プロローグ01 異世界にいざなわれて…
目が覚めると純白な天井があった。それに見たことないベットで寝ている。
「あれ、ここは…」
どこだか思い出そうとしたが全く記憶にない。考えていると、
「おや、やっと起きたんだね。どうだい、頭とか痛まないかい?」
そう言ってやって来たのは70歳ぐらいと思われる白髪の背が真っ直ぐで優しそうなお婆さんだった。お盆にのせたホットミルクとカステラを渡してくれた。
「はい、大丈夫です。でも僕はどうしてお婆さんの家にいるんですか?」
「ここに来る前に何かあったのを覚えてないのかい?」
「う~ん」
思い出そうと過去を振り返ってみた。たしか、丸々一日模試を受けて帰る途中で、家の手前のY字路を通ろうとしたら、警察のサイレンが聞こえて、そしたらスポーツカーがやって来て…
「僕、車に引かれたんだ… じゃあここは天国ですか?」
「思い出したかい。ちなみにここは天国じゃあない。ちょっと長くなるから食べながら聞いておくれ。」
では頂こうと思いカステラを食べてみる。ザラメがついていてとても美味しい。
「美味しいです。」
「そうかい、ありがとうね。では、話すよ。 あぁ、その前に、確か名前はショウノだったかねぇ。」
「はい、狩葉硝之と言います。」
「合ってたね。私は、そうだねぇ…お祖母ちゃんかばあばと呼んでくれたら嬉しいねぇ。」
「では、お祖母ちゃんで。」
「ありがとね。では、話すよ。ショウノが交通事故で死んでしまったのを私はちょうど見ていたんだよ。しかし何もできなくてねぇ。だから私はショウノの魂をもらいに閻魔大王のところへ行ってもらってきたんだよ。そして、この部屋につれてきて寝かせてあげてたんだよ。ちなみにここは神界の私の家だよ。」
「では、お祖母さ、お祖母ちゃんは神様なの?」
「そうだよ。なんの神様って言うとねぇ…知恵の神、かねぇ。亀の甲より年の功と言うからねぇ。」
「神様かぁ。あっ、では敬語を使うべきでしょうか。」
「いいよぉ、そんな事しなくったって。気軽に話してほしいからねぇ。」
「わかったよ。でもどうしてお祖母ちゃんは僕を神界に連れてきたの?」
「それはねぇ、自分の孫がほしかったからさ。実は神様も世代交代してるんだよ。でも、みんな長生きだからそうは見えないけれどねぇ。私も子供が欲しかったんだけどできない体でねぇ、だから娘を"創った"んだけど、娘もダメでねぇ、そして私より先にいなくなってしまったのさ。かれこれ月日は流れ、神の中でもお婆ちゃんと呼ばれるようになってから急に孫が欲しくなったんだよ。」
「だから僕をつれた来たんだ。」
「そうさ。地球の輪廻を司る神にお願いしてショウノをこっちに連れてきたんだよ。だから私は、今とっても嬉しいんだよ。でもねぇ、残念だけどショウノはここにはずっとは要られないだ。」
「どうして?」
「それは魂の構造が違うんだよ、ショウノのと、神界に暮らすものと。こればっかりはどうすることもできない。だから、ショウノには別の世界に行くしかないんだよ。」
そう言って悲しそうな顔をしているお祖母ちゃん。しかし僕の頭の中ではハッピーソングが流れている。異世界転生はロマンだった。お祖母ちゃんには申し訳無いけどね。
「そうかい。異世界は楽しみかい。ならよかったよ。」
あれ、声に出てた?いやそんなわけ無いな。
「神様だから心は詠めるのさ。でもねお祖母ちゃんて言って貰えて嬉しかったよ。」
「ごめんなさい、悲しんでいるときに。でも僕も嬉しかったんです、おばあちゃんと話せて。僕は物心ついたときにはお祖母ちゃんがいなかったんでなんか新鮮で。」
「大丈夫さ。ショウノが異世界にいっても私は手助けすることが出来るからねぇ。楽しんでおいで。たまに私が遊びに行くからそこで一緒にお茶や冒険の話をしてくれると嬉しいねぇ。甘いものが好きだから見つけた果物など用意してくれるとなおいいよ。」
普通は孫が祖父母の所へと遊びに行くのだろうが、おそらく僕は一度神界を出るともう戻っては来れないのだろう。
「わかった。じゃあお祖母ちゃんに楽しい話ができるように異世界で頑張ってみるよ。」
「よし、じゃあ早速行ってみるかねぇ。」
そう言ってお祖母ちゃんはお盆をさげてから僕の右手を握ってきた。
「転送魔法でいくから、少し酔うかもしれないけどねぇ、まあ大丈夫さ。」
「待って。僕、乗り物酔いがひどいんだけ…」
言い終わる前に足元に白い魔方陣が現れ景色が歪んだ。体がいろんな方向によじれる感じがする。頭もくらくらして熱いものが込み上げてきた。すると景色が徐々に緑色になり木々の形がはっきりと見えてきた。しかし、僕はもう限界だった。
「ほらついたよ…」
「(キラキラ…)」
「おや、大丈夫かい。初めてだから仕方がないけどねぇ。こんなにも酔いやすかったんだねぇ。」
そういって背中をさすってくれた。異世界についたとたんにやってしまうなんてなんとも恥ずかしい異世界ライフの始まりだった。