プロローグ02 空から孤島を見てみよう
気分が落ち着いた後、僕は目の前のものに驚いた。雲をも貫く茶色い岩に彫刻が施された建物で入り口は赤茶色のレンガのアーチで作られている。辺り一面は芝のような草が敷かれており、高い建物にいくために作られたであろう道とその道に垂直の方向にも道があり、その道は平らな石を敷き詰めて作られている。その交点には円い石があり魔方陣のようなものが描かれており僕らは今その上に立っている。
「お祖母ちゃん、ここが異世界?そしてこのバカ高い建物はなんなの?」
「そうさ、ここがショウノにとっての異世界である"ヴェルンディア"だよ。目の前の建物はダンジョン、私が創ったんだよ。全部で210階まであるんだよ。ブドウだけにねぇ。他も877だったり9972とか考えたけど登るのが大変そうだったからねぇ。」
甘い果物の名前の語呂合わせで階層を創ったことに少し得意気なお祖母ちゃん。ここまで甘い物好きだとは思わなかった。
「早速、中を見せてあげたいところだけど、まだまだ見せたいところがあるからねぇ。そうだ、まずはこの島の形を見せよう。」
そう言って再び僕の右手をつかんできた。嫌な予感がする。
「大丈夫さ。次は酔わないように魔法をかけてちょっと空を飛ぶだけさ。いくよ、そぉ~れ!」
掛け声と共に小さくジャンプすると体が浮き、どんどん上って行く。
「ほんとだ、飛行機みたいな気持ち悪さがない。ここは十分高いけどダンジョンの頂上は全然見えないね。」
「そうだねぇ。ここはダンジョンのおよそ100階層位だよ。この先は雲があるから、濡れるのは嫌だからねぇ。では問題、この島の形はなんの形に見えるかね?」
なんの形と言われてもと思ったが、すぐにわかるものだった。
「わかったよ。スイカだね。ヘタがダンジョンで、そこから延びる石畳や、森の木々も高さが違うからなのか葉の色が違うのかわからないけどきれいなしましまだね。でも何でスイカ?」
「正解だよ。何でスイカだって?それは島々(しましま)だからだよ。ちなみにこの島の半径は最初にいた円い石を中心に2.3kmだよ。スイカは英語でwatermelonだから頭文字のwのアルファベットの順番の23kmにしようとしたんだけどねぇ、海まで遠すぎると思って十分の一にしたんだよ。」
流石、知恵の神のお祖母ちゃん。そんなところまで考えて創ったなんて。しかしやりすぎなのでは…
「ちっとばかしやり過ぎたかもしれないねぇ。でも、いいものを創ったと思っているよ。じゃあこの島のことを教えるよ。この島は昨日のうちに創ったのさ、ショウノがまだ寝ているうちにね。中心の石を基準にするとダンジョンの方角が北だよ。朝日は地球と同じ東から昇って西に沈むよ。東には大陸ゴンゾアナがある。そこには人や獣人族やエルフやドワーフが住んでいる。ゴンゾアナのさらに東には魔王の国がある。でも、今はとても平和で貿易も盛んだよ。」
「じゃあ僕は勇者みたいなことはしなくていいんだね。」
「そうさ。だからこの世界につれてきたんだけどね、大事な孫だからさ。人族同士の酷い争いに巻き込ませたくないからねぇ。」
勇者みたいに大活躍してみんなの前で笑顔で手を降る何てこと恥ずかしすぎて出来るわけない。だからとてもほっとした。
「じゃあ僕は特に表舞台に立たなくていいんだ…」
「あぁ、大丈夫さ。ショウノ、ちょっと西側を見てごらん。あそこに家があるだろう。そこがショウノの家だよ。地上の降りて家に行ってみようか。」
そう言って円い石の上に降りた。そして二人揃って西に延びる石畳の上を歩いた。だけど、空から見たときこの先南北に通る700mぐらいの山脈があったはずなんだけど…
そんなことを思いながら石畳の端までやって来た。この先は森だが怪しげな霧がかかっている。
「この先は私とショウノと私たちが許可した人しか通れないんだよ。もし入っても森がずっと続いていつの間にか南の石畳の端に出てきてしまうんだよ。南から入ったときは西に出てくるよ。ショウノが家にいきたいと思えばまっすぐ進めばあっという間に家に着くよ。さあ行こうか。」
そして、霧がかかる森へと入っていく。どんな家だろうと思いながら歩いていくと20秒ぐらいで森が開けて芝みたいな草が敷かれた開けた場所に出た。目の前にはロシアなどで造られるようなログハウスがあった。上から見たときははっきり見えなかったからどんな家かと思ったが普通のサイズでほっとしたが一人で暮らすには十分すぎる広さがありそうだ。
「ここが入り口だよ。さぁ、お入り。入ってすぐがリビング。そして、南に水回りのものと寝室があるよ。今日から暮らせるように一通りは揃えてあるよ。北側には物置と二階にいく階段があるよ。二階は客室と物置だよ。」
「客室?なんのために?お祖母ちゃんの友達用なの?」
「それもあるかも知れないけれど、この客室はショウノの友達とかが来たときに使うためさ。ショウノならいい人と出会えさ。」
「頑張ってみるよ。いい人を見つけて一緒にダンジョンに行ってみたいからね。」
少しお祖母ちゃんのやり過ぎには驚いたけれどすごい島を創って貰いこれからの生活の楽しみがとても膨らんだ。
だいぶ島の説明が長くなってしまいすみません。あと、1話ほどで終わる予定です。読んでいただきありがとうございます。