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その男ジャーナリストなり


とりあえず投稿。



ある日、人々は表現の自由を奪われた。賑わいを見せていたSNSや掲示板はもう既に過去の産物と化した。どんなことを投稿しても検閲が入り、過激な発言をすれば翌日その人間が姿を消す、そんな時代になった。当然人々は抵抗した。しかし1人、また1人と抵抗する人が姿を消し次第に鎮圧されていった。



人々は恐怖した。いつ自身が消されるかわからない恐怖、そして躊躇いもなく人を消す国に対し。



しかしたった1人、立ち向かう人物が現れた。その人物は政府の悪事を記事にし報道する所謂ジャーナリストだ。1人、また1人と政府の役人の悪事を暴き、免職させるその人物に人々は歓喜した。



人々はその人物をいつしかこう呼ぶようになった。報道すれば必ずその相手を免職させる、そして報道している人物は未だ政府に消される事なく報道を続けることから、








ーー常勝無敗のジャーナリスト








と。その人物は今も報道を続けている。



そしてその人物の名はーー






[この文章は検閲されました]







ーーーーー

ーーー







「…い …きろ …い」



「んぁ… なんだよ… うるさいなぁ…」



「お… おき… おい…」



「静かにしてくれ… 今オ・フトゥンとイチャイチャしてるんだ…」



「起きろと言ったらだろう!このスカタン!」



「グハッ!」



一切容赦のない踵落としを顔にもらい眼が覚める。



「まったく…いつもお前はそうやってグータラとだらしない生活を送りよって… 今日という今日は許さんぞ」



「しゃーないやん、俺こういう性格だし… 夢で彼女が待ってるんだ、もう一睡させてもらうぜ!」



「ほう… そんなに夢を見たいなら私が見させてやろう。極楽に送ってやる」



「あっ… ちょ、タンマ… ほんとさーせん… こ、これ以上は… 頭が、頭が割れちゃうのぉぉぉ!!俺様のナイスなハンサムフェイスとスマートなブレインが砕けるのぉぉ!!」



「なーに一度極楽にいけばそのうち生まれ変わる。来世に期待するといい」



「ら、らめぇぇぇ!!!」



「そぉ…ラァ!」



無慈悲なアイアンクローからの部屋のドアの方に無慈悲な投げ。二連無慈悲攻撃。効果、俺は死ぬ。



すまねぇ… 夢の中のかわい子ちゃん。名前も声も顔も知らないけど俺は死んじまうようだ…



と、思ったが運は俺の方に回ってきた!ドアにぶち当たる寸前、ドアが開いたのだ。うちのドアは自動ドアじゃないぜ。



飛来する俺を見て止めようと手を伸ばす推定12歳ぐらいの銀髪のクールロリっ子。彼女はうちの中で唯一俺に優しい子。これからきっとあの薄い胸板で受け止められるだろうぜ。



ハッハッハッ、どうだお前ら!これが持つ者と持たざる者の格の違いだぁ!血涙でも流して眺めてろ!



さあ、今行くぜ!彼女との間合いが近くなる。すると彼女は片腕を引き始めた。



「フゴォ!」



どうやら待っていたのは薄い胸板ではなく硬い肘だった。いい具合に腰の入った肘打ちだ、俺と一緒に世界を目指そう(混乱)。光る風を追い越すほどの速さで飛んだ俺は一瞬で地に伏せられた。



訂正しよう、彼女は俺に対して異常なほど容赦のない少女だ。そしてもう一つ、今日のパンツは黒のレースらしい。ちょっと背伸びしすぎかな、縞パンでいいと思うよ君は。



「朝から何やってるんですか… 総司さん… しかも何回目ですかこの覗きは、最低ですよ」



「ふふ、すまないね。あまりにも君が可憐だったからさ」



「ちょっと気持ち悪いので近寄らないでください。ねじ切りますよ」



ウーン、最近の子は元気でよろしい(白目)。おじさんの心が破裂しそうだよ。



「まあ聞いてくれよ、琥珀ちゃん。朝から彩月の鬼ババが俺を投げ飛ばすんだぜ」



俺を投げ飛ばした黒髪ロングのバーサーカーは冴島彩月(さえじま さつき)、んでこのロリッ子は白銀琥珀(しろがね こはく)



