徐々に形を変え、光の玉の形に戻っていく。
「ちゃんとできてるじゃないか。では両手剣を思い浮かべてみろ。こいつはちょっと変形に多めの魔力を使うから難しめだぞ。」
頭の中で両手剣を思い浮かべる。すると、徐々に形を変え剣の形になるが、形が崩れ始め結局スコップのようになってしまった。
「まあ、スコップは万能武器だけどねぇ。ショウノは両手剣を見たことはあるのかい?」
「ゲームの中だと見たけれど実物はないね。」
「身武の形を操るには頭の中ではっきりと思い浮かべる必要があるんだよ。ロック、両手剣を出しておくれ。」
「了解した、祖母上。」
そう言って教官は壁に向かい両手を壁に当てる。するとそこから両手剣が現れる。それをお祖母ちゃんに手渡した。
「ありがとうねぇ。ロックが剣を生み出すのに使うスキル、クリエーションもしっかりと頭の中で思い浮かべる必要があるんだよ。多分、ちゃんと思い描ければできると思うよ。これを真似してやってみな。」
言われた通り両手剣を目に焼き付ける。そして魔力の流れを感じて思い浮かべると、徐々に形を変え今度はちゃんと両手剣になってくれた。
「よかった、ちゃんとできて。」
「もうなんにだって変形できると思うよ。頑張ったね、ショウノ。」
「うむ、よくこの短期間で習得できたものだ。剣の振り方もまずまずであるから、そろそろダンジョンにはいって…」
ゴロゴロ…ドーン!
「うわぁ、すごい雷、だね。」
「そうだったねぇ。ちょっと外を見てみるかねぇ。この島の近くに落ちたから島には影響がないと思うんだけど…」
そう言ってみんな外に出てみる。すると、東に延びる石畳の先に赤い光が見えた。もしかして…
「燃えてるのか、何かが。」
「どうやら船のようだねぇ。もしかするとこの島を調査に来た冒険者たちをのせた船かもしれないよ。」
「たしか、2.3日で来るかもっていってたよね。だからお祖母ちゃんがいるのか。とりあえず、東の浜辺まで行ってみよう。」
そう言って3人で走って浜辺まで行った。するとそこには紅蓮の炎に包まれた帆船があった。雨のせいではっきりとは見えないがいくつかの小舟が浮いていて、その近くへ乗組員たちが逃れているようだ。海に入って助けようとしたものの2mを余裕に越える波が押し寄せているため不可能だ。
「どうやって助けよう?」
「まずは乗組員にこちらの位置を知らせよう。どうやらこっちに気付いていないみたいだからねぇ。」
そう言うとお祖母ちゃんが杖を取り出して、
「煌々と大地を照らせ ブライト!」
するとまるでLED電球のような明かりを放つ球体が現れて、その球体を杖で操り動かしている。すると気づいたのか小舟がこちらに近づいてきた。だいたい7〜8隻だと思われる。
それから数分後、僕たちは叫びながら合図をし、岸近くになって海の中へ入り、手助けや荷物の運搬を行った。
「ありがとうございました。助かりました。」
泣きながら感謝をのべる冒険者たち。どうしてこうなったか教えてもらう。
「いったい何が起きたの?」
「まずは私たちの紹介からいたします。私たちはゴンゾアナ大陸西岸にあるスウェジランド王国からの冒険者一行であります。私はこの冒険者チームのリーダーであるロズバインといいます。海に出てから1日半、上空の雲が急激に黒くなり、それからの大雨と強風と雷の中何もできずに漂っていました。そして先ほど、雷がメインマストに直撃し炎上してしまいました。幸い直接雷に打たれたものはいなかったものの炎で火傷したり、荒波の衝撃で手足に怪我を負った者もいます。すみませんが手当てできる場所がありますでしょうか。」
「わかりました。ダンジョンのあの運動場でいいかな。」
「まぁ、あそこだったらかなりのスペースがあるからねぇ。」
「よし、じゃあ運ぼう。」
そう言って一気に5つの身武を担架の形にする。
「おぉ、これは便利そうだ。使わせてもらうよ。」
「重症な人から運んであげて。手当てはお祖母ちゃん、頼める?」
「孫の頼みだからね、わかったよ。」
「ロック提督は一緒に怪我人を運んでいただけますか。」
「了解。」
「私たちも運びます。しかしながら薬草など少ししか船から取り出せませんでした。」
「多分薬草の方は大丈夫です。薬草を扱える人はいますか?」
「あぁ、大丈夫だ。任せておけ。」
そう答えたのは、ダリのような髭を生やしたハゲのおじいさん。
「では、これを渡しておきます。」
そう言って手渡したのはこの前選別した、回復系の薬草だ。
「おぉ、これだけあれば大丈夫そうだ。よし、早く運ぼう。」
そのあと、動ける冒険者と共に怪我をした患者を運んでいった。運び終わったときはもう夜で燃えている船がきれいに見えた。治療は続いている。今日の夜は長くなりそうだ。
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