そしてこの空前絶後の超絶ハンサム、程よく伸びた顎髭がダンディで男らしさを醸し出し、ダヴィンチが裸足で逃げ出すほどの天才とはこの俺、氷室総司(ひむろ そうじ)



ババーン、という音が鳴りそうなほどの自己紹介だ。うむ、素晴らしい。



「ほう、誰が鬼ババだって…?」



あっ、やべ… まだ部屋にいたわ。



「あ、いっけな〜い♪もうこんな時間早く会社行かなきゃ遅刻しちゃうわ!」



「まあ待て、腹を割って話そうじゃないか。どうせお前が遅刻することはもう確定している。たった今決めたよ、遅刻させると。琥珀、いつも通り電話しておきなさい」



「はい、彩月さん」



ふふ、八方塞がりです。もうだめかもしれませんね。ですがこの俺、氷室総司は、



退きません!



媚びません!



省みません!」



「あ、うん、ほんとごめん。いや、ほんと悪かった。だからその拳を下ろそう。争いは良くないぜ、な?」







ーーオウッフゥン!!





その日、小鳥が囀る朝の住宅街で男の奇妙な声と何かを砕く音が響いたらしい。






ーーーーー

ーーー






「ったく朝から酷い目にあったぜ…」



「自業自得だ」



「自業自得です」



「かぁ〜 2人とも冷たいねぇ…」



「自業自得だ」



「自業自得です」



「ちょっと同じ反応はさびしいかなーって…」



「自業自得だ」



「自業自得です」



「うわーん、2人がいじめるよー」



「きもいぞ」



「きもいです」



「そんなー」



「「それよりさっさと」」



「「仕事に行け!」」



「あ、タンマ。まだコーヒー飲み終わってないから…」



「さっさと行けと言っただろう!」



尻を蹴られ家から追い出される。ついでに俺の仕事道具も。ご丁寧に帰ってこれないよう家に鍵を閉められてしまった。



「はあ… さすがに行くとしますか」



会社へ向けてゆっくりとのそのそ歩き始める。






ーーーーー

ーーー






ところで俺の職業はご存知かな?知るわけないだろぉ、特別に教えてやるぜ。



というわけで着きました、大和帝国新聞社。ここが俺の職場さ。大和帝国新聞社は名の通り、大和帝国(旧国名日本)で唯一運営を認められている貴重な新聞社だぜ。そして俺はその中でもエリート中のエリート。俺が記事書けばその日の発行部数は新記録間違いなしだね。



この遅刻も俺のこの才能があるから許されてるものさ。さて堂々と出勤してやりますかね。ついでに出来立てホヤホヤ最高の記事を拝ませてやろうじゃないか。








「氷室、この記事はなんだ」



「何って見ての通りだぜ」



「馬鹿たれ!こんな内容報道できるかぁ!大杉議員のワイロ疑惑なんて報道してみろ、お前はすぐに消されるぞ!」



「あぁ、ほら源おじいちゃん落ち着いて。そんなに怒ってたら血管が破裂しちゃうわ」



「喧しい!誰のせいじゃ!全くお前はいつもいつもこんな内容ばかり持ってきよって。お前は新聞に記事を載せる気はあるんか!」



「へいへーい、もちろんありますとも。そりゃもう文系の人間が数学解く時にもつやる気ぐらいは」



「全く無いじゃないか、このアホんだら!さっさと新しい記事を書いてこい!いいか、今度はしっかりと報道できるやつだぞ!わかったな!」



「へいよー 任せてくださいな。それじゃ」



怒ってばかりのおじいさんは源三郎(みなもと さぶろう)。新聞社の心配より俺の生命の心配をしてくれる辺りいいおじさんだと思う。それに俺をこの新聞社に入社させてくれたからな。しかしあのじいさんは何かといじりたくなる。まあ、失礼すぎたし少しはやる気出しますかね。






ーーーーー

ーーー






「と意気込んだのはいいものの、中々事件なんて起きねぇしなぁ。」



俺は主に政治や事件ついて記事を書く。だがその殆どが新聞に載ることはない。言うまでもない、表現規制法のせいだ。この法律が出来て国は変わった。国の名前や国のあり方、人々の生活まで何もかもだ。



この法律はとにかく国に有利なように出来ている。さっきもあったように議員のワイロなんかは一瞬でもみ消される。それを書いたり発言した奴は消されるんだ。その記事が出る前にな。必ず国の検閲が入るから報道しようにも出来ない。この法律がある限り人々は枷だらけの生活を送るしかない。



俺はいつか、そんな状況をどうにかしたいんだ。このジャーナリズムを武器に。人間性が腐っている俺だけどやっちゃいけないこととやっていいことぐらいわかる。人々を救いたい、なんて高尚な気持ちは持っちゃいない。俺が嫌だから国を変える。ただそれだけだ。



さて、こうして街を練り歩いているわけだが… 本当に見つからんな。なんか、こう、大事件だ!みたいなのが欲しいんだが。



「誰か… 誰か姉の行方を知りませんか!」



おっと、ちょうどいいところにあるじゃないの。失踪事件なんて国が変わってからよくある話になった。けどこの事件は違う気がする。俺のカンが囁くんだ。これは大事件に繋がるってね。



おっとあの兄ちゃんがどっか移動しちまうな追いかけなきゃ。






ーーーーー

ーーー






「クソ… クソッ!なんで誰も答えてくれないんだ… なんで誰も姉ちゃんを知らないんだ…」



誰一人姉のことを知らない。そして姉の手がかりを見つけることのできない不甲斐ない自身に対し涙が出る。



「よお、そこの兄ちゃん。少し話を聞かせてくれないか」



声のする方を見れば身長が180ぐらいで探偵が着けそうな帽子を被り顎髭を伸ばした男がいた。



「あんたは…」



「ん、まあちょいと気になってね。その失踪した姉について」



「あ、ああ。この人が俺の姉だ。知っているか?」



はっきり言って胡散臭いこの男。現に路地裏にいる俺を見つけた辺りストーキングでもしていたのだろう。それをするには俺をさっきの場所で見ていたというわけだ。胡散臭すぎる。だが誰でもいい、姉を知ってる人を見つけたい。藁にも縋る思いで男に聞く。



「ほぉ〜 こりゃ中々の別嬪さんじゃあないか」



「それで、どうなんだ」



姉は確かに美人だろう。だが今そのことはどうだっていい。早く答えて欲しいとイラつきながら再び問う。



「いいや、悪いけど知らんな」



やはりか… 期待して損した。



「そうか、じゃあ「だが」」



何?



「俺はこの人の行方を知る方法を持ってるぜ」



それがもし本当なら姉に会えるかもしれない。



「何!?それは本当か!」



「ああ、仕事柄色んな人間と関わっているし知っている。それこそ大物政治家から河原の浮浪者についてまでな」



「どこだ、姉さんはどこにいる!教えてくれ!」



「まあ落ち着けよ兄ちゃん。この件、俺に任せてみないか?必ず見つけてやるよ」



「見つけられるってのは本当なんだろうな…」



この男のことはまだ信用し切れちゃいない。変なもんを押し付けられるかもしれないし、金を取られるかもしれない。けど、何故だか俺はこの男に託してみたい。



「ああ、もちろん。そんなん朝飯前… 朝飯食い切れてねぇな。そんなの昼飯前だぜ」



「いちいち言動が腹立つ奴だな」



「ハッ、よく言われるぜ。あなたと話してると怒りすぎて心が広くなりそうってな」



正直限界だった。寝ずに数日間情報を探すもこれという情報はない。人に聞いても無視されるか邪魔をするななどの罵倒浴びせられるくらい。多分、初めて俺の話に興味を持ってくれた人間だ。



「頼む… 俺の姉さんを、見つけてくれ…」



「ああ、任せな」



「なあ、あんたは何もんなんだ」



初めてこの男に興味が沸いた。何故ここまで力になろうとするのか。何故俺に構うのか。謎を解消すべく男に問う。



「あん?俺かい、そうだな、







しがないジャーナリストってとこさ」





他の作品はどうしたって?大丈夫、筆者が死ななければ完結させる。



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